第10話 異能力レポート

「強力な『炎』使いが、もう1人いますね。」

 ここは696(ムクロ)団の本部。彼は696(ムクロ)団の大幹部クサカ。

 正確にいうと、ここはムクロ団の本部ではなく、クサカも大幹部ではない。

 この組織にも派閥がある。

 ただ、今ここには、クサカを崇拝する者たちが集まっていた。

 警察庁異能力チームの分析をしている。


 以下、彼らが知り得た情報をまとめる。

(名前、能力名等は、彼らが知り得ていないものも表記しておく)


管理官『楯無 喜怒楽(キドラ)』

 異能力『風林火山』

『風』透明の虎のような魔獣。超高速移動。人体は簡単に切断するが、ある程度硬いと斬れない可能性あり(病室の魔獣は壁に激突させて潰した)大型魔獣を吹き飛ばす威力の強風も放てる。

『林』気配を消して隠れる能力

 それだけ??戦闘用ではないから、ほとんど使わない???

『火』一瞬で巨大魔獣を焼く能力。超強力。

 連続使用できるかは??何度も使えるのかで脅威度が変わる。ピンポイントも苦手??(4億を燃やすのに時間がかかった)

『山』透明な壁(バリア)。結界に似ているが、形を変えられる(移動できる)可能性あり。(病室の魔獣を壁で挟んで潰した。)

 ※4つのうち幾つまでを同時使用できるのか、使用後にどの程度本人が疲労するのか調査が必要。


『楯無 良器(りょうき)』

 管理官の弟。姉のアキレス腱?逆鱗?

 異能力『直感』

 感知、予知能力に近いが、危機察知としては甘い??危険回避はそれほど高くない??

 命中率などの精度としては優秀。

 『風林火山の器(媒体)』

 姉の強力な力の一部?を借りれる。姉がフリーの状態なら、ほぼ姉の力が出せる??(ただの中継媒体、能力操作は姉本人)


『須山 モトカ』

 秘書官。戦闘用の異能力は無し??


『東郷 ヒトミ』 

 異能力『特殊射撃』

 間の物体を貫通して射撃できる。ライフルの命中も威力も強化されている模様。結界も貫通する。拳銃使用だと普通?


『扇 ライチ』

 楯無良器のバディ。常に組んでいるので何らかの異能力者?? 戦闘での使用なし(戦う異能力ではない??)


 『???』

 若い女。異能力は『火??』

 病室で魔獣を倒した炎は、多分コイツ。楯無キドラ並の炎を操る??


「……こんなところでしょうかね?分析できたアチラさんの戦力は、」

「はい、クサカ様。」

 クサカの腹心の1人が答えた。

 クサカは舞踏会で使うような仮面を付けている。若い男だ。20代前半かも知れない。

 そのリーダーが若すぎる故か、腹心の数が少ない。組織の人数はカルト教団なら警戒されるレベルの構成員がいる。

 クサカは入って間もない。そして若い。組織内での立場は高くない。

 ……高くはないが、

「もっと強い異能力者(トリッカー)を造る必要がありますね。」

 異能力者を造れる能力を持っている。

 だから、反政府的なこの組織で、対警察庁(異能力チーム)の攻略・分析を任された。

「……にしても、楯無キドラ管理官、

 強すぎますねえ……」

 困ったような、嬉しいような、クサカの声が響きわたった。


 ほぼ同じ内容のレポートが、ここにもあった。

「うむ、良くできている。こんなもんだろう」

 レポートを確認しているのは楯無キドラ。

 管理官室の自分の机、向かいにいるレポートの作成者は彼女の秘書官、須山モトカ。

「もう少しくらいは、奴らの裏をかけそうだな」

 こちらは限られた戦力、相手は無限に湧いてくる。できるだけ手の内は隠したい。

 そして、チームは若い。

 異能力犯罪の度に出番となるが、戦闘経験が豊富とは言えない。

 勝って、勝ち続けてチームを強くしたい。

 それにはやはり、駆け引き(トリック)が必要だ。

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