第7話

 ヴァンパイアを倒し、龍人族のダイアスを従者にしてから3年が経った。 もうすぐ12歳になるアルスは、テクスアート王立学園の入学試験を受ける為に、ダイアスと王都に向かっていた。


 3年間で習得した新技は«グラビティ»。

 魔素を負荷として自分にかける事で効率的に体を鍛えた。応用として相手や魔法にも負荷をかけることにも成功している。


 この修行を始めてから、懸念だった近接戦闘が劇的に改善された。 ダイアスとの模擬戦でもいい勝負が出来るようになっている。



「試験の勉強してなかったが良かったのか?」


「まあ、実技は問題ないし大丈夫でしょ。俺の家って貴族の中では末端だからさ、良い成績取ると妬まれるのよ」


「やはり人間は面倒な生き物だな」




 東の端っこから王都まで1ヶ月半もの長旅を終えた、休憩する度にダイアスと模擬戦をして体が鈍らないようにした。


「さすが王都、デカすぎる·····その顔はダイアスも初めてっぽいな」


「あぁ、龍人族は長命種だが俺はまだ若いからな。王都は初めて来る」


 綺麗に整備された道に、区画整理された建物。生まれ育った場所しか知らないアルスには驚く光景だった。


「試験が終わったら1日だけ時間あるから散策しようぜ!」


「あぁ、もちろんだ」


 すっかりテンションが上がったアルス達は、試験よりも散策がメインにたった今切り替わった。




 ◆ ◆ ◆




 高級宿で休んだ俺は、いよいよ試験を受けにテクスアート王立学園へ向かう。


「じゃあ行ってくるよ、留守頼むな」


「あぁ、任せておけ。 わかっているとは思うが、実技試験は手を抜くんだぞ」


 これから試験を受ける人になんだそりゃ? と言いたくなるような激励を受けて宿を出たアルス。




「予想してたけど、学園も超デカイな」


 受付を済ませて会場に入る、最初は筆記試験。


 うわ〜、みんな気合い入りすぎて殺気漏れてるやついるし。 殺伐としてんな。


「不正をした者には即刻退席して頂き、不合格となりますのでご注意を。それでは筆記試験を初めて下さい」


 まずは問題全体を把握して・・・・うん、良い感じに分からない問題があるな。 これなら目立つ成績を残す心配もないな!

 ・

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「そこまで! ほらそこ、終わりですよ! ·····次は実技試験になりますので、移動をお願いします」


 ふぅーー、大学のセンター試験以来だなこの感じ。 手が疲れた・・・・手応えはある意味いいかんじだな! 問題は実技試験、マジで気をつけないとな。




 外に出ると、実技試験を担当する教師達が既に待機していた。


「それでは、こちらに待機してもらっている教師達に模擬戦を挑んでもらいます。各教師事に合否の基準は異なりますのでご注意を。誰に挑んでも問題ありません、それでは始めて下さい」


 合図と共に皆一気に散らばる。


 ぶっちゃけ誰でもいいんだが、あそこで暇そうにしてる人でいいか。


「すみません、相手して貰えますか? 俺はアルス・セントリアです」


「ちっ、来やがったか··········いいぜ」


 うわーすっげぇ怠そうじゃん。二日酔いか?

 こんな人を教師にするとか・・・いや、このパターンは騎士団の実力者が特別試験官としてここにいるやつだな。


「見ろよあいつ、シェンバーさんに模擬戦挑んでるぜ? 終わったな」

「田舎から出てきたんだろ、誰だか分かってないっぽいし」

「可哀想〜、あの人不合格じゃん〜〜」


 ・・・・・うん、やっぱりそうか。既に目立っちまってるけどまあいいや。


「いつでもいいぜ? かかって来いよ」


 いや、鼻クソほじりながら言うなよ。汚ったないな〜・・・・少し驚かしてやるか。


「ッ!·····いいスピードじゃねえか、だがまだ甘いな!?」


 木刀で極端に大きく上段に構えながら素早く距離を詰め振り下ろす、反応するのは分かってたため続けて蹴りを腹に決める・・・はずだったがこれも躱された。


 へぇ〜、有名なだけあって結構やるな。 これは面白くなりそう・・・・ってそうじゃない! 危ない危ない、手抜くの忘れるところだった。


「やるじゃないか、アルスっつったか?·····文句なしの合格だろうよ、もう帰っていいぞ」


「ありがとうございました!」

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