第13話

 学園生活も特にトラブルが起こる事無く1ヶ月が過ぎ、だいぶ慣れてきた。 模擬戦では程よく負けたりして今のところ特に目立っては無い。


 ただある日の授業終わりに、一番厄介な人に声をかけられる。



「やぁ、アルス君だったよね? 少し遅くなっちゃったけど、これから同じSクラスとしてよろしくね」


 来ちゃったか〜王子様! 関わらない様にしてたのにな・・・しゃーない。


「おう、よろしくなアンフォード」


 アルスの王子に対する態度が気に入らなかったのか、従者+取り巻き達が一斉にアルスを睨む。ただこの展開は予想通りだったので、改めて王子に挨拶をする。


「おっと、失礼致しました。··········私はセントリア男爵家の次男アルスと申します。こうして第二王子様と同じSクラスになれた事、大変光栄に思っております。入学試験を死にものぐるいでした苦労が報われました」


「··········最初みたいに気軽に話して欲しいかな」


「そう思っていらっしゃるのは、どうやら第二王子様だけのようです。私としてもとても残念ではございますが、男爵家と王家では天と地ほどの差がありますので」


「···············うーん、それでもこの学園では皆平等に話せる場だと思うんだけどね」


 ルーファスやこいつもマジでしつこすぎる!! ストレス半端ねえ・・・・



「·····第二王子様、私は人との出会いは最初が肝心だと思っております。 私と普通に話したかったのであれば、まず後ろの人達に一声かけておくべきでした。 こうなってしまった以上、私は身を引かせて頂きます」


 そう言って教室を出ようとすると、取り巻き達に出口を塞がれ、従者に肩を掴まれた。


「おい、まだアンフォード様の話は終わってないぞ! 勝手に去るとは何事だ!!!」


「··········こういう事です、第二王子様」


「すまないねアルス君。みんな、彼を通してあげて」


「ですがアンフォード様! こいつは下位貴族の分際で、アンフォード様に無礼を働いたのです!!」


 アルスは尚も笑顔のままアンフォードに、『こいつらが居て仲良くなれるか?』と顔で訴える。


「··········それじゃあ第二王子として命令する、彼を通すんだ」


 やっと通してもらった俺は寮の部屋に戻った。




 ◆   ◆   ◆




 いや〜昨日はマジで面倒だったな、でも関わり始めた時点で今日も何か起こるんだろうな・・・・ほら来た。


「おい、アルスとか言ったか? 俺たちと模擬戦しろ、無礼を働いた事を後悔させてやる」


「分かった。グアルシス先生、審判をお願いしてもいいですか? ルールは3分間模擬戦を絶対に止めない。って感じかな、もし! 俺が勝ったら第二王子様は二度と俺に話しかけない。これが俺からの提案だ」


「ッ! 自惚れるのもいい加減にしろ!」




 アンフォードの従者と取り巻き達、俺とダイアスは運動場に来ていた。


「グアルシス先生ー! 3分間は止めちゃダメですからね!!」


 再度大きな声で模擬戦の追加ルールを提示するアルス。 今回は徹底的にボコす予定だった。


«グラビティ»50%解除 + «魔鎧»


「それでは、始め!!」




 そこからは地獄絵図だった。

 1 対 20人近くの模擬戦、観戦していた誰もがアルスが一方的にやられると思っていた、ただ目の前で怒っているのは真逆。


 観戦していた生徒たちはアルスの動きを目で追えず、従者や取り巻き達が一方的にやられてる所しか見てなかった。


 グアルシスも信じられない状況に唖然としていた、だがまずいと思い止めにかかるが・・・


「先生、まだ1分半あります」


「ッ!··········しかしだな「この学園の教師は約束が守れないんですね」··········」


 実は学園長にアルスを注視しておけと言われていたグアルシス、ただ授業で特に目立った実力が無いと油断していた。 その油断が招いた目の前の光景に顔が真っ青になるグアルシス。




 3分間、ただ一方的にボコられた従者達は、顔の原型を留めてないほどの傷を負い、手足があっちこっち向いては行けない方向へ曲がったり、中には内蔵が剥き出しになってる者までいた。


 アルスは極小のマジックバッグからポーションを取り出し全員にかけていく。


 死んでてもおかしくない傷が一瞬で治っていく様子に周りはまたも驚かされた。 アルスが持っていたのは上級ポーション、1つ白金貨1枚相当の高級品を躊躇なく使っていく。


ギリ死なない様にボコしすぐに回復させ証拠を大衆の目の前で隠滅する。その光景はもはや狂気すら覚えた。



「ふぅ、スッキリしたー! グアルシス先生これで大丈夫ですよね?」


 アルスの周りには傷は完璧に癒えたが、精神的ダメージを負った生徒達が横たわっていた。 それを背に笑顔をこちらに向けているアルス。


「··········あ、あぁ」


 アルスは颯爽と教室に戻った。

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