第15話 意外な言葉

 突然現れた二刀流剣士は、女性だった。

「スマン……」

 助けてもらった相手の口から、意外な言葉が聞こえた。

「私は助けではない、スマン……」

 たしかに助けてもらった。意外な言葉だ。

 迷彩服のズボンをはいた若い女性。長髪をヘアバンドで止めて、上は黒のタンクトップ。サバゲーのガチ参加者か、体力アトラクションに参加する運動自慢のよう、見るからに体育会系だ。

 でも美人。そして二刀流の刀は、左手のは鞘?

 右手の刀を左手のに収めると、

(え?!)

 玩具の刀に変化した。

「内木ウララさん達で合ってる?」

 意外なことに、俺たちを知っていた。

 そして、もっと意外な言葉が、

「食べる物、持ってる?」

 言うなり、その救世主の女性は、床にへたり込んでしまった。

 我々が持っていたお菓子と無糖の紅茶を、ものすごく美味しそうに食べている。

 『剣持亜美』。本物の陸上自衛隊員だった。

 能力は『パワーアップ』。基本的には身体能力が上がる。そして戦闘では、飛び道具以外の武器もパワーアップした状態で使える。

 だから玩具の刀、軽量プラスチックの刀で、あの怪物を倒せた。(玩具の刀は姉ちゃんと同じで、最初から持っていた。)

「私もこの世界に迷い込んだ。

 君らを救出に来た部隊だと思って、ガッカリさせたかな?」

 これが最初の「スマン」の理由。 

「ガッカリなんて、とんでもない!」

 本当に救われた。

 十分ありがたく、十分救世主でしたと告げると、

「私も救われたよ。」

 そして、これまでの食料事情を聞く。

 加工食品はどれも風化。植物はそのままなのに野菜や果実は味がしない。鳥や魚は全くいない異世界。

 だが、昆虫や爬虫類はいた。

「……それ以上は、聞かないでくれ。」

 強い能力に恵まれてると思ったけど、一気に同情した。

「これもどうぞ。」

 俺が弁当を渡す。近くの棚に風化したのを見つけたので、リニューで再生した。

「え?弁当?嘘?!新品?!」

 唐揚げ弁当を見て、よだれを垂らす救世主。

「待って!」

 と、ヒナタさん。

 その弁当を一瞬で温めた。

「君ら凄えな!!」

 弁当をガッツきながら、嬉しそうに頬張る。

 今の言葉を、この後すぐ、もう一度聞く。


「君ら凄えな!!」

 駐車場の車へ案内した時に、また聞けた。

 でも、亜美さんの方が圧倒的に凄かった。

 中の1体、西出口の1体、そして最初に北出口にいた奴、計3体の巨大魔物を倒していた。

 凄すぎる。超激レアキャラ?!

 そして確信した。この亜美さんがビッグイベントの報酬だ。

 車内が安全地帯になると言うと、また驚く亜美さん。が、運転は無免許のヒナタさんがしていると聞くと、何も言わず、自ら運転席に座った。

 そのまま、ソノちゃん家に帰宅。

 家全部が安全地帯、布団も電子レンジも冷蔵庫も……と、驚くばかりの亜美さんだったが、

 その彼女の腰の無線に、通信が入った。

 こちらが驚いた。使えるの?!

 スマホはもちろん使えない異世界、

「はい、一佐、合流しました。

 全員無事です、赤ちゃん含め、6名います。」

 一佐とは、昔で言う大佐、上官と話している?

「今、代わりますね。」

 そう言った亜美さん、

 通信機を、ヒナタさんに手渡した。

(えっ?私?!)

 相手も分からぬまま出たヒナタさんだが、彼女からも意外な言葉が、

「えっ?!パパ?!」

 通信相手は、ヒナタさんの父親だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る