第4話 能力

「能力を確認……って、念じるの。」

 姉ちゃんが手本を見せる。

「それをまた、『見せる』って念じる。」

 目を瞑ってた姉ちゃんの前に、ほぼ透明なウインドウ画面が現れた。

(異世界のステータス?!)

 文字が書いてあった。それを読もうとするより先に消され、

「ほれ、やってみ!」

 言われた通り、目を瞑って念じてみる。

(おっ?!)

 目を開けると、俺の前に透明なステータス画面が出ていた。

「『リ・ニュー』??」

 能力の名前らしい。

「何々……エネルギーを消費して……様々なモノを使える状態にできるっうう?!」

 黙読していた俺より、読み上げた姉ちゃんの方が興奮している。

「……エネルギーは、カロリー摂取より、性的興奮の方が貯まる……ですって。」

 いつも冷静なソノちゃんが、後半を読み足した。

「なある……」

 イタズラっぽい目で俺を見る姉ちゃん。

「つまり、姉の下着姿に興奮したわけだ。」

「んーーな訳、ねーーだろ!!」

 赤面して大声を出す。

(興奮するなら、さっきのヒナタさんの方だよ!!)

 言おうとして呑み込んだ。覗き騒動を再燃させてしまう。

「それ、食べてみて。」

 手元のツナ缶を指さす姉ちゃん。

 ちょっと警戒しながらの一口、

「どう?」

「ん……普通のツナ缶……」

 味はあるが、調味料を足したい。

 毒見をさせられた訳だが、こんな事で怒っていては弟は務まらない。

「ちょっと来てくれる。」

 冷静なソノちゃんに誘導されてキッチンへ。

 電子レンジの載っているボックス棚の、上の段にある……黒焦げの電話帳?

 3つほど重なっている、その謎の物体一つを、

「ちょっと持ってみて。」

 ソノちゃんに言われるままに手に取る。

 保育園からの姉ちゃんの友達。俺には姉2号のような存在。

 炭化した塊が見る見る白くなっていく。電話帳じゃなかった。お菓子の箱だ。

「開けて食べてみて。」

 笑顔で催促。ソノちゃんは基本優しいが、弟の概念は姉ちゃんと変わらない。

 またもや毒見、まあ見た目は普通のクッキーだ。

「普通に美味いよ。」

 口をモゴモゴさせて答えるや、俺の手のクッキー箱を奪い取り、皆のいるテーブルへと走っていった。

「うおーーっ!」

「ああ、久々の糖分♡」

「まともな食べ物だーーっ!」

 むさぼりながら、大騒ぎしている。

 ……そしてやっと本題、この世界と能力の説明を受けた。


 姉ちゃん。『内木 春咲(うちき うらら)』

 猪突猛進。傍若無人。見た目は美人だが腫れ物扱いされる。ただし、女子には人気が高い。

 能力『シューター』。射撃の命中度、威力、武器の性能を上げる力。

 露出度を増すと武器の威力が更に上がる。

(だから下着姿だったのか……)


 ソノちゃん。『中野 美園(なかの みその)』

 美人で才女。沈着冷静。実は策士で姉ちゃんが起こす騒動が大好き。保育園からの幼なじみ。

 能力『ゾーン』。狭い場所を安全地帯に変える。馴染みの場所ほど広い空間をゾーン化できる。

(だからソノちゃん家にいるのか……)


 サチちゃん。『辺見 幸(へんみ さち)』

 大人しい。真面目。メガネの似合う秀才。やはり保育園からの幼なじみ。姉ちゃんの暴走にソノちゃんが乗った時、正論で諫めるストッパー的存在。イジメられそうなタイプだが、いつも姉ちゃんたちと一緒なので、ほぼイジメに会ったことはない。

 能力『サーチ』。魔物や人をレーダーのように察知する。数、方角、距離が漠然とわかる。普段は能力発動時のみ察知できるが、大きな反応や人間は自動的にサーチ能力が働く。

(だから姉ちゃんが助けに来てくれたのか……)

 突然サチちゃんが人(俺)の転移を検知、距離があったので姉ちゃん1人が救出に向かった。念の為に露出度を上げ下着姿で急行(今まで女子のみだったので男が現れるとは思ってなかった)。


 ヒナちゃん(ヒナタさん)。『赤井 陽向(あかい ひなた)』

 高校からの姉ちゃんの友達。家庭的に見えるがアウトドア派。父親と一緒に出かけるのが大好き。

 能力『ヒート』。物を加熱したり、温度調節したりできる。ライター代わりの着火も可能。風化した食品を加熱で飲食可能状態に戻せる(美味しくはならない)。


 ……なるほど、

 能力説明で、姉ちゃんたちの行動やリアクションが腑に落ちた。

 そして、

 ……

 全てがサバイバルやバトルの為の能力なのが、気になった。


 この異世界、思ってる以上に過酷なのではないだろうか?

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