第10話

 王都観光の最終日、高級レストランでたらふく食った俺たちは宿で休んでいた。


「さて行くか。 ダイアス、少しだけ出てくる」


「もしかして情報屋に行くのか?」


「··········なんだよダイアスも気づいてたのか、一緒に来るか?」


 情報屋のスタッフ達からは血の匂いが僅かに感じた、人を殺めることに慣れている雰囲気をアルスとダイアスは感じ取っていた。


「いや、この満腹状態のまま眠りにつきたい」


 ・・・・・さいですか。

 最近のダイアス人間味が増してきたな、逆に龍人族としての威厳が無くなってきてるというか。




「すみません、また来ちゃいました〜!」


「··········あぁ、君は昨日の子供だね? 今度はどんな情報が欲しいのかな?」


 営業スマイルで応対するイケメン。それに対してアルスもニコニコ顔で話を続ける。


「あれ、他にお客さんいないのか〜··········それならここで聞いても大丈夫か。 暗殺ギルドの場所教えて欲しいんだ」


「··········坊や、あまり調子に乗っていると火傷するよ?」


 中にいたスタッフ達全員から殺気が放たれる。

しかしアルスは殺気を浴びても全く気にすることなく話を続けた。



「お、やっぱりここの地下だったのか! ボスに会いたいんだけどダメか?」


 俺も同等以上の殺気を放ち、«グラビティ»で全員の肩に負荷をかける。




「お前達、そこまでだ」


 上から声が聞こえ、スラッとした長身の男が階段を降りてきた。


「君がアルス・セントリアだね、12歳が放つ殺気じゃないでしょ全く。因みに私がギルドマスターのゼロだ、それで何用かな?」


「大した用は無いんだけど········これから高確率で俺を殺せって依頼が来るかもだから、その時は断って欲しいってお願いしに来たんだ」


 俺以外が顔に?を貼り付けている。


「君の実力なら退けられるだろう、何故わざわざ言いに来た?」


「だからこそ言いに来たんだ。 最初は末端の兵隊を送るでしょ? その次は数を増やす、次は幹部+大人数って所かな? まあ一々相手するのが面倒ってのもあるけど、数は減らして欲しくないからな」


「あっはっはっは! ··········貴族が我々のような裏の人間を必要だと?」


 おーう、さすがボスだな。殺気が凄まじいや・・・今まで貴族達にろくな扱われ方されてこなかったんだろうな〜。


「まあこれは俺の考えだけど、王都に暗殺ギルドは絶対必要だろ。大半の貴族達は内輪揉めで使ってるけど、他の国の抑止力にもなってるだろうし」


 アルスの言葉に目を見開く暗殺者たち、普通は貴族が裏の人間を使うことは禁忌に近い。 だが真っ向から認めたアルスに驚かないのが無理な話。


「実力があり大局を見る目もある、か··········皆、この子供に新しいボスになってもらおうと思うのだが、反対のやつはいるか?」


「「「問題ない」」」


「いやいや、俺が問題大アリだから! 何勝手に決めてんの? 俺がボスなんてやるわけないじゃん、それにこれから学園に通うし」


「別に仕事をして貰う訳じゃない、むしろ何もしなくていいさ。ただ俺たちがアルスについて行きたくなっただけだ」


 俺が暗殺ギルドのボスとか絶対やべえよ、もしバレたら即首が飛ぶな・・・・まあ、仕事しなくて良いなら大丈夫、かな?



「···············分かった、その話を受ける。 仕事内容は今までと基本的に同じで構わない、殺さない方がいいと判断した奴は殺すな。··········それとこれをしばらくの資金にしてくれ」


 そう言って1枚の硬貨をゼロに投げる。 それを受け取ったゼロは初めて驚いた顔をして、俺と硬貨を交互に見る。


 ゼロに渡した硬貨は黒曜金貨、この世界でいちばん高い硬貨で白金貨100枚分になる。


「これを持ち込むってことは·····まさか、この展開になることを分かっていたのか?」


「可能性はあると思っていた。裏の世界は実力主義なんだろ? ベストは俺の殺しの依頼を受けさせない事だけだったんだけどな〜··········」


「これで12歳か、本当に末恐ろしいな」


「じゃ、もう帰るわ。 暫くはその金で組織の規模を大きくするなり好きに使ってくれ!」





 アルスが去った後、ゼロ以外の者は座り込んでしまった。 凄まじい殺気と«グラビティ»による圧力で、本当は立っているのも辛かったのだ。


「凄まじい殺気だったな、あれで12歳·····」


「大局をよむ力、展開をよむ力、そして実力··········とんでもない子供が現れましたね、いやもうボスになったのか」


「確かにあれだけ実力があれば、学園で嫌でも目立つな。その先手の意味もあってここに来たんだろうがな」


「あぁ、だがある意味幸運とも言えるだろう。あれだけ歳のある方をボスに出来たのだ」

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