カッコいいオトナのシチュエーション王決定戦② #変態たちの世迷言

「どんどん行きますわ!!」



◇ ◇ ◇


1周め 作:黒野るる



東京ビッグサイトにて。



「エッチなインキュバス奏に芯まで絞り尽くされたい! 5人組の特攻隊長! ブラックるる!」

「朝に奏のパジャマ姿を眺めて一日分の英気を養ってます! 5人組の元気印! イエローるる!」

「奏が悩む姿こそ世界の学問の始まり! 5人組の頭脳担当! ブルーるる!」

「『お姉様』って奏に言われるのが私の夢! 5人組の紅一点! ピンクるる!」

「そして!この俺が!秘蔵写真で奏コンテストを勝手に開いてるカメラの申し子! 5人組のリーダー! レッドるる!!!!」



「俺たち、るるンジャー!!」

(注:ここまで全部るるの一人芝居)



「きゃー!!カッコいい!!」(観客:時子)

「……わーステキー抱いてー」(観客:愛璃)



「今日は、コミケを俺達がジャックする!!」



そうして、コミケのコスプレイヤーはるるンジャーの手により、全員がR18を全面に押し出しましたとさ。



◇ ◇ ◇



コメント

・狂気www

・やっば狂ってる

・るる姉、お前増殖できるんか……

・この配信はあなたの性癖暴露大会じゃないんですよ

・ヒーローって分かった瞬間に愛璃のテンション死んだの草

・嫌いでも芝居してえらいな……うん……

・言わされてる感しかないの草

・まあ、奏くんが喜んでるからセーフ

・姉ちゃん妄信するのやめたら……?

・教育上よくない

・【鈴堂うらら】私もるるンジャー入りたい!!コミケをエロに染めたい!!

・やめとけ

・頼むからやめて……

・大丈夫?るる姉の台本だよ?

・お前がこの変態シスコンを救ってくれ

・なまじ社会的地位も高いからこの人

・なんでコイツが社長で金持ちなんだよ……

・そういえば、これカッコいいオトナってテーマですよね

・るる姉が世迷い言を一人芝居で吐いただけなんですが……




…………


◇ ◇ ◇


1周め 作:富士宮時子



ある夫婦(夫役:時子、妻役:愛璃)が、バッティングセンターを楽しんでいた。



「きゃっ!やっぱり打ち方わからないわね……」



そう言っておどける妻に、夫は笑いかける。



「バットを使って、こうやって打つんだよ」


ばこぉぉぉぉん!!!


「あっ!!!!いいっ!!!!」

「ほら、身体に教え込まないとね!!」

「お尻叩かれるのすきっ♡」



彼は知識を調べて教えるのが上手い、カッコいいオトナである。



◇ ◇ ◇



コメント

・また狂気

・1周目全員狂ってる

・劇物3人、予想された流れである

・この配信はあなたの性癖発散大会じゃないんですよ

・おいエロ川、アヘるな

・るる姉、芝居は終わったので尻を突き出しても無駄ですよ

・時子、お前まずバット置けや

・奏くん、ウキウキしてるけどこれスポーツじゃないです

・おい奏!それ野球やない、調教や!

・調べて教える略して『調教』、誰が上手いこと言えと

・国英満点返上しろ

・【若村つぐみ】旦那がウイスキーをテキーラで割り始めました

・若旦那、明日二日酔い確定やん…… 

・二重の意味で吐き気催してそう





……………





「………長かった2周目も最後になりましたわね。

 大トリは時子さんのシチュエーションですわ!」

「愛璃ちゃん、この曲歌える?」

「昔好きだった男の十八番だったから余裕」

「最後も楽しみだぞ!」



◇ ◇ ◇



演劇の舞台裏にて、父(愛璃)と娘(時子)の会話。



「ごめんね、無理言って」

「はっ、問題ないよ。俺の仕事姿でも見ていると良い」

「お父さん……」

「寧ろ、これまで構えてやれなかった分の愛情だと思ってくれ」



そう言って、父は主人公として、ステージへとせり上がる。



そして、演劇のクライマックスで、とある曲を歌う。

それは、観客(るるが5通りの歓声を担当)の心を打つには十分すぎるだけでなく。

娘の心を動かすにも、十分すぎた。



「ねえ、わたしお父さんみたいになりたい!」



演劇終幕後、目を輝かせる娘に、父は笑いかける。



「夢を持て。自分だけの理想の世界を追いかけるんだ。

 そうすれば、きっとここまで届く」



彼は、煙草をふかしながら、娘の頭を撫でる。

残り少ない人生の、さらに少ない娘との邂逅を、惜しむように。



◇ ◇ ◇



コメント

・マジすか

・ド名作じゃないすか

・言葉が見つからない

・感動した

・時子、お前やればできんじゃん

・ワールドクラスのリアリティ

・好感度調整してきてて草

・奏くん!これが大人の姿だよ!!

・シスコンとメンヘラは反省しろ

・さっきのシスコンによるセ◯クス音頭ってなんやったんや

・あんたら青◯島住民には辿り着けない世界だよ、これは……

・エロ川は歌上手かったからセーフ

・るる姉も1人5役頑張ってただろ!!



「…………ぱちぱちぱちぱち!!」

「奏が過去いち感動していますわ!!」

「ごめんね愛璃ちゃん、どうしてもやりたくなってさ」

「ううん、大丈夫だよ〜」

「素敵な物語でしたわね!」

「うん、わたしも素敵な物語だって思う」

「でもまぁ……うーん………」

「愛璃さん、何かご不満でも?」

「奏くんの瞳の輝き方的に、優勝が決まってしまった感がありまして……」

「優勝はこれしか考えられないよ!!僕このお父さんみたいになりたい!!」

「ああっ……あたしが徹夜で書き上げた『種取物語』が負けるなんて……」

「あんな下ネタ特化の作品で勝てるとお思いで?」



コメント

・文句ないです

・満場一致

・今すぐ映画化しろ

・この名作をこの配信で終わらせるわけにはいかない

・種取物語も映画化しろ

・やだよあの実質ぬ◯たし

・冒頭が『野山で交りて種を出しつつ』なんですよ

・頭おかしいよ……



「こんな感じで、今日の配信は終わりですわ!!

 みなさん、よい週末を!!」

「「「みんな、ばいばーい!!」」」














「良かったね、みんなに受け入れてもらえて」


「気づいてたか……さすが愛璃ちゃん」


「詳しくは分かんないし聞かないけど、時子にとっては素敵な思い出だろうからさ。あとで言う気になったら、聞かせてよ」


「うん。そうする。

 ほんとうに、素敵な思い出だよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る