転生しても妹ラブの没落男爵家の甘々生活

滝川 海老郎

第1話 俺と妹

 新潟にいがた大和やまと、十六歳。不運にも異世界転生してしまう。


「お兄ちゃん、おはようございます」

「おはよう、愛しいマイ妹ハニー」

「ふふふ、もう、お兄ちゃんったら」


 それでこちらが麗しの我が妹、しずく


 こちらでは俺はトール、妹はティーナと名付けられていた。

 兄妹揃って異世界転生したってわけ。


「いただきます」

「お、おう、いただきます」


 家族で朝の麦粥を食べる。

 うちはいわゆる没落貴族というやつで、貧しい男爵家だったのだ。

 それでも愛しの妹と一緒にいられるだけで俺は幸せだ。


 領地は王都から西にいくばくか進んだ高い山があるだけの何もない小さな土地だ。


 前世でも妹は可愛らしかったけれど、こちらでは金髪碧眼のとびきりの美少女だ。

 すでにその美貌は周辺の弱小貴族には有名で縁談がいくつかきていた。

 もちろんすべて反対した。美しさだけが目当ての見え見えの下心なんて、反対するに限る。

 子供を産ませたら捨てられるか冷遇するに決まってるからな。


「今日もお花が綺麗ですね」

「ああ、ティーナのほうが綺麗だけどね」

「もうっお兄ちゃんっ」

「ぐへへ」


 土地だけは余っているので庭は広い。

 俺たちは転生者の知識から、可能な限りの薬草を集めることにしていた。

 怪我や病気になったら死んでしまうかもしれない。

 保険は多いほうがよい。


「ティーナのハーブティー美味しいな」

「ありがとうございます」


 庭の薬草を使ったハーブティーで、とてもいい匂いがする。

 何といっても薬草だから、健康によいのだろう。このお茶を飲むようになってから体の調子もいい。


「ティーナは錬金術の練習もしているのだろう?」

「はい、お兄ちゃん」

「まったく才能ばかりあるのも困るなぁ」

「えへへ」


 町の錬金術師に教師になってもらい、薬草からポーションを作成しているのだ。

 俺は定番だけれどお金のかからない剣士になるつもりでいた。

 しかし剣はあまり上達もしない。


 俺ももっと前世の常識的な知能や知識を生かした仕事を探したほうがいいのだろうか。

 剣を振り、ティーナのお茶を飲む毎日を続けていたのだった。

 そうしてこうして、十五の夏。

 ティーナもかわいい盛りの十三歳だ。


「ティーナ様のお茶会は好きですわ」

「本当ね、いつも美味しいハーブティーをいれてくださるから」


 近所の貧乏男爵家が集まってうちでティーパーティーをしていた。


「毎回、お土産の茶葉をいただけるのが、なによりもうれしいのです」


 うちでお茶会をすると、そこで使われたお茶の葉っぱをお土産にしている。

 もちろん庭で育てたハーブなので、原材料が掛からなくて助かる。

 貧乏でもこうして工夫すれば費用はずっと抑えられる。


 紅茶に合うクッキーには砂糖が使われるため、少々お高い。


「これで砂糖が安ければ……」

「そうですね。輸入品ですものね」


 そうか砂糖の入手、自家栽培か。

 そう思い立ったのは十歳ぐらいのことだ。

 砂糖大根つまりデーツから抽出する方法もあるのだが、地球ではかなり近代になってから開発されたもので、中世を思わせるこの魔法世界ではまだ実用化されていない。

 教師の錬金術師にはそういうモノもある、と言ってはあるが、研究は進んでいなかった。

 いっそのこと、サトウキビの栽培をやってみるか。

 ということで、ここ五年ほど研究をしていた。

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