第37話
国境を越えてフリッツェント連邦国に入ったアルス達は街道を歩かずに、森の中をありえないスピードで駆けていた。
「····················あ、」
突然アルスが足を止め茫然と立ち尽くす。
いきなりの出来事にダイアス、エレノア、クマラ達は何があったのか分からず首を傾げた。
「そうか、«魔刀»ができるって事は干渉した魔素で風魔法を起こせる、つまりはこういう事も出来るわけだ!」
「「『うわっ!』」」
直後アルス達の足元に風が起こり宙に浮いた、 何故今まで気づかなかったのかと後悔するアルス。
「これで移動が楽になるぞ! «浮遊»だ」
「なるほどな、これなら確かに移動が早くなる」
「こんな風魔法ありましたか? 昔に存在した大賢者が空を飛べると聞いたことがありますが·····」
『アルスすごい! 楽しーー!!』
こんな初歩的な技を見逃していたとは、
俺は転生者失格なんじゃないか!?
意味不明な事を考えながら、アルス達は標高をグングンあげて雲の上まで来た。
気持ちいい空の旅を楽しみながら、相変わらず豪華な野営をしていると、大きな街が見えて来た。
「首都に着いたっぽいな、降りるぞ〜」
◆ ◆ ◆
アルス達は冒険者ランクがCランクになっている、アルスがストレス発散にダンジョンを虐待していたらあっという間に昇格した。
門兵に冒険者カードを見せて街に入ると、思わず立ち止まり言葉を失った。
「この街並みは·····バーバントを超えてないか?」
「··········あぁ、確実にこっちの方が綺麗だ」
特別キラキラしてる訳では無い、しかし王都以上に綺麗に並んでいる建物、一軒ごとに味があり芸術すら感じる建物が多かった。
「そして他種族が当たり前のように共存しているな·····」
人間、ドワーフ、獣人族、エルフがそこら中で見受けられ互いに支え合って生活している印象を受けた。
街を見てわかる、善政をしているな。しかもただの街じゃなく首都だぞ? 治めてる人がよっぽど優秀なんだろうな・・・
「ゼロ、聞こえるか?」
<ん、どうしたボス。フリッツェントに入ったんじゃなかったのか?>
「いや、そのフリッツェントの事でな·····この国の歴史とか知ってたら教えてくれないか?」
調べればすぐに分かる事ではあるが、あまりに気になったためすぐに答えを求めてしまったアルス。
フリッツェント連邦国の統治者は1人では無く3人いる、小国が3つ束ねた時の国王達が力を合わせ治めていた。
束ねる前は国ごとにドワーフ、獣人族、エルフと協力関係を築いて何とか持ち堪えてきたが、バーバント王国とペスタリカ帝国が勢力を拡大させていた為、三国の国王達が会合を行い同盟ではなく、争うことなく国を一つにした。
これが200年前、この国では当時の3人を伝説の三英傑と呼び、未だにその思想を尊重し助け合いながら国が成り立っていた。
他の国みたいに貴族はいない、元々治めていた国々を王が直接治める事で余計な摩擦を起こさずに済んでいた。
「なるほど·····それで他種族もなんの摩擦もなく協力し合っているのか」
<あぁ、そんなところだ、俺は忙しいからもう切るぞ>
「わざわざすまん、ありがとな」
組織のボスを教科書として使ってしまったことを素直に詫びたアルス。
「··········バーバントとの関係はどうなんだ?」
「確か先々代の王が不可侵条約を結び現王が商業での協定を元に同盟を結んでいたと思いますよ?」
「良かった、バーバントが賢王で·····それにしてもこの国は失っちゃいけないな、大陸中の手本となるような国だ。 よし、この国に俺達の家を建てよう」
「「『ッ!?』」」
「あぁ、もちろん旅は続けるぞ? ただ旅を終えたらここに移り住むのも悪くないと思ってな·····」
『アルスの故郷はどうするの?』
ダイアスとエレノアも気になっていたことをクマラが聞いた。
「ん? 父さん達は特に何も言わないんじゃないかな、別にバーバントを捨てるわけじゃないし·····両親も元冒険者だったし、この国の素晴らしさを知ってるんじゃないかな」
この国は全ての街を巡ると決めたアルスであった。
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