第49話

「陛下、やはりアルス殿は武力だけでは無かったですな。 これで噂に聞いていた件はただやり返しただけ、という事が証明されたわけです。ヘラントス殿もよろしいですかな?」


「お前は昔から人を見る目はずば抜けているな、ヘラントスは?」


「·····陛下と宰相殿の仰る通りかと」


 アルスは何の話か分からず、?を浮かべているが、国王と宰相にヘラントスも納得の表情を浮かべていた。


 アルスは武力だけでなく賢い。

 これがたった今3人の共通認識となった。 ダイアスやエレノアは何を言っているのか理解していた。



「このヘラントス含め、ほとんどの貴族がリューゼントやセントリアの存在価値を分かっていない。それを理解させるのも難しくてな」


「·····そこまでなのですか? 正直私には理解できません」


「··········この様な感じなのだ」


 話は何故か、どうしたらリューゼント辺境伯家とセントリア家の凄さを伝えられるか。という国王に相談を受けているアルス。


「··········正直に言いましょう、ヘラントス様。 貴方が近衛騎士団を引き連れ〝死の森〟に挑めば、一週間もすれば全滅します」


「ッ!?·····貴様は私を「気持ちはお察ししますが受け入れてください!!」·····」


「死の森とはそれ程の場所なのです。··········陛下、私は今までの件の事もあり愛国心はそこまで高くはありません、ですからどうか、バージェス辺境伯様や私の両親を蔑む風潮を変えて下さい」


「·····お主の想い確かに受けとった、その件に全力を尽くすと誓おう」


 アルスからの懇願、心からの言葉だとすぐに分かった国王は〝全力を尽くす〟と誓った。


「ヘラントス様、私と模擬戦をしませんか? それで実力を測って頂ければと」


 アルスのいきなりの提案に国王と宰相は目を見開き驚くが、ヘラントスからは既に戦意が放たれていた。


「··········陛下、この者に鉄槌を下す許可を頂きたく」


「許可しよう」




 場所は敷地内にある近衛騎士団の訓練場に移った。


 いやいや、敷地内に訓練場ってどんだけだよ・・・スケールが違いすぎるっての。 しかも野次馬もこれでもかってくらいいるし。


 ヘラントス団長とあのアルス・セントリアが模擬戦をやる、聞きつけた騎士達はこぞって模擬戦を行う場所に集まっていた。


「それでは武器は木刀のみ、魔法は身体強化のみとさせて頂く、お互いよろしいかな?」


「はい、問題ありません」


「私も異論ありません」


「それでは··········初め!」



 合図から数秒、互いに仕掛けずに徐々に距離を詰めるのみ。


 先に動いたのはアルスだった。


「ッ!?·····なるほど、噂に違わぬ強さを持っているな」


 う〜ん、ここは圧倒していいのだろうか。騎士団長だけあって確かに強いけど、そこまででもないんだよな〜。


「その間抜けな顔はなんだ?」


「いや、早く身体強化使って欲しいなと思いまして」


「··········その鼻へし折ってやろう」



 ヘラントスは全力で身体強化を展開、団長の本気をなかなか見れない騎士達は驚くと同時に、アルス・セントリアの負けだなと誰もが思っていた。


 う〜ん、«魔鎧»を使うまでもないな・・・近衛騎士団長って王族を守る騎士団だよな? こんな弱くて大丈夫なのか?


「ッ·····そのスピードはなんだ!?しかも身体強化を、使ってないないだと!?」


「もう終わらせますね」


 木刀を上空に投げた直後、低姿勢でヘラントスに急接近し、柔道技のはらい投げで転ばした。


 降ってきた木刀をキャッチしてヘラントスの首元に添える。


「────これで私の勝ちですね」


「··········しょ、勝者·····アルス・セントリア!」


「「「「「···············」」」」」


 模擬戦を見ていた騎士団員はもちろん、国王や宰相までも驚き過ぎて固まっていた。

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