第4話

「うちの三女マーリンと婚姻を結ばんか?」


 バージェス辺境伯様から思いもよらない言葉を受け開いた口が塞がらない。

 普通なら大変嬉しい言葉ではある。それは分かっているが・・・・


「··········大変嬉しい申し出ではありますが、辞退させてください。 私は冒険者の道へ進むと決めております、その道へ貴族令嬢を巻き込むのはまかり通りません」


「そうか、お主は冒険者になりたいのか。 それならば仕方ない···············とはいえ残念だな」


「ご心配には及びません。 このギフトはこれからも家族や領地の為に使い続けます、それ即ちリューゼント辺境伯様へ使うと言っても過言ではありませんから」


 俺の言葉を受け父さんは誇らしい顔をしてるが、バージェス辺境伯は大爆笑。


「全くお前の倅たちはどうなってる? 優秀すぎはせんか?」


「えぇ、私もそう思っております。 自慢の息子たちです」


 ・・・ん? 父さんそこは認めたら親バカですって言ってるようなもんじゃないか? あ、バージェス辺境伯の顔が呆れてるわ。


それにしてもアルスはバージェスの強さに驚いていた、明らかに父や母より強く死の森でも楽に狩りが出来るほどには強い。アルスはバージェスの強さをそう評価した。




 ◆ ◆ ◆




 バージェス辺境伯の来襲から1週間、なんと母さんが妊娠した。年齢も30近くになって少し不安だが、そこは元冒険者、医者からは『心配なし』と言われている。


 そんなある日、ジーク兄さんと寝室で話し合っていた。


「兄上。俺は死の森の魔物が毒素で食材として使えない、この状況をなんとかしたいと思っている。 何かいい案ないかな?」


「なるほど、確かにそこは盲点だったな。 いや、近くにありすぎて気づかなかったと言うべきか··········やはりアルスの閃きは凄いな」


 なーんて兄さんは褒めてくれるが、アルスの閃きを完璧に実行するのはいつも兄さんだ。実際この3年間で領地は徐々に発展していて、死の森が隣接しているとは思えないほど。


「そうだな·····死体を解体する前に傷口から水魔法を流して、表面上の毒素を洗い出して。内側の毒素は弱い火に長時間当てる?··········それだと焦げるから、煙か! 火からでる煙で毒素を殺せばいいのか!! やったぞアルス、これで食が自家で賄える!今までは輸入に頼っていたからな!!!」


 うーーん、やっぱ天才すぎるぜ兄さん。

 転生者じゃないのに一瞬で〝燻製〟にたどり着くんだ・・・凄いを通り越して怖いんだけど!!


「あ、兄さん。今回は兄さんの手柄にしてね、この家は力ばかり求められて内政面での功績ってあんま目立たないから。これは絶対ね」


「··········はぁ、分かったよ」



 この後、死の森に隣接する領地全体の食が潤った。バージェス辺境伯から感謝の金品が大量に届いて、ジーク兄さんに渡そうとしたら『アルスが受け取らないなら功績をアルスに変えるよ?』と言われ渋々受け取った。

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