第41話
昨日はチャラ男達に1日拘束されたアルス達。
因縁つけられるかと思っていたら、急遽宴が始まってしまった。流石のダイアスやエレノアも予期できず、流されるままに宴に参加していた。
何でもこの街に他所から他国の者が来るのは大変珍しいらしい、しかも冒険者の中では中堅と呼ばれるCランクのアルス達が来れば、街の人からすれば騒ぎたくもなるとギルマスのドルトさんに申し訳なさそうに言われた。
「·····まあ、悪い気はしなかったよな」
「これほど歓迎されるとは驚いた」
「私はあれほど悪意の無いナンパは初めてされましたよ、逆に対応に困りましたが·····」
エレノアは行く先々でナンパをされる。
ただ、この街では悪意を全く感じない。ナンパに悪意を感じないって変だが、シー・アラックの冒険者達はただただチャラいだけだった。
「さて、この街にはやっぱり巨大なタコがいるらしい! 食うぞ!!」
「く、食うのか!?」
「流石に抵抗が··········」
『アルスが言うなら美味しいって事だよね!』
アルスを心酔し切っているクマラは置いておき、やはり海の幸を知らない者からしたら抵抗はある。
「まあ一度食えば分かるよ、あれは薬物と言っても過言では無い·····中毒になるぜ?」
ヒール顔をするアルスにドン引きしたダイアス達であったが、アルスは巨大タコが美味いと確信していた。
水深200m付近でタコと交戦中のアルス達。
«魔障壁»で結界を張って呼吸を可能にしている、それぞれに張る事でみんな自由に動けている。
「それにしてもデカすぎだろ! タコ足伸ばせば1kmいくんじゃねえか??」
「さっきから殴りまくってるが、これダメージ入ってるのか?」
「恐らく入っているでしょうが、ダメージを負わせてる実感が無いのが嫌ですね」
『なんか体力がいっぱいって感じだね!』
多分だがクマラの予想が当たりだな、ダメは入ってるけどHPが底なしなんだろうな・・・飽きてきたな。
「«天魔一刀流・次元·····»「待て待て待て!その技は洒落にならんぞ!!」·····え〜良いじゃん」
「海が割れるわ!!」
「そう言うならダイアスが何とかしろよ、俺もう飽きたし」
結局ダイアスが数時間ボコスカ殴りまくって巨大タコを倒した。 即マジックバッグにタコをしまって、«浮遊»で海の上スレスレを飛行している。
「今更だが、アルスが使う天魔一刀流? あれは誰から伝授されたんだ?」
「え? 俺がテキトーに付けた名前だけど?」
「「『え?』」」
「··········え?」
あれほどヤバい技をアルスに教えたのは誰なのか、前々から気になっていたダイアス達。 だが実はアルスの身体能力に物言わせてるだけであり、テキトーに名付けをしたと知り愕然とする。
「··········本当に規格外だな、アルスは」
「いやいや、お前らも大概だろうに」
「いいえ、普通ヒト族はここまで強くありません」
『僕はそこら辺よく分からんないけど、アルスが凄いってのは知ってる!』
◆ ◆ ◆
巨大タコをアルス達だけで食い切れる訳もなく、チャラ男達や街のみんなも混ざって大宴会になった。
この街を治めているのはムルーシアさんの側近らしい、所謂代官と言うやつだ。 こんな騒ぎにしちゃったことを丁重に謝っておいたアルス。
街の人は基本的に温厚な人達なのに宴会と聞き目の色を変えた、みんなで浜辺に宴会会場を1時間で作り上げた。 宴会への熱が凄まじいシー・アラックの人達。
「代官殿、すみませんね。まさかここまで大事になるとは·····」
「いえいえ構いませんとも。ムルーシア様にはアルス様に、自由に過ごせるよう配慮せよとご下命を頂いておりますので」
やっぱあの人すごいな〜・・・威厳じゃなくて人柄で信頼を得ているんだな、俺もムルーシアさんのこと気に入っちゃってるし。
「·····この今は使ってないマジックバッグに、まだ巨大タコの素材が入っています、ムルーシア様や他2人の代表者様へ献上させて下さい」
アルスはこの騒ぎを起こした謝意を含めて、改めて頭を下げた。
「ムルーシア様が気に入るお方ですね、アルス様のお気持ち受け取ります。必ず届けておきます」
「··········おいお前ら食いすぎだろ」
「「『·····』」」
タコがあまりに美味しかったらしく、喋れなくなる程食べていたダイアス達。
「·····で、聞くまでもないと思うがどうだったんだよ」
「··········これは、中毒になるのも無理は無い」
「えぇ、まさかこれ程とは·····海鮮料理恐るべし」
『僕は疑ってなかったけどね!』
クマラだけいつも通りな様子に苦笑いになりつつ、優しく頭を撫でた。
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