第38話
首都の冒険者ギルドにやってきたアルス達だったが、特に魅力的な依頼が無かったためアルスは資料室に籠り国の情報を集めた。
「お待たせ。やっぱこの国面白いぞ! 共存はしてるけど各種族の里があるらしいから巡りたいな、あとはやっぱりシー・アラックって街には必ず行きたい」
シー・アラックは名前の通り海に面した街であり、元日本人のアルスからしたら行くことは確定事項である。
「各種族の里巡りか、面白そうだな!··········そういえばここにあるエルフの里はエレノアの故郷なのか?」
「いいえ、私が育った里はバーバントとスノウゼンの国境付近にあるので、知人は居ないでしょう。それにこの国にはハイエルフも一定数いるので、私が原因で目立つこともないかと」
「それならなんの心配も無く巡れるな!」
エレノアの懸念も無くなり益々この国を巡る事が楽しみになったアルスだった。
首都とシー・アラックの間にあるドワーフの里を目指して森を駆けるアルス達は、異変を感じていた。
「なんか、やたらオークが沢山いるな」
「ここの生態系が元からこうなのか、又は異変が起きているのか·····」
『普通はこんなに多いはずないよ、お母さんに聞いたことないもん』
う〜ん、もしオークの集落が出来ているとしたら結構問題だよな・・・オークはDランクの魔物だけど集落となると、少なくても50体はいる。 首都に情報は回ってるんかな?
「俺達で対処しちゃおう、俺の予想では集落が出してると思う」
付近を調べていると、割と直ぐに見つけることが出来たオークの集落。 早く見つけられたのは、集落が予想の何倍も大きかったからだ。
「おいおい、どんだけいるんだよ·····」
「ざっと見る限り、300はいるかと」
「これはもう街と言っていいくらい大きい集落だったな··········俺は集落全体に結界を張るから、皆は好きに暴れてくれ!」
アルスが«魔障壁»で結界を形成すると、オーク達は驚き周りを警戒する。
直後にダイアス達が動いた。
ダイアスは刀を抜いて一体ずつ首を確実に落としながらもどんどん狩っていく。
エレノアは双剣でオークを切り込んでいく。オークは性欲が旺盛な魔物な為、エレノアは嫌悪感から必要以上に切り刻んでいた。
クマラは雷魔法を纏い凄まじいスピードでオークを噛み砕いていく、オークは気づかずに殺されていく様は少し可哀想にも思えた。
あいつら、倒した数で競ってるな?・・・まあ楽しそうだから文句は言わねえけどさ。
「俺は112体倒した」
「·····私は97体倒しました」
『僕は136体!やったー勝った〜!!』
「やっぱこの中だとスピードはクマラが1番だな!」
全員がオークを一撃で倒せる実力を持っているため、今回はスピード自慢のクマラに軍配があがった。
◆ ◆ ◆
フリッツェント連邦国 首都にある王宮。
その一室には、3人の当事者が集まっていた。
議題はオークの集落、近頃商隊がオークに襲われる被害があまりにも多いため、調査をしたところ300体を超えるオークが集落を作っていた。
「まずいな·····集落とはいえ300は多すぎる」
「もし、300体を超えるオークが首都を襲ったら··········」
「悲観する事は無い、これまで通り力を合わせて対処しましょう」
連邦国が出来てから300年、これまでも数々の困難を共に超えてきた統治者達も、ここまで大きな問題に直面したのはだいぶ前である。
「各種族に応援を頼みましょう、ドワーフからは良質の武器防具、獣人族とエルフからは戦闘員を派遣してもらうよう申請しておきます」
「また頼ることになるのか·····我々人とは無力よな」
「無力であると認められる事が他の国との違いかと、先代である私の父は『己の弱さを真摯に受け止めよ』とよく仰ってました」
亜人は身体能力が人族より高い。
協力関係にあるとはいえ、非常時にどうしても頼らざるを得ない状況を何とかしたいと3人は思っていた。
そこへ国に仕える騎士団長が急ぎ足で会議室に入ってきた。
「報告します、オークの集落が、集落が壊滅! オークは一体も残らず駆逐されていました!!」
「「「ッ!!!???」」」
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