第40話
族長バッカスの家に招かれたアルス達は、既に待ってくれていたフリッツェント連邦国の代表に慌てて礼をした。
「そんなに畏まらないで下さいませ。この場は非公式です、貴方がアルス・セントリア様でしょうか? 先日オークの集落を壊滅していただいたこと、この場でお礼申し上げます」
長身のスレンダーな美人が腰を折った。
他に二人いるとはいえ、一国の長が他国の者に腰を折った事実は重い。
「あ、頭を上げて下さい! 通りかかった所に偶然見つけただけです、まあ数の多さには驚きましたが··········私の仲間達です、ダイアスにエレノア、私の方に乗っているのは従魔のクマラです」
俺の紹介に合わせてダイアスとエレノアが頭を下げ、クマラは『キューン』と挨拶する。
「それでも国を救ってくれたことに変わりありません。申し遅れました、私はフリッツェント連邦国の代表の一人、ムルーシア・テンダルトと申します。つきましてはこの国に滞在している間に、一度王宮にご招待したいのですが、よろしいでしょうか」
「··········分かりました、この国を出る時にお伺い致します」
約束を取り付けると、再度お礼を言われムルーシアは退出した。
「す、凄い気品を感じる方だったな··········それに一国の長があんなに丁寧な対応をするとはね、ちょっと驚いたわ」
「ムルーシア姐さんは昔からあんなお人だ、だから俺達ドワーフも信頼している」
「素晴らしい統治者だと思います」
「それにしてもアンタらこの国を救ってくれたのか! 俺達ドワーフからも感謝を伝えねばな、この里を代表して礼を言う。いつでも歓迎するから好きな時に遊びに来な」
バッカスにもお礼を言われ少し話をしたアルス達は、ドワーフの里を出た。
◆ ◆ ◆
10日ほどで海の街シー・アラックに着いた。 この国に来て盗賊に襲われる回数が極端に減った、そんな小さい所からも治安が良い国だと思ったアルスだった。
「穏やかな街だな〜」
「別世界に入り込んだ様な錯覚を覚えますね」
«僕はこの街の匂いが好き〜»
あ〜なんて言えばいいのかな、俺はここに住むことになるな。 海があるってだけでなんとなく来たけど、それ以上に街の雰囲気が好きだ。
海から伝わる磯の香り、建造物も決して立派と言う訳では無い。 ただこの地に住まう人々の顔が皆して笑顔だった、子供達が走り回っているのを大人達が優しい笑顔で見守っている。
「なんか、心が洗われるな〜」
そんなシー・アラックの冒険者ギルドにやって来たのだが・・・
日焼けした冒険者達が上半身裸で酒を飲んでいた。
「お? 見ない顔じゃね? 珍し〜い!」
「1人めっちゃ美人いるじゃん!!」
「美人を見ながら飲むエール程美味いもんはないべ〜〜!!」
「な、なんかチャラい··········この街と冒険者ギルドのギャップが凄すぎる! でも·····」
「多分だがアルスと同じ考えだ。今まで回って来た街の中で、冒険者の質がいちばん高いな」
ゴリマッチョは1人もおらず皆引き締まった体をしていた。 恐らく海中にいる魔物を狩っていて、余分な筋肉が削ぎ落とされているのだろうとアルスは予想していた。
「はいは〜い、君達どっから来たのー? まだ若いのにマジ偉いね! はい、カード見せてー」
そして受付嬢がギャル。
前世でも知らない展開に思考が完全に止まってしまったアルス。
「どれどれ〜··········うっそー、全員Cランクなの!? 激強じゃーん!」
なんの悪気もなくランクを大声で叫びチャラ男達の耳に入った。
「へぇーお前らCランクなのー?」
「凄いじゃねえか! 強いのか!?」
「Cランク何だから強いに決まってんだろ、ばかかよ!」
「いや〜これは楽しみだな〜〜」
結局こういう展開かよ!?
くそ、この街気に入ったのにな〜・・・
アルス達はギルド内にいたほぼ全てのチャラ男達に囲まれていた。
「あの〜、俺たちになにか·····」
「「「「「「··········宴だーーー!!!」」」」」」
・・・・・・・・・・・・・・・・なぜ?
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