第15話

 会場の招待席である男がアルスに興味を持っていた。


「ほぅ、あの魔法を全て躱すか。なかなかの身体能力だな··········お前はどう思う?」


「確かにいい線は行ってるかと、ただ私には到底及びません。ご心配なさらずとも、圧倒的な結果を残しますよ」


 男の傍に立っていた青年に意見を求めると、間を置かずに口を開けた。


「ふふふ、お前には期待しておるぞ? 帝国の未来のために、帝国の悲願のために暴れて来い」


「承知しております」




 ◆ ◆ ◆




 準決勝も、スピード自慢の相手にグラビティ有りで何とか勝てたアルス。


 決勝の相手はペスタリカ帝国のジョンバンク。 属性魔法が全く使えず、身体強化魔法を極めまくった武人。これがアルスが相手に抱いた印象。



「降参しないなら叩きのめすぞ、どうする?」


「なんで皆してそんな臭いセリフが吐けるんだ? 聞いてるだけで恥ずかしいのに··········一応この大会に優勝したら飛び級で卒業できるから、引く気ないね」


「·····殺す」



 開始直後、一瞬で距離を詰め腹に1発をもらったアルス。 今大会で初めて吐血する。


 ひぃ〜、流石に素の状態じゃ厳しかったか。これは楽しめそうじゃん!


«グラビティ»30%解除 + «魔鎧»



 至高の肉弾戦。闇闘技場でしか見られないような戦いを、公式な試合でしかも学園生が行っている事に魅入られ沈黙が続く会場。


「なかなかやるでは無いか! バンバード王国にこれ程強い者がいるとは驚きだ、さあまだまだ楽しもうでは無いか!!」


「だからくっさいセリフ吐くなっての、鳥肌が止まらねえんだけど··········これもお前の作戦か?」


 純粋な質問をしただけのアルスだが、ジョンバンクの神経を逆撫でするには充分だった。


 更に激しくなる戦い、両者一歩も譲らぬ展開に今度は会場が湧き上がる。



「·····実力はあるのにその口の悪さ、残念な男だな」


「お前は口調が残念でならないよ」


「ッ!·····殺す!!!」



 ジョンバンクの相手を殺しかねない一撃を、アルスはあえて腹で受け止めた。


 ただ魔素を大量に集束させていた為ノーダメージ、距離を取ろうとするジョンバンクだが腹から手が離れない。


 近接戦闘の時はこういう使い方が出来るからいいよな〜、さて、ボコるか!


〝ガムとゴム〟

 遂にアレスは魔素の性質変化に成功していた。


ジョンバンクの拳がアルスの腹から離れない。これを機にひたすら殴り続けるアルス、殴られてるのに距離が離れない不思議な現象が起こっていた。


「ま、まて、·····私の、負けだ」


 決勝にふさわしい戦いを制したアルスだが、会場は静まり返っていた。


「あれ、? 終わりでいいんだよね審判?」


「··········あぁ、そうだな。 勝者! アルス・セントリア!!」


 こうして1年生ながら国際大会の個人戦で優勝し、王立学園を1年で飛び級卒業。このニュースは大陸中を駆け回り話題となった。




 無事に飛び級で卒業したアルスは実家に帰ろうとしていた。


「アルス・セントリア、少しよろしいかな?」


 声をかけられ振り向くと、初老の体格のいい大男と決勝で戦ったジョンバンクがいた。


「えっと、どちら様でしょうか? ジョンバンクと一緒にいるって事は帝国の方ですか?」


「話が早くて助かるよ、少し時間を貰えるかな?」


「飯おごってくれるなら·····」


「既に店は取ってある、そこで話そう」





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学園編は終わったも同然ですが、なんか絡まれたのでもう1話続きます。

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