第7話

京都鉄道博物館へ行った日から、青木と洋子の仲はグッと親密になり、わずか1ヶ月で入籍する事に決まった。洋子の店を手伝う事に決めた青木は、店の2階に洋子と一緒に住む事にした。初めて青木が、店の2階へ階段を一歩一歩昇る時

(まるで、禁断の世界への階段や。ちょっとオーバーかな)

2階には、お父さんの住んでいた痕跡は小さな仏壇があるだけで、やっぱり女性の部屋だけあって、ピンクを基調に美しくしてあり、青木は仏壇の前に座って

(お父さん、自分が洋子さんを一生、大切にしていきますんで、よろしくお願いします)

その青木の後ろ姿を、洋子がじっと見つめていた。


洋子は青木に

「田渕さん夫婦に、いちばん最初に報告しないと」

「うん、そうやな」

と。

職場のロッカーで田渕と出会った青木は

「田渕、いろいろありがとう。俺、洋子さんと結婚する事に決めたわ」

「えっ、ほんとうですか。良かった。嫁さんも喜びますわ」

「奥さんにも、よろしく言っといて。今度、二人を家に招待するから」

「で、何処に住まれるんですか」

「彼女が、あの店は父親の思い出の店やから、続けたいと言うので、店の2階に」

「つまり、入り婿のようなもんですね」

「ま、まあな。その分、非番や休みで店を手伝う事が出来るし」

「もう早速、のろけですか」

「いや、その」

「わかりました。で、結婚式は」

「それが、結婚式はせんと入籍だけで」

「いいんですか」

「二人で、決めた事やから」

「そうですか。それなら、僕らを招待してくれる日を待ってます」

「よろしく」

その青木と田渕の話しを聞いていた、更衣室のロッカーの裏にいたバスケット部の仲間が、顔をのぞかせて

「青木さん、聞いてしまいました。おめでとうございます」

「あっ、ありがとう」


青木と洋子は、11月22日の、いい夫婦の日に店を休んで市役所に婚姻届を出しに行って、その翌日から青木は、非番と休みの日に店を手伝いだした。

初めて、青木と洋子の関係を知った、立花と友井は

「やっぱり」

「予想通りや」

料理をしている洋子の横で、青木は皿洗いを。

「女将、いい人を選んだな」

洋子は、青木を見ながら

「そうでしょ」

立花は

「ヌケヌケと

「夜の方は」

「やっぱり、その事を聞きたかったんでしょ」

「そんな事は、なぁ」

「あぁ」

ふたりは、聞くだけ聞いてから、後ろめたくなってしまった。洋子は

「今度、同じ事聞いたら、出入り禁止にするからね」

「わかった、わかった」

「ごめん、もう二度と言わんから勘弁して」

と二人が頭を下げると

「じゃあ、ゆるしたげる」

と。



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