第45話

「へー! 海の中にダンジョンがあったの!? 凄いね!」


「アルス兄様が見つけたって凄いことだよね? しかもすっごい大きなダンジョンなんでしょ!?」


 夕食を終えた後はリーシャとマイクに冒険譚を聞かせていた。


 ダイアスとエレノアとクマラはジョンバッハに模擬戦を挑んでいる。

 ジョンバッハさんは『この地に来れて儂は幸運だな! 強い人間に強い魔物が多い、天国のようじゃー!』と大変喜んでいたとか。


「よし、お前達はもう寝る時間だ。また今度聞かせてやるから早く寝ろ〜」


「「はぁーい!」」


「アルス、父上が呼んでいるよ」


 ジークがリーシャ達とすれ違うように部屋に入ってきた。ジークは王立学園高等部を2年で飛び級卒業、アルスの影響で様々な嫌がらせを受けたが実力で黙らせていた。頭脳派とはいえ死の森近くに住んでいたジークが弱い訳もなかった。




 ダイアスとエレノアにクマラも連れて執務室に入ると、父さんが仕事をしていた。


「来たか·····エレノアさんは挨拶が遅れてごめんな。 私がアルスの父マルスだ、息子のことを今後もよろしく頼む」


「こちらこそアルスにはいつもお世話になっていますから」


「君がクマラか·····まだ幼いが特別な力を感じるな、アルスをよろしくな!」


『任せてよ!』


 マルスには『キューン!』としか聞こえてないが、ある程度の意味は伝わったのだろう。マルスも微笑みを浮かべていた。


 ちなみにクマラはこの2年間で前世の大型犬並に成長している、体の大きさを自由に帰ることが出来る為アルスの太ももの上でくつろいでいる。



「アルスに手紙が来てるぞ」


 そう言って引き出しから一通の手紙を出したマルス、紋章はアルスの知らない家からだが、一目見てわかる高貴な紋章で封をされていた。


「·····どちらからの手紙ですか?」


「王家からの手紙だ」


「···············はい?」


 まあ読んでみろとマルスに促され渋々読んでみる、『第二王子の従者の件や帝国絡みの事で、アルス君や身内に迷惑かけてマジごめん!謝罪がしたいから王宮まで来て欲しい』って事が長ったらしい文章で書かれていた。


「··········めんどくさっ」


「思ってても口にするな、ここだからいいものの他では口に出すなよ?·····それでなんて書いてあった?」


「色々謝罪がしたいから王宮に来て欲しいって」


 学園の時から色々ありすぎたアルスを単身で王宮に送り込むのは、流石のマルスでも行ってこいとは言えなかった。


「流石にこれはバージェス様に相談しないといけないな」


「··········そう言えばジョンバッハさんはもうバージェス辺境伯様と模擬戦したんですか?」


 アルスからすればバージェスを使ってジョンバッハを焚き付けた所もある、実際どっちが強いのか単純に興味があった。


「あぁ、既に何回も戦ってるな。街でやると被害が凄いから死の森で戦ってもらってるが··········」


「それで、どちらの方が戦績は勝ってるんですか?」


「最初はバージェス様が勝っていたが、最近はジョンバッハ殿が追い上げてるらしいな」


 ま、マジかよ・・・ジョンバッハさんでも負け越すのか!? 県知事強すぎーー!!! ていうか死の森で模擬戦してるとか、そこから次元が違うな。


「言うて今のアルスならいい所までいくと思うぞ? かなり強くなってるだろ?」


「··········まあ、一方的に負けることは無いかと」


「アルスは一対一より一対多数の方が本領を発揮する技を持ってる印象だな」


「私もそう思います。死の森に入ったことはありませんが··········試してみたらどうですか?」


 た、確かに。ダンジョン内でしか使えないと思ってたけど、死の森なら存分に使えるな!!



「話を戻すぞ、王宮への返事はとりあえず保留とする。ここは辺境だから返事が遅くなっても問題無いだろう、バージェス辺境伯様に一度挨拶に行かないとな」


「そう言えば向こうに行ったことありませんでした、これって不味いですか?」


「··········俺も忘れていたな、本当は良くないがあの方は許してくれるだろうさ」


 あの県知事なら確かに許してくれるかもと思い安堵するアルス。




 翌日、死の森エリア3にマルスとダイアスとエレノア、クマラにジョンバッハさんと来ていた。


「ではアルスよ、お主の技見させてもらうぞ!」


 ジョンバッハはアルスの大技を披露すると聞いて何も言わずとも付いてきた。


「じゃあまずは剣術をお見せします··········ふぅーーー、」


 集中、集中・・・〝心を燃やせ〟あー違う違う! 余計なこと思い出しちゃった。 集中──


«天魔一刀流・次元斬り»


 横に振った斬撃は前方にある木々を切り、魔物を真っ二つにしながら1キロ先まで続いた。


「·········· ふ、ふふふ、ふっはっはっはっは! アルスよ、その技は儂もちとヤバいと思うぞ!!」


「本当に強くなったねアルス」


「やはりダンジョン内かここでしか出せない技でしたね」


 各々が反応しているの中、早速次の技を始めるアルス。


«アースインパクト»


「「うおっ!?」」


 地面が抉れ空中に持ち上げられる光景に驚くマルスとジョンバッハ。


«グラビティ»


 落下速度を上げた隕石は地面に衝撃を与え、衝撃波がこちらにやってきた。



「··········アルス、この技に回数制限とかは無いのか?」


「? まあ無いっちゃ無いですね。かなり集中するので疲労は感じますけど」


「·····余り他所で使うなよ?」


「分かってます」

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