ロリって得だよね

 どれぐらい時間が経ったのかはわからないが、おそらく一時間ぐらい後。

 適当なところで見かねたアリスが『そろそろ公衆浴場閉まっちゃうから……』と弱弱しく主張し、何とか解放されることができた。



「……なぁアリス。この状態で服買いに行くの良くないんじゃないかって今思ったよ」


「……いや、適当にサイズが合う服をとりあえず二着ほど買って、きちんとしたのは後日買いに来ようと思ってたんだよ。信じてくれ……まさかオリヴィアがあそこまで熱くなってしまうとは……」


 

 そう言ってアリスが目をやったのは手元の紙袋。この中にはさっきの店で着せられた服大体と『これも似合いそうだから』と頂いてしまった服が詰まっている。

 きちんとおふろに入れていないから着るのは申し訳ないという俺を『知りません!安くするから出世払いで買っていきなさい!』と一蹴してたくさん買わされた挙句おまけに着けてもらってしまった。人にものをもらい過ぎるというものはありがたくも少し居心地悪く感じるが、これもロリだからこそという奴だろうか。



「いや……うん。俺もそれでよかったと思うよ……ありがたくはあるんだけどね……」


「おかげで財布がすっからかんさ……どこかで一発稼がなければ……」


「俺を売り飛ばすつもりじゃないだろうな?そうでなくとも危ないことはするなよ?」


「売り飛ばしはしないさ……ただ助手として頑張ってはもらうがね……はぁ……」



 二人連れ立って歩く道。結構な人数とすれ違うということは閉店が近いのか。それにしても結構な時間を取られてしまったな。オリヴィアさん、悪い人ではないんだけどどうにも人の話を聞かないところがあるというか……いや、考えるのはやめてさっさと歩こう……今は何か頭をさっぱりとさせたい気分だ。



「そういえば、稼ぐって具体的になにをするんだ?」


「あ~……何も知らないんっだったらその辺とかも説明しないとな……まぁ、とりあえず明日冒険者協会にでも登録に行こう。身分証が無いことには何もはじまらない」


「冒険者協会……あれか?なんか依頼とか仲介してくれそうなあれか」


「何でそれを知っていて常識というものを知らないのか……まぁそうだな。基本的にはそこで仲介された依頼を受けて報酬を受け取るのが主だ。魔法職は重宝されるからいい稼ぎ口になるんだよ」


「そういうもんか」


「そういうもんさ」



 ぼんやりと問答を続けているといつの間にかどこかの建物の中にいた。恐らくここが公衆浴場なのだろう。靴を鍵のかかるロッカー的な場所に入れ、受付へと向かう。

 ……結構近代的なシステムだな。異世界とはいえ、行きつくところは同じなのだろうか。それとも、俺以外にもしてきた人間がいるかのどちらかだな。


 後者だったらぜひお会いしてみたいものだな……久々に誰かと日本トークで盛り上がりたい……

 いるんだったらいつか合えたらいいなぁなんて願を掛けつつ2つある入口のうちの1つ――野郎どもが出入りする方へ向かおうとしたところで、アリスに首根っこを掴まれた。



「おい。待ちたまえよニア。その姿で男性浴場に行くつもりか?」


「え?あ~……確かに。いやでも俺男……」


「そんなことは知ってるさ。しかしそっちに行くわけにもいかんだろう」

「いや~それでも」

「うるさい行くぞ」



 結局引っ張られる運命なのか俺は。世話になっている手前抵抗もできず、周囲からほほえましいものを見るような視線を向けられながら浴場へと向かうのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る