第3話 どうやったの?!
姉ちゃんにボコられた。
不可抗力だが、トイレ?を覗いたことになる。
「『使用中』って書いてあったでしょ!!」
(いやいや、家の中でしろよ!)
言いたかったが、やめた。
家から出て来たのは3人。
姉ちゃんと、ソノちゃんと、サキちゃん。
姉ちゃんの同い年の、保育園からの幼なじみ。小さい頃は姉ちゃんにべったりだった俺とも、一応幼なじみだ。
そうだ!
ここはソノちゃんの家だ。
昔、よく来た場所だ。
その3人プラス……トイレ?にいたヒナちゃんで全員らしい。ヒナちゃんは高校からの友達、我が家に何度か来たみたいだが、あまり良く知らない。姉ちゃん達はヒナちゃんと呼ぶが、俺は呼ぶとしたらヒナタさん。2コ上の先輩だ。
全員、女……だから油断もあったようだ。
まさか男が現れるとは思っておらず、俺を外に待たせ、皆に知らせるために先に姉ちゃんだけ入ったのだ。無防備だったりルーズだったりを取り繕う時間を外で待たされたようだ。
その間のアクシデント、
……廊下から居間への道が、連行される囚人と、女看守4人の移動のように感じる。仲良かったのは小学校低学年まで、今はほとんど姉ちゃんの友達とは話さない。
気まずい……
「トイレ借ります!」
途中にあったトイレへ逃げ込んだ。
(うわっ?!)
流石にトイレの中へは追って来なかったが、
ボロボロだ。ここも埃と劣化が酷かった。
(だから外でしてたのか……)
便座の蓋は閉まっていたが、本当に尿意を催して来たので、目を閉じて、思い切って蓋を上げた。
……
(……あれ?)
中は意外とキレイ。
そして、改めて見ると、便座も水洗タンクもそこそこキレイ。
普通に用を足し、
普通に水洗で流してトイレを出ると、
……
3人が待ち構えていた。
「どうやったの?!」
姉ちゃんに言い寄られる。勢いが凄い。
「えっ……チャックを下げて……」
「ん~~な事、聞いて無いわよ!!」
さらに詰め寄られたが、
(……故障してたの……かな?)
外でしてたのを思い出し、
「普通に流れたよ、水……」
議題……矛先がそっちへとズレてくれる事を願いつつ答えた。
「出来たよー!」
この廊下の先の居間の先、ダイニングキッチンからの声だろう。
香ばしい香りがしてきた。
ここにいない1人、俺が覗いた……いや違う、不幸な出会いをしたヒナタさんが料理当番なのか、彼女の呼び声で居間へと移った。
ダイニングではなく、居間のテーブル、直に座れる場所での食事。
全員、お腹が空いていたのだろう。食べながら話の続きとなった。
1人1人の前に、ヒナタさんが一皿ずつ配膳、
……微妙。
炒めた……ツナ缶? ……のみが出された。
そして、俺の前に、
同じモノ……の黒焦げのヤツ。
(はは……)
やはり相当怒っている。黒焦げのツナ?の載る皿に手をかけて……
(出されたから、食べないとダメ?)
みんなを見てみる。
みんな、美味しそうに……は、食べていない?
(これしか無いのかな?)
だとすると、この異世界で生活するとしたら、大変そうだ。
……姉ちゃんが行方不明になったのは2週間前だ。
突然、消息を断った。
事件、事故、様々な可能性で警察が調べたが、
『家出』。
友人数名と消えていたので、警察はそう断定した。
事件にならないと、警察は大々的に動かない。所轄に捜査本部が置かれることも無かった。
家族はそうは思っていない。
家出する理由が見当たらない。
おそらく他の家族もそうだと思うが、我が家は一気に普通じゃなくなった。
お通夜状態。父さんも母さんも口数が減った。
俺も無言になり、自室に籠もってばかりとなった。
その姉ちゃん達と会えたのはいいが……、
(帰る方法を知っているようには見えない。)
不安が高まっていく。
「ってアンタ、何した?!どうやったの?!」
突然、姉ちゃんが叫んだ。
これから色々訊きたかったのは俺もだったが、姉ちゃん以外の3人も、箸を止め、驚き顔で俺を見ている。
手元に視線をやる。
皿の上に……
黒ずんでいない、炒める前の新鮮なツナ缶が載っていた。
……流石に鈍い俺でも気づく。
校庭の砂利で殺傷力を出せる玩具の銃?
トイレが使えるのに外で用を足す?
逆だとしたら?
カバン、靴、トイレ……本当に埃を被ってただけ?風化してたのに俺だけ使えた?
異世界転移、魔物出現以外にも、
俺自身にも、何か不思議が起こっている??
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