第14話
模擬戦の後、案の定グアルシス先生に呼び出され学園長の前にいる俺。
「アルスよ、やってくれたのう··········各家から抗議文が届いておるぞ?」
「後始末は第二王子様にお願いしています、俺に非はありませんから」
上級ポーションを使い傷を治したとは言え、あれだけボコボコにしても一切悪びれる様子のないアルス。 そんなアルスにグアルシスは戦慄していた。
「お主に実力があるのは認めよう。ただ貴族社会は実力だけでは、どうしても抗えない時もある」
「それについても心配ありません、既に手は打ってありますから」
厳重注意で事なきを得たアルスは帰路に着いた。
<ボス、今少し話せるか?>
「あぁゼロか·····そろそろ連絡が来ると思ってたよ」
離れた場所でも連絡が取れる魔道具を渡されていたアルスに、ゼロから連絡が入った。
<何をやらかしたんだ? お前を殺せって依頼が急に殺到してきたが>
「まあ、20人近くの生徒をボコボコにしたな」
<はぁ··········なるべくこっちで対処するが、漏れた刺客は何とかしてくれ>
「はいよ、仕事増やしてすまんな。近いうちに追加の資金渡すよ」
<あぁ、待ってるぞ>
「それにしても派手にやったな」
「いざって時は頼りにしてるぜ、ダイアス」
模擬戦を観戦していたダイアスは、唖然としていた周りを気にせず大爆笑。 主人が暴れてる光景は面白くて仕方が無かった。
「いや、俺は楽しめたから何の問題もない。ただ今回の件でかなり目立ってしまったが、どうするのだ?」
「うーん、こうなったら自重するの止めるわ。実技も筆記も圧倒的な成績を残して飛び級で卒業する」
◆ ◆ ◆
第二王子の従者蹂躙事件からアルスは自重を止め、筆記と実技共に学年1位を取り続けた。
学園長に飛び級で卒業したいと申し出たら、国の代表者として国際大会に出場し個人戦で優勝したら卒業を認める。と条件を付けられた。
因みに学園で友達は1人も出来ていない。
アンフォードは模擬戦に勝ったことで俺に二度と話しかけられなくなったし、ルーファスとも蹂躙事件から話しかけられなくなった。
「アルスはいつも1人だな、見てて面白いぞ?」
「どうしてこうなったか分かってるくせに言うなっての、いい性格してるぜ」
どうでもいい会話をしながら国際大会の試合を観戦している俺達。
1,2回戦は順調に勝ち進み、この試合に勝った方がアルスとの3回戦で当たる。
「アルスの次の相手はあいつかもな、魔法の練度が出場者の中じゃダントツじゃないか?」
「だな、しかもあいつ基本属性全て使えるらしいよ。 羨ましいな〜」
淀みのない魔力操作で火、水、土、風の属性魔法を操るのは、フリッツェント連邦国の代表者。 将来は宮廷魔術師の地位が確約している。
「あ、勝ったねあの人。じゃあ控え室行ってくるわ〜」
「あぁ、程々に頑張れよ」
主人に対する口調もそうだが、尊厳をかけて挑むこの大会の出場者とは思えぬ会話に、周りにいた観客達は驚く。
「アルス君、だっけ? 次の対戦相手のユアリークだよ。 良ければ棄権してくれないかな、お金払うからさ」
「おいおいいきなり八百長ってまじかよ·····あんなに魔法がすげえなら実力で倒せよ」
「うーん、そうなんだけどさ··········君魔力が全くないでしょ? 僕目がいいから視えるんだよね〜、可哀想だから提案したんだけどな」
うんうん、一見親切に思えるがこれは煽ってるな・・・よし、ほどほどにボコそう!
と言いつつ、こんな大観衆の前で«魔弾»や«魔槍»は使いたくない。 他国の人も大勢いるし、ゴリゴリの近接タイプだとミスリードしておかないと。
「重症をおわせるような攻撃は禁止です。 それでは始め!」
「ごめんね、こうなってしまった以上、僕は君を倒さなければいけない。国の威信にかけて」
開始直後からバカスカ魔法を撃ちまくるユアリーク、その魔法を全てギリギリで躱していくアルス。
やっぱグラビティ有りでやるとギリギリか・・・ま、これはこれで練習になるしいっか。
4属性の魔法を連発するのも凄いが、それを全て躱すアルスも凄いと会場が歓声をあげる。
「なかなか、素早いね··········ギアを上げていこうか」
こいつはナルシストなのか? 喋り方に悪感を感じるんだが、おいおいそんなに連発できんのかよ!! 素直にすげえな。 でもこのペースだとすぐに魔力枯渇するな。
「はぁ、はぁ、はぁ、··········ッ!!」
「これで俺の勝ちだな」
魔力が空になったユアリークに歩いて近づき、顔の前で拳を止める。
その直後、地響きのような大歓声が巻き起こり会場が揺れた。
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