オリヴィア魔法店

 魔法の実践訓練を終えて宿に帰還。近くの食堂でご飯を平らげた後のことだ。



「……おやニア。なぜ眠ろうとしているんだ?」


「何でって疲れたからだけど……あと、そのニアって呼び方やめてくれ……相当仲良いやつがするアレだろ」


「まぁ我々の仲が良い悪い云々は置いておいてだな……少し悪い言い方になるが、お前ちょっと臭うぞ」



 まさか美少女ともあろうこの俺がそんな一日二日で臭くなるわけいやくっさ!自分の体から変な匂いするって結構悲しいな……大部分が森の匂いだけど……



「寝る前に風呂に入りにいくぞ。ニア」


「……え?この世界風呂とかあんの?」



 いや、煽りとかじゃなくて純粋に。ヨーロッパというかナーロッパというかな感じであろうこの世界には温泉か水浴びで済ませるのがお約束。


 全然俺は開発して『な、何だこれは!水なのに暖かい!』みたいなリアクションを享受してやることも構わないけど……おいやめろ!引っ張るな!考え込んだらとりあえず引きずり回そうとするのやめろお前!!!


 

「暴れるなよ、ニア。今すぐいかないといけないところがあるんだ。急ぐぞ!!」


「やめっ!やめろ!!自分で歩く!歩くから!!」


 





 もう何度目かわからない引きずり回しを終え、俺はとある店っぽい看板のかかった建物の前へ連れてこられた。


 アリスがドンドンと扉を叩くと、中から何やら妖艶な雰囲気の女性が姿を現した。



「アリス……営業時間外に扉を叩くのはおやめなさいとあれほど……おや、そちらの方は?」


「やぁオリヴィア。こんな時間にすまない。少し火急の用でね」


「まぁ、お入りなさい。話は中でお伺い致しましょう」



 その、オリヴィアと呼ばれた女性に促され、俺たちは店内に入る。


 日用的な雑貨や焼き菓子に始まり、禍々しいオーラを放つ本に謎生物の骨……綺麗に棚に並べてあるにしろかなり異様な光景だ。



「それで……ご用件はいかがなされたんですの?おそらく、そちらの子に関わることだろうとは思いますが……」


「ああ、単刀直入に言うと、この子の服を見繕ってやってほしくてね」


「……失礼しますわよ」



 俺は今現在、葉っぱビキニの上にアリスが羽織っていたローブを羽織っているだけの服装なのだが……そんなことは全く知らないであろうオリヴィアさんの手がローブのボタンにかかる。



「……せいっ!」



 そんなこんなで披露される俺の貧相な体。いやん恥ずかしい///じゃねぇ普通に止めろよなにニヤニヤしてやがるんだアリス。



「……アリス。この状態でどれくらい?」


「……今日一日魔法の訓練を村外れで」


「アリス」


「……いや、言いたいことはわかっている」

「こんの大馬鹿者!!こんなちっちゃい子をこんな格好で外に連れ出すのはやめなさい!!」


「だ、だから服を……」

「お!そ!い!って言ってるの!!」



 どんどん問答がたじたじになっていくアリスがちょっと面白い。いや笑えないけど。しばらくしたらオリヴィアさんにお店のバックヤードに連れ込まれ、あれもこれもと着せ替え人形にされてしまった。

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