第48話

「この場にいるのは、公爵と侯爵は全て揃っている、後は後ろに立っているのは近衛騎士団長だ」


 まさかの重鎮が全員集合してる自体にビックリするアルス。ふとバージェスの言葉を思い出した、『下の者の気持ちを考えておらん』、確かにと納得した。


 こんな偉い人達に囲まれたらどう考えても萎縮してしまう、だがアルスは全く怯んでなどいなかった。



「さて··········まずはこれまでの事すまなかった」


「「「「「ッ!?」」」」」


 国王が小童に頭を下げた、いきなりの展開に重鎮達は驚いた。


「何をしておられますか!相手は男爵家の次男ですぞ、下の者に頭を下げるなどあってはなりません!!」


 それは確かにそうだとアルスでも納得していたが、国王は口を挟んだ者を睨みながら、


「この場にいる事を許可はしたが、私のやる事に口を挟むなら退室願おう」


「ッ!··········出過ぎた真似をしました、申し訳ありません」


 え、俺はどうすればいいの? まさか王様に謝られるとは思って無かったんだけど・・・


「貴様は何とか答えたらどうだ! 陛下が頭をお下げになられたのだぞ!!」


「あ、はい。すみません」


 状況が読めずボーッとしてた所に別の者がアルスに怒鳴りかけた為、思わず素っ頓狂な返事をしてしまった。


「その態度はなんだ!? 国王の御前なのだぞ!! これだから田舎者は·····」


 その者に続いてザワザワとアルスやセントリア家、リューゼント辺境伯家を馬鹿にするような話が聞こえてきた。


 あはは〜かなり舐められてるな俺達、もう愛国心が薄れまくってるわ。・・・でも王様はリューゼント辺境伯やセントリア家を理解はしてるっぽいよな。



「静まれっ!!」


 国王の覇気を含んだ声が響いた。

 ぺちゃくちゃ喋っていた重鎮達も一斉に黙り、ゴクリ、と喉を鳴らす。


「アルス・セントリアよ、お主のおかげでフリッツェント連邦国との関係が良くなりつつある、何か褒美をくれてやらねばならん。なにかあるか?」


 国王は再度アルスに謝りたかったが、また周りが騒ぎ出すとみて話を変えた。


「··········それでしたら、先程私の家やリューゼント辺境伯家を罵った者たちに罰を与えてください」


「「「「「「ッ!!!???」」」」」」


 せっかく国王が気を利かせて話を変えたが、アルスはあえて蒸し返した。


 もうこの場は荒れるって決まってるんだから、俺はとことんやらせてもらう。俺をバカにするのは良いけど家族達を馬鹿にするのは許せない。


「貴様、我らに宣戦布告するつもりか!?」

「まあまあ、若いから誰を敵に回したか分かっていないのですよ」

「功を積んでるからと図に乗りおって!」


「··········分かった、リューゼント辺境伯、セントリア男爵を罵ったもの達には罰を与える」


 信じられないという気持ちを顔にうかべながら国王を見る重鎮達。


 う〜ん、終始静かにしてる人もいるな・・・・たぶん公爵家の人達と、席順的に侯爵の人もいるっぽいけど、あの人は誰なんだ?




 ◆ ◆ ◆




 あの後もグダグダと話は続き、結局なんのために集まって何がしたかったのか分からないまま話は終わった。


 そして再び客間で待たされていると、またもや宰相が現れさっきとは別の部屋に通される。


 そこには国王と近衛騎士団長が居た。

 相変わらず騎士団長は敵意と言うか殺気がビンビンである。


 少ない人数で王様に会う方が緊張するな、さっきよりも距離が近いし・・・



「·····やっと落ち着いて話ができるな、ヘラントス、頼むから邪魔しないでくれよ?」


「はっ、私は護衛でお傍にいるだけでございます」


 口ではなんとでも言えるよな、王様がこっち向いた瞬間睨んできてるし。子供じゃないんだからさ・・・・



「あぁ、ヘラントスがお主に敵意を向ける理由は、第二王子の従者にヘラントスの倅がいたのだよ」


「··········その件に関して私は悪いと思っていません。模擬戦も一対多数でしたし、むしろ私は被害者かと」


「〜〜〜!!」


「落ち着けヘラントス··········はぁ、態度を改めないなら護衛を替えるぞ?」


「ッ!·····申し訳ありません」


「改めて、これまでの事をわびよう。アルス・セントリアよ、申し訳なかった」


 先程よりも丁寧に、先程よりも腰を曲げて謝罪をしてきた王様。


「あ、頭を上げてください! 何も陛下が·····いや、責任問題となるとあれですが··········あの件は勝手に動いた人達が全面的に悪いのですから」


 国王と宰相がアルスの言葉に驚きつつも、話し合いは続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る