第5話

洋子が、5年余りも、店の買い出し以外、ろくに外出していないことを聞いて青木は、店が定休日である木曜日に、洋子を連れ出すことにした。洋子の店では、青木と洋子の仲は、田渕以外は誰も知らない。勿論、二人はラインで連絡を欠かさない。

「洋子さん、今度の木曜日、一緒に何処かに行きませんか」

「いいですけど、急に何処かって言われても私、考えられません」

(そりゃそうか)

青木は

「それなら私に、任せてくれますか」

「お願いします」

洋子に任された青木だが、いざとなったら全く思いつかない。そこで田渕に相談すると

「ユニバーサルスタジオジャパンは、どうですか」

「俺、そういうとこ、苦手やから」

「じゃあ、映画とか」

「何の映画がええ?」

「うーん」

「あっ、そうや。おまえの奥さんに、聞いてみてくれへん?」

田渕は、ニコッとして

「そうします」


立花が

「友井さん。最近、女将がキレイになったと思わへんか」

「そういえば最近、化粧してるみたいやな」

「そうやろう。俺、この店にきて5年近くなるけど、女将の化粧してんの、今まで見てないもんな」

「それに最近、青木君の顔、見てないし」

「そういえば」

「女将の化粧と、青木君が最近来てないのと時期が重なってるのは」

立花と友井は、女将の方を見て二人で

「怪しい」

と。一方、女将は、二人の話しは聞こえてはいるのだが、知らん振りをしている。


厚子に田渕が、40前の女性のデイトは何処がいいか聞いてみたが

「洋子さんの趣味がわからないから、難しいわ。紅葉にはまだ早いし」

「うーん、それやったら、青木さんの行きたいとこに行けばえーか」

「何か、知ってるの」

「うん、以前から京都鉄道博物館へ行きたいって」

「じゃあ、そこでいいんじゃない」

ということで、青木と洋子は、京都鉄道博物館へ行く事に。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る