第10話 事情説明

 門浦先輩は、元の世界に戻ってから、度々ソノちゃん家を見に来ていたという。

 LIMEのフレンド登録をした。これでいつでも連絡を取り合える。

 俺は、こちらの世界に戻った。

「家に帰ったら、本当のことを言うのよ、

 ……まあ、信じてはもらえないだろうけど」

 経験者の先輩からアドバイス。

 家族以外には言わない方がいいとも言われた。

 と、そこへ、2人同時に着信。

「何よ、これ……」

 2人同時に驚く。

 文章は一緒、さっき登録したばかりの2人専用のLIMEにメッセージ。

❝ワタシは君らの『所有者』だ❞

 ここにいる2人同士しかメッセージは送れないはずなのに?!

❝明日の朝9時に、もう一度あの家の前に来い。

 そして、内木 零、お前だけ異世界に戻るんだ。❞

「誰?誰なの、こいつ?!」

 周囲を見回すが、誰もいない。

❝その世界にワタシはいない。

 そして、ワタシは人類でもない。❞

 衝撃の内容。

 ……それから続いた文章を要約すると、

 人知を超えた存在、遥かに進んだ文明の知的生命体が、ゲームのコマとして俺たちを使用。

 俺たちは何と、

❝ガチャで当たったレアキャラだ。❞

 遊びに使われているらしい。

❝ただし、勘違いしないでくれたまえ。

 ワタシは君らの『味方』だ。❞

 競馬の馬主、ペットの飼い主、みんな愛情を持っている、それと同じだと。

❝誰も失わずにゲームクリアを目指す、

 それがワタシの目標だ。❞

 こいつを信じていいのか分からなかったが、こいつに逆らい拒否することは無理な気がした。

❝内木 零、今回の君の帰還転移はイレギュラーだ。まさか彼女と共鳴するとは……

 そして、門浦景子、君の能力は不具合が多く、明日以降、使用不能となってしまう。❞

 こっちと異世界を繋ぐ力はこのゲームの『運営』によって封印されてしまうという。

❝まあその補填で『超レアキャラ』と『ビッグイベント』への挑戦資格を貰えたがな。❞ 

 超レアキャラとは、何と『俺』。男女を極限状態で一緒にすると、進行より繁殖衝動に走りやすくなる、らしい。

 俺が、性的興奮をエネルギー変換して能力利用できるのは、つまりはその問題点を考慮してあるのだという。

❝あまり色々話すと『運営』からペナルティを受ける。❞

 最後に、翌朝9時にソノちゃん家の前に来いと再び念を押され、

❝生き延びて、クリアしろ!❞

 身勝手な文章で、メッセージは終わった。

 ……

 ゲームを管理する『運営』があり、謎のヌシはいわば『プレイヤー(ユーザー)』だ。

 自分と運営のことを『秘密』にするよう命じられ、翌朝来なければ、安全地帯(ソノちゃん家)以外に強制転移させると脅された。

 もう、何が何やら、パニック、混乱、大混乱

 ……

 で、帰宅。

 母さんが家にいた。

 俺を怒鳴りつけようと怖い顔を見せてから、

 寄って来て、強く抱き締められた。

「ごめん……ちゃんと説明するよ……」

 俺をハグしたまま泣いている母さんに、言ったものの、どう話そうか迷っていると、

 タイミングが良いのか悪いのか、

 父さんが会社から帰宅して来た。

 殴られ……なかった。

「何があったのか話しなさい。」

 父さんに言われ、知る限りの事実を伝えた。口止めされたコト以外は、異世界、一緒にいる仲間の名前、能力、魔物……赤ちゃんを拾ったことも話した。

 明朝、また行くと伝えると、母さんが号泣しだした。

 一方、ずっと黙っていた父さんは、

「母さんと一緒にいてやりなさい。」

 そう言い残し、外出してしまった。

「ずっと残業を断ってたから、仕事が溜まっているのよ。」

 俺まで消えてから、定時に退社して、まっすぐ家に戻っていたと聞かされた。母さんを心配してらしい。

 でも……今日仕事に戻らなくても……

 姉ちゃんが消える前から、父さんとは余り上手く行ってなかった。ほとんど話さくなっていた。

「夕飯、何が食べたい?」

 聞いてくる母さんに、いつも俺の答えは同じ、

「母さんのカレーが食べたい。」

 もう日が暮れていたが、2人で買い物に行くことになった。

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