第39話



現実的にありえない報告に驚く3人の王。


「詳しく説明を」


「はっ、集落がこれ以上拡大しない為に地道に間引いていたのですが·····突如、集落全体を囲む結界が張られ激しい戦闘音が聞こえました。 非常事態だと思い駆け付けた時には、既にオークは全て狩られており集落も壊滅状態でした」


再度詳細を聞いてもイマイチ現実味が無い話に、思考が上手く出来ない3人。


「エルフか獣人族の方々が対処してくれたのか?」


「いやしかし、結界を張れる存在となるとエルフの族長くらいだぞ? わざわざ対処してくれるとも思えん」


「·····団長殿、ここ最近でこの国に入った冒険者等はいるか調べてくれ」




数日後、騎士団長が再び会議室で報告を行っていた。


「集落が壊滅した当日、バーバント王国からアルス・セントリアとその一行がフリッツェント連邦国に入国しています」


「「「ッ!!!」」」


3人は集落を壊滅させたのはアルス・セントリアと確信した。


ここ1年ほどでアルス・セントリアという名前は何度も聞いていた。学園で第二王子の従者をボコボコにした、学園を飛び級して1年で卒業、もちろん国際大会での試合も見ている。


更にラビンリスでのダンジョン攻略や、ペスタリカ帝国とのトラブルも報告を受けていた。

最近は報告を受ける度にアルス・セントリアの名を聞いていて、3人の中では既に恐ろしい人物になっていた。



「あ、あの·····アルス・セントリアが、この国に?」


「··········聞こえてくる話は暴れてる印象しか無かったのですがね」


「えぇ、今回は彼に助けられました。お礼をしたいのですが彼は今どちらに?」


「なんでも目撃情報によると、『この国を気に入った、街を全部巡るぞー!』と首都の冒険者ギルドの前で大声を出していたとか·····オークの集落があった先にはドワーフの里がありますので、恐らくそちらに向かっているかと」


「あら、ドワーフの里へ? それでしたら私が先ず挨拶をしましょう、国を出る際に一度王宮へ招待するという事でよろしいですか?」


「異議なし」


連邦国になる前からドワーフと交流があった国の代表者が、アルスへの対応をすると宣言、2人は二の句を告げずに了承した。




◆ ◆ ◆




その頃アルス達はドワーフの里に着いていた。


「うん、まさに職人の町って感じだな!」


ほぼ全ての建物から煙が上っており、武器防具や宝飾品などの工芸品を作っていると伺える。

店を構える建物はガラスが張ってあり外からでも商品がよく見える構造になっていた。


「あの武器屋だけ質が異常に高くないか?」


ダイアスが指さす店を覗くと、確かに良質な武器や防具が沢山並んでいた。 この里の中で良質という事は、かなりの腕前の持ち主と言える。



「いらっしゃい·····見ない顔だな、他国の者か?」


「はい、バーバントから来ました!」


「ほ〜う、それにしても2人は良い刀を持ってるじゃねえか」


「個人的に剣より刀の方が好きでして·····この店にも置いてありますか?」


もしこのおっちゃんドワーフが仕上げた刀があるなら見たい! 絶対に最高の刀だよな!!


「おう、少し待ってろ」



エレノアは弓を、ダイアスはグローブを見ている。アレスも店内を見渡しながら、改めてすごい鍛冶師だなと思っていた。


「お主達の技量ならこの刀を震えるだろう、そこらの刀より更に細く作っている。·····言いたいことは分かるな?」


つまり真っ直ぐ振らなければ簡単に折れてしまうということ、アルスやダイアス並に技量が無ければハズレと間違われる様な至高の刀だった。


「す、すごい·····」


「お主は龍人族だな? こっちの刀は小僧の刀より反りを無くしている。その分力を逃がさずに斬撃に加えることが出来る」


見ただけでダイアスの小さな癖にまで気づき、それにアジャストした刀を出した店主。


「そっちのハイエルフの嬢ちゃんにはこの弓を持ってきたぞ」


エレノアの前に出した弓は、折りたたみ式の少し大きめの弓だ。鉱石を織り交ぜて作った弓に魔物の糸を使った弦、こちらも至高の一品だ。



「こんなに凄いの見せられたら買うしかないじゃないすか店主、幾らですか?」


「お主の刀は白金貨22枚、龍人族の刀と嬢ちゃんの弓は白金貨20枚だ」


「買います!··········丁度です」


料金を払ってお店を出ると、大きく息を吐いた。



「····················ぷはーー、なんか凄い買い物しちゃったな」


「俺も同じ気持ちだ、これほどの武器を見たことない」


「私も出された弓からしばらく目が離せませんでした」


『特にアルスの刀は凄いね! 何でも切れちゃいそう!!』


みんなで感想を言い合っていると、1人のドワーフがこちらに近づいてきた。



「お主がアルス・セントリアか?」


「はい、そうですが··········どちら様で?」


「儂は族長のバッカスじゃ、実は今フリッツェント連邦国の代表が来ていての。是非お礼がしたいと言っているのだが、都合は大丈夫か?」


恐らくオークの集落の件だろうと思ったアルスは、族長のバッカスに連れられて代表者に会うことになった。

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