第16話

 連続投稿なので、前話を読んでない方はご注意を。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



店に入るとポツポツと客がいて俺達も普通の席に通された。

 そこで初老の男は防音のマジックアイテムを起動し、結界を張った。


「さて、私は回りくどいのが嫌いでね、単刀直入に言わせてもらおう。アルス君、ペスタリカ帝国に来ないかい?」


「はい? 言ってる意味が分かりかねますが、僕は冒険者になるつもりです。 いずれ帝国にも行くと思いますが·····」


「はぁ·····アルス、この男はそういう事を言ってるんじゃない。これは言わばスカウトだ」


「あ、そゆこと!お断りします」


 即決。帝国の男が口を挟む前に断られた、ジョンバンクから僅かに殺気が漏れる。


「非常に残念だよアルス君·····」


 店の中にいた客、店員が立ち上がり俺とダイアスを囲むように輪を作った。



 やっぱり罠だったか・・・これ返り討ちにしたら国際問題になる? てか間違いなく戦争だよな、この男身分高そうだし。


「ダイアス、ちょっと準備してて」


「ッ! 了解」


 その瞬間、今まで放った殺気の数倍にもなる圧を店全体に放つ。それに全力の«グラビティ»を当てて、初老の男やジョンバンク、囲っているもの達まで膝を床に付いた。


「「「「「っく!·····」」」」」


「あの決勝戦が俺の本気だと思ってたんだな、まあこれが俺の本気だ、息できないだろう? 帝国は俺をスカウトするんじゃなくて、警戒するべき人として把握するべきだったんだ。運がなかったな」



 アルスの殺気はダイアスすらも冷汗が背中を流れるほど、人によっては悪魔に心臓を鷲掴みにされてる幻覚や、死神に鎌を首に当てられてる幻覚を見させるほど。

 帝国の人達にトラウマを植え付けるには充分であった。


「大人しく国に帰れ! ··········ダイアス行くぞ」




 帝国の人にご馳走になった俺達はゼロの元へ訪れていた。


「ってな訳で、これから帝国に狙われると思う」


「··········なるほど、ボスは俺達を虐めるのが好きらしいな? 今度は国を相手にするのか。 勘弁してくれ」


 いやいや、俺は被害者だからな!? ダイアスも『やれやれ』みたいな顔してないで援護しろよ!


「それに関してはすまんと思ってるよ··········ところで組織の拡大は順調か?」


「あぁ、そろそろ主要箇所に拠点を増やす段階だ」


 アルスにもらった資金で順調に勢力を伸ばし、王都ないに残っていたタチの悪い同業者を追い出すことに成功している。


「それならセントリア領にも拠点をなるべく早く作ってくれ、帝国が何してくるかわからん。俺が無理なら搦手を使ってくる可能性が高いしな」


 そう言って黒曜金貨2枚をゼロに渡す。


「ッ!··········まったく。 そこらへんの貴族よりよっぽど金持ってるだろ」


「マジで頼むぞ、俺も貴族の端くれだからどうしても表立って出来ないことはある」


「分かっている、任せておけ」




 アジトを出た俺達は冒険者になる前に一度実家に帰ることにした。


「報告することが山ほどあるしな·····絶対に怒られるよな〜今回は流石にやらかしすぎた自覚がある」


「アルスは何も悪くないだろ、それよりどうやって帰るんだ? 実家の方はアルスが学園に3年通うと思ってるから迎えなんて来ないぞ」


「··········馬車だと時間かかるし走って帰ろうぜ」


「それがいいな」


 馬車の何十倍も早いスピードで走り出した。




 ◆ ◆   ◆




 馬車で2ヶ月近くかかる道のりを半月で飛ばして実家に帰ってきた。


 屋敷の前には父と母にジーク、クレアにリーシャやマイクが待っていたのだが・・・



「アルス、手紙を読ませてもらったけどよく分からなくてね。本人の口から詳しく聞きたいんだ」


「あら、私もその場に同席するわ。アルスの学園での〝活躍を〟しっかり聞きたいの」


 両親は笑顔で言っているが目が完全に据わっていた、あまりの迫力にアルスとダイアスは後ずさる。


「··········ダイアス、お前も俺と一緒に話をしてくれる「いいえ、ダイアス君にはリーシャ達と遊んでて欲しいの。頼めるわよね?」··········」


 ダイアスを射殺するような視線を向ける母。


「··········うむ、任せておけ。リーシャとマイクの面倒は俺が見てやろう」


 こいつ、従者の癖に俺を見捨てるか!? 母さんの圧に負けるなよ、それでも龍人族かお前は!!



 母さんに首根っこを掴まれながら執務室に入ったらなんと、リューゼント辺境伯当主様もいらっしゃるでは無いか・・・


 うん、そりゃそうか、今回の件は一歩間違えたら内乱になってもおかしくなかったもんな。


 アルスは諦めの境地に入り、洗いざらい全てを話した。


「う〜む、俺はやはりアルスは悪くないように思えるが?」


「そういう問題では無いのですよバージェス様」


「そうですよバージェス様」


 両親はバージェス辺境伯様の言葉を真っ向から否定する、普通であれば首が飛びそうな案件だが、アルスの両親はこうと決めたら絶対に曲げない。


「だそうだ、アルスよ。受け入れなさい」


 け、県知事!? あなた両親の上司ですよね・・・かといってバージェス辺境伯様にも迷惑をかけてるわけだし、うんこれは俺が全面的に悪いな。


 アルスは正座をさせられこってり怒られた。

 体を鍛えても正座はキツかった。




 ガチ説教を受けた翌日、俺はリーシャとマイクと遊んでいた。


 リーシャはとてつもない魔力量を持っている、既に母さんに魔法を叩き込まれてるから高名な魔術師になるだろう。


 マイクは剣の才能があり、『騎士になってジーク兄様を支える!』と言って腕を磨いている。



「アルス、いるか?」


「ジーク兄様、どうしたの?」


 3人で遊んでいると、ジークが部屋に入ってきた。


「もうすぐ王都に向かわなきゃいけないからさ、アルスも冒険者になるんだろ? 会えなくなるから会っておこうと思ってな」


「俺のせいで兄様が学園で、なにかされるかも·····本当にごめん」


「あはは、何も気にすることないよ! それにこのネックレスもあるし」


 ジークには超小型のゴーレムを渡していた、1日1回までどんな攻撃も防ぐことが出来る。


 さらにゼロには『ジーク兄様に手を出す奴は容赦するな』と命令している。家族を守るためなら冷徹になる、そんな覚悟がアルスには既にあった。





━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


これで学園編終わりです!

毎日投稿大変でしたね〜w



ようやく冒険者として旅がスタートします!

お楽しみに〜

※更新は3日に一度くらいになります🙇‍♂️

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る