第34話

 未だ懸念は残っているものの、心がだいぶ穏やかになったアルスは、ミステリーダンジョンに潜っていた。



『なるほど、その様な事が·····もしもの時は私も手を貸しましょう。 相手の家族に懸賞金をかけるなど何たる非道!』


 一応ここ最近の出来事をクマラの母親に報告に来てるのだが・・・・


 おーふ、妖狐が怒ると迫力半端ねえな!

 俺に怒ってるわけじゃないのに震えが止まらないんだが。


「徹底的に報復しましたのでご安心ください、私の為に怒って下さりありがとうございます」


『それは頼もしいですね、家族の方々も喜ばれるでしょう。 ですが万が一の時は私は嬉々として帝国を滅ぼしますので、必ず、声をかけてくださいね?』


「·····あははは、約束します」


 こ、断りずれーーー!! 顔は穏やかなのにオーラが怒ってるよ・・・・えーと、帝国の方々まじで大人しくしててくれ!!!



『クマラもこの短期間で成長しましたね、雷魔法を上手く扱えています』


『うん! アルス達が鍛えてくれてるからね、ジョンバッハさんの時みたいに置いてけぼりにはされたくない!!』


 ジョンバッハとの死闘の際に見守ることしか出来なかったクマラは、必死に修行を積んでいた。


「今の時点でスピードの点はジョンバッハさんと同じくらいじゃないか? 俺の全力より早いもんな〜」


『僕ね、考えたんだ! アルスみたいに魔素を操って空から雷を落としまくる! それでいっぱい敵を倒すんだ!!』


 な、なるほど〜、雷の広域攻撃ね・・・雷なんて音速超えてるから避けられる訳ないし、え、めっちゃやばい魔法習得しようとしてない??


 アルスは空から無数の雷を落としまくるクマラを想像して背筋が凍った。




 ◆ ◆ ◆




 クマラの母親と別れてから2週間、野営をしながら大森林エリアを隈無く探索したアルス達。


 いや〜楽しかったな! 如意棒を持ったサルが出てきた時は思わず大爆笑しちゃった・・・激怒されて襲われたけど、なかなか強かったな。


 ミステリーダンジョンにはまだ無人島エリアがあるらしいが、今後の楽しみにとって置くことにした。



「そろそろフリッツェント連邦国に行くか」


「行く街は決めてあるのか?」


「とりあえずは首都に行こうと思ってる、色んな種族が集まる国らしいから、面白い出会いがあるかもな!」




「マリエル〜、街を出ることになったから報告に来たぞ!」


「ふーん、報告に来ただけなんだ。じゃあもう行っていいよ? ばいばい」


 本当はもっと話したいしイチャコラしたい気持ちがあったアルス、素直になれていないのをマリエルは見抜いていた。


「··········えっと、ゆっくり話したいから上がらせて貰えないかな?」


「おっけー、話すだけね?」


 結局話す前に3回戦した。



「アルスが上手すぎるから待ってる間辛かったんだ〜··········でも溜まってるのはアルスも同じだったね!」


 ニコニコ笑うマリエルに癒されながら、近況報告をした。


「お、思った以上に重い話だったね·····でも、アルスのギフト話してくれて良かったの?」


「マリエルは信頼してるからな、人に言いふらす様な事しないだろ?」


「うーん、どうだろうね? アルスが余りにも私を放置してたらポロッと喋っちゃうかも」


 もう確信犯だろ、こんな可愛いてへぺろ見たことないぞ!? まじで息子が元気になっちまうから勘弁してくれよ・・・


「そ、それで··········セントリア領に店を出すかどうか決まったのか?」


「え? アルスが次帰省する時って言ったじゃん! 話題帰るの下手すぎ〜、それにバレてるからね?」


 そう言ってアルスの息子を優しく撫でながら上目遣いをしてくるマリエル。


 うん、俺はマリエルに勝てない。今後のことは分からないけど、もしマリエルと結婚したら尻に敷かれるに違いない。


 最後に長い一戦をして、その日はそのままマリエルの家に泊まらせてもらった。

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辺境男爵家の次男に転生した俺〜前世は何もかも上手くいかなかったから、今世は自力チートで異世界を謳歌する〜 ムンク @0134

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