第44話
帰省の途中でラビンリスに寄ってマリエルに会いに来たアルス。
「久しぶり〜!」
「久しぶりだなマリエル··········相変わらず部屋は汚いのな」
いつも通りアルスが魔素を操り家中を掃除して足場を作る。
「アルス背伸びたね〜、一気に男らしくなったじゃん! あの時はまだ可愛らしかったのにな〜」
「男の成長なんてそんなもんだろ。それより今日は答えを聞きに来たんだ、マリエル、是非ウチに来て欲しい」
マリエルに実家の領地で魔道具店をやって欲しいと誘っていたアルス、2人の関係性が微妙になったこともあってマリエルも決断できずにいた。
「私は·····ここに残ることにしたよ」
「····················そっか」
セントリア領に行かないということは、アルスは振られたも同然であった。 アルスには冒険者として気兼ねなく旅をして欲しい、そんなマリエルの想いが顔から伺えた。
「でもアルスが家族や領民を大切に思ってるのは分かるんだ、だから魔道具店に私の商品卸すのは全然OKだからさ! 帰ったら話してみてよ」
「おう、ありがとな」
アルスはこの世界でも失恋した。
ただ前世とは違い今回は互いに尊重し合った結果であり、アルスもそれは分かっていた。
「はぁ〜、俺はとことん女運が無いらしい」
「アルスはこれが初恋だろ? 初恋は実らないって言うしそう落ち込むな!」
ラビンリスを出て実家に向かってるアルス達は、«浮遊»で空を飛んでいた。
ダイアスに励まされるが自分の気持ちは晴れない、アルスが転生者だとは知らないダイアス達は初恋と言うが、前世も合わせれば女運が無いと思うのは仕方ない。
「成人祝いなのにそんな顔をしていたらご家族の方々が心配しますよ?」
クマラは顔を擦り付けながら『元気出してー!』と励ましてくれる。
「そうだな·····俺の本当の目的は旅なんだ! それが終わるまでは恋愛なんてしてる場合じゃねーー!!!」
いや、そういう事では無いとツッコミを入れそうになったダイアス達だが、せっかく元気になってくれたならそれでも良いかと切り替えた。
◆ ◆ ◆
帰ってきましたセントリア領!
約2年ぶりの我が家にテンションが上がるアルス。
「なぁエレノア、今までの男爵家の領地で1番栄えてないか?」
「これは伯爵家と名乗ってもおかしくないくらいには栄えてますね」
2人は余りの繁栄ぶりに度肝を抜かれながらもアルスのあとをついていく。
「アルス様おかえりなさいー!」
「アルス様が帰ってきたぞ!」
「よっしゃ、家の店は酒無料だー!」
「ウチは料理を全部半額にしてやるぜ!」
「アルス様成人おめでとー!」
「「「おめでとうございまーす!!」」」
「あはは、ありがとなみんな」
見かける人達全員から話しかけられるアルス。
「アルス、なんでこんなに栄えてるんだ?」
「全部ジーク兄さんの力だな! 俺の兄貴すげえだろ!!」
3割位はアルスのお陰でもあるのだが、全部ジークの手柄にしようとするアルス。
「アルス様、おかえりなさいませ」
「「「「「おかえりなさいませ」」」」」
屋敷の前にズラっと並ぶ使用人達、代表して執事長が挨拶すると皆も声を揃えて挨拶する。
相変わらず軍隊にも負けない一糸乱れぬ動きにアルス含め一同絶句。寝ていたクマラも驚いて凝視していた。
「おかえりアルス、しかし強くなったな〜! 俺じゃもう勝てんかもな」
「本当に立派に育ったわねアルス、おかえりなさい」
両親に出迎えて貰い、久しぶりの空気に心を落ち着けたアルス。前世と合わせたらおっさんとも言える歳ではあるが、実家とはいつ帰っても落ち着くものである。
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