第2話 サトウキビ
俺たちは商人に連絡を入れ、砂糖ではなくサトウキビを輸入してみることにした。
温暖な気候であること、雪が降らないことなどから、なんとか冬も越せることが分かった。
生産量は南国に比べたら半分くらいかもしれない。
しかし栽培できることは判明した。
「サトウキビか」
「はい、お兄ちゃん。でもまだ黒糖ですのよね」
「そうだな。精製もしなければ砂糖にはならない」
すでに黒糖を使った黒糖パン、黒糖クッキーなど試作して、我が領エンデルソンでは一般販売も開始された。
「黒糖だって美味しいだけど、紅茶にあう甘味となるとな」
「そうですわね」
先生の錬金術師も仲間の錬金術師たちを集めて、みんなでばらばらに研究をしてくれている。
それでも砂糖成分のみの抽出にはなかなか苦労している。
よく黒砂糖を白砂糖にするのに、洗濯機みたいに漂白剤を使って色を抜いていると思っている人がいて、健康に悪いと思い込むというのがある。
しかし実際には黒砂糖から黒い不純物を抜いていくと最終的に砂糖の成分だけになり、それは白い色をしているのだ。
白というか透明というか。
それを精製するという。
水だって精製水にするように、砂糖もそうなのだ。
黒糖の生産が軌道に乗るようになって、エンデルソン家の財政は回復し、今では黒字を出せるようになっていた。
しかし貴族の家は裕福になれば成るほど、買わなければならない調度品などが次から次へと出てきて、結局は自転車操業にならざるを得ない。
「あらトール様、黒糖ティーも美味しいですわ」
「そうですよ、自信を持ってくださいませ」
男爵家仲間にはこうして羨望の目を向けられている。
月に一度、定例会を開いているのだ。
そして周辺の男爵家でも同じようにサトウキビ栽培をするようになり、今、この東エモーデル地方はサトウキビ栽培が盛んな地域になりつつあった。
それでもまだまだそれぞれの領主と契約した少数の農家でのみの栽培であり、実験農場と言われている。
大寒波などがくれば全滅する可能性もあるのだ。
「やっぱり、砂糖大根のほうがいいのかしら」
妹のティーナがティーパーティーで提言をしてみる。
「デーツですか、確かにわずかな甘味があるという話ですが」
「デーツの栽培だって、本来はもっと北の国でしょう」
「そうなんだよな」
サトウキビを栽培するには北限に近い。
かといってデーツはもっと寒い地域のほうが適している。
なんとか砂糖を得たいのが、なかなか難しい。
「あの、お兄ちゃん、こういっては何ですが、やっぱり蜂蜜にしませんか?」
「蜂蜜か、砂糖より安いとはいえまだまだ高級品だな」
「そうです。お花畑であれば、春と秋、二回収穫できますよ」
「それもそうだな」
中国の内陸部なんかにはアブラナの一大産地がある。
見渡す限りの黄色いお花畑だ。
「そうだな、アブラナの量産か、ふむ」
「そうですわ」
うし、いっちょやってみるか。
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