3.中神さんとミラさん

夜十丸やとまるくんに憑いた悪霊を除霊して数日

あれから悪霊が憑くことはなく平穏に過ごせています


かくいう私は、いつ悪霊が来てもいいように

心霊図鑑を購入して、休み時間に読むようにしています

どんな霊が来ても対処できるように、備えあれば憂いなしです。

夜十丸くんとは、あの時歩道橋で少し話して以来、特に会話もありません。


正直、変な人と思われてないか不安です

夜十丸くんからしたら、いきなり目の前に現れた汗だくの女ですから。


でも、分からないことは事は気にしても仕方が無いので本の続きを読むことにしよう。

私は、小さく息を吐いて、心霊図鑑を取り出し

栞を挟んだページを開いて読み始めました


中神なかがみさん、心霊現象好きなの?!」


図鑑から目を離し声の方を見ると、悪霊を追いかけた日にカラオケに誘ってくれたブロンドヘアーの綺麗な女の子が目を輝かせていました。

どうしよう、好きで読んでいる訳じゃないけど

そんなに目を輝かせられたら


「えと……それなりに…」


好きじゃないとは言えないよね。


「ホントッ?私大好きなの!」


前のめりになる綺麗な女の子、青い瞳がとても眩しい

ていうかごめんなさい、名前もまだ覚えられてなくて


「やっぱり超常現象ってロマンあるよねぇ〜!私は心霊も宇宙人も大好きなんだけど…あっ、ごめん!ろくに自己紹介もせずに、喋っちゃって。」


両手で口を手で押えて謝る彼女

いちいち動きが大きくてちょっと面白いかも


「私、ミラ・サンダースって言うの!よろしくね!」


外国人の女の子でした。通りで綺麗だと思った。


「ねぇ、恵瑠えるちゃんって呼んでもいい?」


「も、もちろん!よろしくお願いします!サンダースさん」


「ああ、私のことはミラでいいからね!」


「あ、はい!ミラさん」


流石外国人のコミュニケーション能力だ

あっさりとミラさんの土俵に上がってました


「突然なんだけど恵瑠ちゃん、私の部活に入らない?」


「ミラさんの部活?」


「そう、部活!新しく作ろうと思うの!」


そういえば部活なんて考えたこともなかった

小さい頃から家の手伝いばかりだったし、部活とは無縁な人生だったな


「私でよければ、お願いします」


「ホント!?嬉しい!やったー!」


気づいたら二つ返事で入部していました

でも、初めての部活動だし、きらめく高校生活に部活動は必要不可欠。な気がします


「あ、ねぇ、良かったら夜十丸くんも入らない?」


「え?僕?」


ミラさんが隣の席に座る夜十丸くんもスカウトしにかかってる。このコミュ力、もはや恐ろしい


「話、聞こえてたでしょ?うちの部に入らない?」


「…聞こえてたけど、だいたい何部なの?」


そういえば、私。

何部かも分からないのに入部の約束しちゃってた

ミラさんの熱量ときらめく高校生活につられてしまいました。


「よくぞ聞いてくれました!私が作ろうとしてるのは、超常現象追究部ちょうじょうげんしょうついきゅうぶよ!」


なにそれ!?

「なにそれ?」


あ、夜十丸くんとハモってしまいました

心の中ですけど。


「文字通り、この世のありとあらゆる超常現象を追究する部活動よ。超能力からUFOまで、もちろん恵瑠ちゃんが好きな、心霊現象もね!」


「あ、ウン……」


思ってた部活じゃないかもしれません

なんかこう、大会とかで汗を流す青春みたいなのを想像してましたが、なんだか不思議な部を設立しようとしているそうです。


「超常現象なんか無いでしょ。僕、そういうの信じてないから。やめとく」


真っ直ぐお断りした!

そういえば私も幽霊なんて居ないよって言われたな

幽霊は居ないって言われるのは慣れてるし

夜十丸くん、悪霊いっぱい憑いてたよって言ったって

信じてくれないだろうからいいんだけど。

ミラさん大丈夫かな?


「なんですって?超常現象があるわけない?

アンタねぇ!これまでに数々のUFOの目撃証言だったり、心霊体験談があるのに超常現象がないって言うの?!」


「ほとんどが勘違いだったり思い込みだったりでしょ。証拠もないし」


「思い込みや勘違いって証拠もないでしょ!そもそも、証拠がないから超常現象なのよ!証拠がないから追究するのよ!分からないかなぁ、このロマンが!」


「悪いけどっ……っ!?」

「きゃっ!?」


お互いのボルテージが上がってきたその時

私たちの近くにあるカーテンが大きく揺れました

窓はどこも開いていないので風は入ってきません。

不自然に大きく揺れたカーテンに2人は驚いていますが

私にはその犯人が見えています


(あら、ちょっとやりすぎたかしら?)

(白雪しらゆきさん!)


揺らした犯人は屋上の地縛霊だった白雪さんでした


「夜十丸くん…い、今のは勘違い?」


「なんかタネがあるんじゃないの…?」


「誰もなんにもしてなかったでしょ!」


さっきのボルテージも冷めきって

今は2人とも大人しく、というか唖然としています


(恵瑠さんに改めてお礼を言おうと思って探してたのだけど、楽しい会話が聞こえたからつい、イラズラしちゃった)


浮いた体でクルクル回りながら

楽しそうにしている白雪さん


(お礼なんてそんな…私の方こそ、助けて頂きありがとうございました。お陰様で無事に解決しました)


(そうなのね、良かったわ)


「間違いない、この学校には何かある!!恵瑠ちゃん!夜十丸くん!早速部活設立の申請に行こ!」


ミラさんが再び目を輝かかせて

私と夜十丸くんの手を掴みました


「ちょっ、なんで僕も?」


「いいじゃん!私はアンタに超常現象を認めて欲しくなったの!それか何?他の部活に入る予定でもあった?」


「いや、それは…ないけど」


「じゃあ1度、体験してみたらいいじゃん!続けるか続けないかはそれから決めてもいいんじゃない?」


「…はぁ。もう、分かったよ」


「決まり!じゃあ行こ!」


(面白そうね、私もついて行くわ)


強引に夜十丸くんの了承を得ることが出来ました

こうして4人(幽霊含む)は申請をしに教室を出ました


ミラさんに手を引かれ、私たちは部活設立の申請に職員室にたどり着つきました。

ミラさんを先頭に担当の先生を訪ねて

事前に書いていた部の設立の申請書を提出しました。


先生が申請書を読んでいる時間はものすごく長く感じます。

時間をかけて一通り目を通した先生が口を開きました。


「部の設立か。部員は3名からだが、顧問はいるのか?」


「へ?顧問?」


あ、大変だミラさんがキョトンとしています


「悪いけど、顧問がいないと部を設立することが出来ないんだ」


「えっ…あ…ソウダッタンデスネー…………

どうしよう!!」


ミラさんが先生の方からぐるりと後ろ側の私たちの方に体を向けて泣きそうな顔で助けを求めてきました


どうなるんだろう、私たちの部活動。

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夜十丸くんは憑かれてる。 40会 @siokai

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