IAPオールスターフェスティバル・エピローグ #みんなお疲れ様!!
「みんな、お疲れ様だーッ!!!!」
『おつかれさまでした〜!!』
あれから30分と少し。
割と早く意識を取り戻したあたしは、スタジオへと戻った。
裏で休んでいた結華さんも既に戻ってきており、今は全員揃った状態である。
配信画面を見てみても、若旦那以外のアバターが全部映ってるという壮観な光景だ。感動しちゃう。
コメント
・おかえり!!
・待ってたぜ
・板野も愛璃も大丈夫か?
・2人とも元気そうでよかった
・本当に凄いものを見た……
・20分以上の演技の殴り合い、魂が震えた
・時子はもう文句のつけようがないくらい完璧だった
・入りからして上手だったもんな
・余裕で映画の主役張れるよ
・愛璃は……はっきり言おう。ヤバい
・完全に別の生き物だった
・アレはマジでヤバかった。劇物
・なんか怖かった。でも好きになってしまった
・薬物みたいな中毒性ありそう
・カリスマってああいう人のこと指すんだなって
・最後の最後、役というより本音の殴り合いだったな
・台詞の一言一言に背景がありそうで……涙、出ますよ
・配信終わったら考察サイト作られるんだろうなぁ
・これまでの口振りと今日の豹変で確信したわ。江戸川の前世は例のアイドルで間違いない
・水森出身、年齢一致、何より今日の姿が引退間際の狂気と重なってるもんな
・時子は……演劇やってたんだろうなってことしか分からんかったわ……
・考察好きファン、出番やで!
「何人かに感想を聞いていこうかな。
まずつぐみから」
「全然活躍できなかった〜!」
「自覚はあるようで何より」
「悲しすぎてキッチンで味噌汁作ってきちゃった!」
「休憩時間に何やってんだよ。めっちゃ美味いけど」
「やった〜!希に褒められた!!」
あ、ちなみにいまあたし達の手元には先程の30分休みに若奥様が作った味噌汁が用意してある。
昆布と鰹が両方聞いたワカメとネギの味噌汁だ。クソうめぇ。今度教えてもらお。
コメント
・草
・企画で好感度稼げなかったからって露骨に媚びるな
・なんでこの休憩中に味噌汁作る判断しちゃうんですかね……
・ほんとに変わってるよな若奥様
・みんな「ほっ」とか言っててこっちまで幸せになる
「次。カナデ」
「親友にねこだましされた時はびっくりしたけど、それも含めて良い勝負だったと思うぞ!」
「ごめんね奏……私動揺しちゃって……」
「良いんだ!気にしないで!気持ちが揺れ動くことなんてよくあるだろう?」
「奏っ………!」
「神に誓うよ。何があってもうららは僕の親友だよ!」
「うん!!私も!!」
「…………やっべぇ、俺泣きそう」
「ハンカチあげます」
「…………ルル、有難うほんとに」
「今日こういう光景が見れたのは、希さん、貴方のおかげですわ」
「悪いな。今日はめちゃくちゃルルを頼ってしまった。気を利かせてしまった」
「いえいえ。これまで受けた恩に比べればこんなもの小さいものですわよ」
「本当に助かる。つぐみより前から付き合いあるってのは伊達じゃねぇな」
「7年。もうそんなに経ちますのね」
「…………よかったなぁ……」
「……………………はい。本当に」
コメント
・てぇてぇ!
・本当にアツい2人
・お姉さん兼保育園児ワイ、胸にこみ上げてくるものがある
・奏くん、本当にいい子……
・保護者組がエモを感じてらっしゃる
・いいんだよ、お前らはいくらでも感慨に浸れ
・奏くんをクソッタレな親やら同級生やらから守り切ったんだからな。ヒーローだよ
・あまとう新規ワイ、エモを感じるも詳細解説希望
・↑いずれるる姉と若旦那がまとめて話すって言ってたぞ。それまで奏くん愛でながら待っとけ
「次。ユイカと……マモリも話そうか」
「ごめんなみんな、心配かけて……。今はもう大丈夫や」
「結華さん。とても楽しかったわ、ありがとう」
「すまんなぁ、先輩なのに良いとこ見せられんで……」
「良いのよ。代わりに私とお出かけしましょ?」
「ほんま!?嬉しいわぁ」
「2人で秋田に行くのはどうかしら?」
「ええやん!!行く行く!!てか何で秋田なん?」
「日照時間が少ないから」
「そこは引きこもり残ってるんや……」
「ふふん!」
「誇ることちゃうで?てか、なんでそんなウチに優しいんや」
「私にしかできないことがあるって、さっき分かったから」
「…………あんた、あの一瞬で気付いたんか」
「医者舐めないでほしいわ。あと私すっっっっっっごく頭いいから。すっっっっっっごく。それを視聴者さんに認めてもらう礎になってもらいましょう」
「若旦那ぁ!やっぱこの人怖いわぁ!」
コメント
・いいんだぞ、板野
・むしろ無事で何よりだぞ、板野
・まもりが……成長している……!
・ちゃんと正攻法で人を誘えるようになっている……!
・でも旅行の選択が引きこもりで草
・秋田県民ワイ、悲しい
・岡山県民ワイ、まもりが来ないことが判明し悲しい
・折角上げた高評価を消しに行くな
・もうほんとにコイツは……。
「次、アイリ」
「はーい」
次はあたしの番か。
ま、そりゃ最後に喋るべき人は決まってるでしょう。
「悪かったな、無理させた感じになったかもしれない」
「いいんですよ。最終手段使ったのはあたしの選択。時子と向き合う為だけじゃなく、過去の自分を越える為にやったんです。後悔なんて1ミリも無いですよ?
むしろ、清々しい気分かも。あたしの一面を皆に知ってもらえて」
「なら、良かった」
「てかアレで完全に察してる視聴者さん多いと思うけど、そういうことです。炎の聖女はまた狼煙を上げたってことで、ヨロシク」
ここまで明言してこなかったアイドル時代のあたしとモロに繋がるワードを出した。
それも、過去の昇華の1つだ。
さてさて、視聴者諸君はどんな反応かな。あたしの知られざる一面にドキドキしてそうだな―――
コメント
・凄かった
・愛璃ってすげぇんだなって分かったわ
・尊敬しか無い
・尊敬しか無い……んだけどさ……
・ガチ恋感情は完全に消えたわ……
・アレに恋愛感情は流石に無理だろ……
・マジで自分が鬼か悪魔だった自覚ない?
・悪の独裁者にガチ恋する性癖はないです
・あんなの見せられたら、そりゃタマヒュンですよ
・ガチ恋とは別の場所で輝いてください
・貴殿のさらなるご活躍祈ってるわ
「フ◯ック!!!!」
◇
「最後。トキコ」
「はい」
「どうだった……って聞くのすら、野暮だな」
「そうですね」
そう言ってトキコは、画面を見つめる。
そしてその向こうの、視聴者を見つめる。
「皆さんおわかりの通り、わたしは元役者です。
過去に少しつらいことがあって、今までそのことをずっと公開しないでいましたが…………。
ここにいるみんなと一緒なら、視聴者のみなさんと一緒なら、過去にも打ち勝てる気がします。
いや、わたしが必ず過去を打ち破ります。
いずれ詳しく語りますが、今日は取り敢えずここまでで。
これからも、よろしくお願いします!」
コメント
・888888888
・真の意味で。ようこそ、IAPへ
・泣いた
・確かな決意
・名作映画のよう
・視聴者はみんなで応援するからよ
・頑張れ!!時子!!
・時子の好きなように輝いてくれ
・今日のMVP愛璃にも拍手
・もはやみんなが全員今日のMVPだよ
「よく言ったぞ、トキコ。強くなったな」
「ありがとうございます。愛璃ちゃんもうららもまもりちゃんも、みんないますから」
「うんうん。そうだな」
「あと…………わたしを救ってくれたあの子が来るんです。
一緒に輝きたいんです。
だからもう、弱音なんて吐けませんよ」
「だってよ。聞いてたか?
トキコは、お前と輝きたいんだってよ」
決意の後に続いた何気ない会話だが、スタジオにいたあたしは気づいた。
時子が、若旦那が、明らかにここには居ない誰かに向けて、語りかけていたことを。
そしてそれが、すごく心地の良い柔らかい笑顔で放たれていたことを。
◇
「優勝賞品!ネズミーランドペアチケット!」
「「やったー!!」」
そして、優勝賞品が奏くんと時子に渡される。
そういえばこの2人のチーム名、白虎だったね。毎回忘れそうになるからやめてほしい。今度はあらかじめ言っておこう……。
「誰と行くんだ?」
「愛璃ちゃん」
「るる姉ちゃん!」
「まぁ分かってたけどな」
「……じゃなくて、全員分のチケット用意して。
愛璃ちゃんと、うららと、まもりちゃん」
「同じく!るる姉ちゃんと、結華!」
『時子!!』
『奏(くん)!!』
「お熱いねぇ、同期愛。最高かよ」
「希ぃ〜!私たちも!」
「つぐみには個別に用意してあるから」
「最高!!だいすき!!」
コメント
・最高かよ
・尊い
・尊死してしまう
・これこそIAP
・やさしさの塊
・1期生の同期旅行はただの夫婦旅行では?
・いいんだよ、それで
「そういえば、視聴者諸君に重大発表があるんだ」
『え〜!なになに〜!!』
声を揃えるあたし達。
事前に伝えられてはいたし、あの事でしょう!
「重大発表はこれだ!!」
【4期生デビュー!!】
「これは事前にもメンバーに伝えてた通りだな。この配信の1週間後、新しいIAPのメンバーが2人デビューするぞ!
視聴者諸君は是非推してくれ」
『楽しみにしててね!!』
コメント
・キタァァァ!!!
・来ましたね
・祭りの時間じゃい!!
・待ってました
・さらにここに劇物が混ざるのか……
・どんな奴が来るんだ
・次こそは……普通の子を頼む……
・普通?IAPの辞書にない言葉ですね(遠い目)
「そして、そのデビューを記念して、殆どのメンバーに伝えてなかったサプライズがあります」
『おー!ほんとに!?』
4期生デビュー告知で終わると思ったら、若旦那が追加で何やら言い出した。
マジ?なんだろ……
「トキコ、本当にいいんだな?」
「……はい。わたしを認めてくれるみんなが、側にいるので。ようやく、やってみようと思えました」
「なら、発表と行こうか」
【IAPオールスターライブ決定!!】
…………マジ!?
「すごいでしょ!私と希で企画進めて、メンバーにも今日初お披露目だよ!」
「すっ……すっごぃ!!!!パねぇ!!」
「わたくしも興奮してきましたわ!ゲロヤバ!!」
「ようやく、僕の美声を皆に届けられるな!!」
「ほんまか、マジで言ってるんかいな……凄いとこまできたなぁ……」
「規模でかそう!コスサミくらいでかそう!!」
「死ぬ気で練習して視聴者にいいとこ見せようかしら!」
「みんな、これがわたしの決意だよ!!」
コメント
・ファッ!?
・ライブ!?
・マジで言ってんの!?
・表示されてる会場のキャパ結構でかいんですが!?
・ここを埋められるくらいには人気になったんだなぁ……
・期待しかない!!マジで期待しかない!!
・お前ら!遂に時子が歌うぞ!!
・涙……涙、出ますよ……。
ライブやるとは!すげぇなIAP……。
実際あたしもアリーナ規模のキャパで歌うのは初だ!!
ようやくアイドル時代を昇華できつつあるし、不安よりも単純に楽しみのほうが勝つな。
究極最強の笑顔で、ファン共を恋に落としてやる……ふふふ……。
「ふふふ………。あははははっ!!!」
「なぜか悪役になったメンヘラは置いといて、話を続けるぞ。
開催時期は4期生デビューから2ヶ月くらい後。
1年前にやった対面イベントと同じく、俺とユイカは裏方だからそこだけ注意して貰って」
「いつもすまんなぁ〜。かんにんやで」
「それでは諸君、1ヶ月後を楽しみにしていてくれ!!」
『おー!!!!!!』
【NEXT⇒3章・ 新メンバーデビュー!!】
◇
深夜3時。
配信後に始まった打ち上げ&ゲーム大会が日付が変わる前に終わり、メンバー達が疲れて眠っている事務所。
「はー。流石に32歳の身体で睡眠リズム崩すのは良くねぇな。喉乾いて夜中に起きちゃったわ。暗い中の杖歩行苦手なんだよなぁ……」
慣れた手つきで杖をついて歩く男は、暗闇のなか、事務所にあるキッチンへと歩を進める。
しかし、そのキッチンは1箇所だけ明るかった。
「あら、若旦那」
先客は、椅子から立ち上がり錠剤を飲むところだった。
「…………それ、何錠目だ」
男は、受け入れ難い事実から目を背けたいといったような表情を浮かべ、質問を投げかける。
「2錠ですよ」
先客の女は、平然と返す。
「違う。今飲んでる数を聞いてんじゃねぇ」
しかし、男はその事実を受け止め、目の前の女を救うために、真実を暴きにいく。
「今日これで何錠目だ、って言ってんだ」
女は、初めて動揺した顔を見せる。
「いや……答えたくないわよ……」
男は、さらに距離を詰める。
「もしかして、前より悪化してんのか?」
女は、震える声で言葉を紡ぐ。
「みんなのせいじゃないのよ……?だから、答えなくてもいいじゃない……」
男は、相手を傷つけることを分かっていながら、それでも問題を解決するために、声を荒げる選択をした。
「いいから答えろッ!!マモリッ!!」
その視線の先にいる女は、諦めたように答える。
まるで、どこかでは助けを求めているようだった。
「…………これで8錠。
3+3+2。3回合わせて8錠目」
【ANOTHER NEXT⇒
『単心臓の龍と眠れぬ守り人』編】
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