第16話 戻った後
日曜日、俺の父さんが、3組の夫婦を家に招いた。ソノちゃんとサチちゃんの両親とは昔から交流があるが、ヒナタさんの親とは初対面、それもあるのか、ヒナタ家だけ父親のみが参加した。
俺が突然帰り、すぐまた去った週の日曜日。
「どう説明していいのか、私も悩んだのですが……」
父さんは、俺が説明したのとほぼ同じ内容を、来てくれた両親たちに話した。
「……貴方が嘘を言うような人では無いと分かってはいますが……とても信じられません……」
返されたのを、
「私も同感です。」
父さん自らが同意し、さらにややこしく?
「……うちの零は、嘘もつきますし、優等生でもありません。」
ますます、ややこしくしている?
「……しかしですね、
居なくなる理由に、こんな嘘をつく子では無いと、私は思っています。」
断言してくれた。
それから、
スマホの写真を見せる。
俺以外の5人が写った写真。俺が撮った写真。
「……これ、うちのリビングだわ?!」
ソノちゃんのお母さんが叫ぶ。
俺が門浦先輩に送れた唯一の写真を、先輩は頼んだ通り、俺の両親に見せてくれていた。
その後、結論というか、対処が分からず真実も分からないまま、少し話し会った後、解散となったが、
「少しいいですか?」
1人残ったのが、ヒナタさんのお父さん。
実は……
「自衛隊員も2名、消えておりまして、」
ヒナタさんの父親は、防衛省勤務の自衛官。
消えた自衛官というのは、今、世間を騒がせているニュースの女性下士官。
訓練中に上官を拉致して消えたという報道がされた。
しかし、彼女はおそらく無実。自衛官が行方不明という事件が早々にマスコミにバレてしまい、慌てて調べ、状況証拠だけでそうなった。
「拉致した可能性がある」という推測が、マスコミによって事実のように報道された。
「2人消えた」「上官と反りが合わなかった」「謎の通信があった」状況証拠はそれだけ。
元・教え子ということで、ヒナタさんの父親、赤井一佐がその後の捜索担当となった。
「謎の通信」は度々あった。短い間だが話せた。
「現実そっくりの世界なのに、人がいない。」
そして魔物が出る。ノイズの入る通信で、彼女『剣持 亜美』は言っている。
今まで通信を受けた人間は、誰もそれを信じなかったが、赤井一佐は元・教え子をよく知っていた。
「彼女は犯罪者などではなく、貴方の息子さんのいう異世界に行った、私はそう見ています。」
そして、
父さんと話した日に、剣持亜美から通信が入った。
「高校生5人と赤ちゃん1人も、そっちにいるかも知れない。住所を教える。もし居たら、そこに食料もある。」
彼女が一番困っていたことを、情報として与えた。剣持三尉、飛びついた。
「子供の名前は、内木ウララと……」
そこで通信は切れた。亜美が移動開始したから電波が悪くなったのだが、
急いで向かった。『パワーアップ』して走った。一番の目当ては食べ物、もちろん子供たちとの合流も頭にある。
埼玉から東京郊外へ、自動車並みの速度で走った。それが……みんなを救った。
言われた住所の手前で、巨大な怪物を見た。
建物、ショッピングモールが襲われている。遠くから確認し、緊急事態と見て進路を変えた。
……そこに、俺たちがいた。
「えっ?!パパ?!」
父親が防衛省に勤めていたのは知っていたが、自衛官というより、公務員だと認識していたヒナタさん。休みにはアウトドアに連れてって色んな事を教えてくれる大好きな父親。
「……うん、大丈夫。
……亜美さんが、助けてくれた。」
泣きながら、父親と話す。
もっと長く会話を続けたかったが、
そこで通信は途切れてしまった。
その後、
亜美さんは爆睡。
イビキをかいて寝ていたが、好きなだけ寝かせて上げた。久々の安眠だったのだろう。
安全地帯も食料も、仲間もいない中、生き抜いていたのだ。
夕飯の時間、匂いに釣られて?亜美さんは起きた。好きなだけ、食べてもらった。
この先はどうなるか分からない。
でも今は、明るく楽しい時間を過ごせた。
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