第50話
模擬戦を終えたアルス達は、そのまま王宮を出ようとしていた。
「アルス殿、少しよろしいかな?」
「·····えっと、どちら様でしょうか?」
この人確か、重鎮達が騒ぐ中でも静かだった人だよな・・・
「私はカリュード侯爵家当主のモスタシアという者です、息子のルーファスがお世話になったと思うのですが·····」
「あー! ルーファスのお父様でしたか、改めましてアルス・セントリアと申します」
俺の実力を知ってるからあの場で文句を言ってこなかったのか、納得だわ。
「ルーファスに貴殿を調べるよう指示したのは私なんだ、不快な思いをさせてしまって申し訳なかった」
「いえいえ、あの件は全然気にしてないですから。むしろカリュード家にとって〝仕事〟をしただけだと思ってます」
「·····優しい心をお持ちなのだな、出来ればルーファスと仲良くして貰いたいですな〜」
仲良くして欲しいって言われても向こうから避けられてるんだがそれは・・・・
「私も同じ思いです」
なんて返したらいいか分からずその場しのぎの言葉を返してモスタシア侯爵と別れたアルス達。
◆ ◆ ◆
旅を再開する前に実家に帰ろうとも思ったが、正直面倒臭いなり手紙で王宮での事を細かく書いて実家に送った。
王都を出て北へ進み、アルス達はスノウゼン王国に向かっていた。
「エレノア、故郷に寄るか?」
「っ···············はい、お願いします」
「よく決めてくれたな、これから先エレノアも旅をちゃんと楽しめるように、一度親とちゃんと話した方がいいと思ってな」
「ありがとうございます!」
『エレノアの故郷に行くの? エルフいっぱいいるのかな?』
「それはエルフの里なんだから沢山いるだろう」
なんて会話をしながら目の前の盗賊を次々始末していく。
「てめえら、世間話なんて·····ぶへっ!?」
「お、おい気をつけろ! こいつら·····おぶっ」
「誰か頭に·····あばっ!?」
「やっぱりフリッツェントと比べると盗賊多いよな、あの国の治安の良さがよく分かるよ。それよりいま頭って言ってたよな、アジトあるのか·····」
「私とクマラで潰してきましょうか?」
「お願いしていいか?」
「エレノア様〜、私、大変感激しておりますぅーー!!」
「··········エレノア、説明を頼む」
どうやら盗賊に捕らえられてたエルフを助けたら、故郷に居た頃にお世話した子だったらしく、エレノアとの再会+盗賊から助けてくれた。2つの感動で泣きっぱなしとのこと。
「うむ、そうか! 里に付くまでしっかり面倒見てやれよ!!」
「アルス、逃げましたね?」
ギックーーーー。
「───ってな事もあってですね、私はエレノア様をずっと尊敬してます。エレノア様がご無事で、そしてお仲間と共に楽しそうに旅をしている様子を見れて、私は·····ぐす、私はーー!!!」
ってな感じで盗賊から助けたエルフ、ミアにエレノアがいかに素晴らしい存在なのかを3時間ずーっと聞いているアルス達。
「·····ミア、いい加減にしないと怒りますよ?」
「そ、そんな!?··········私はエレノア様に見捨てられる? だとしたらもう存在価値は無いわけで··········いっそエレノア様に命を捧げた方が···············」
こ、怖い怖い怖い!!!
やっぱハイエルフって崇高な存在なんだな・・・・俺エレノアを連れて里に入って大丈夫なんだろうか?
「ダイアスとクマラ、もしもの時は俺を守ってくれよな!」
「? いきなり何を言い出すんだ? 」
『アルスさっきから変だよ?』
自分の心情を分かってもらえず、これから行くエルフの里にかなりの不安を覚えながら歩を進めた。
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