まほうのつかいかた

「な~~アリス~~~。引きづるのやめてくれよ~~~」


「おやこれはすまない。目的地にも着いたし放してやるとしよう」



 やってきたのは村の外れの原っぱ。俺が世界樹やってた場所ほどではないものの、かなり雄大な大地が広がっており、吹き込んで来た風が心地いい。

 そんな原っぱに俺は葉っぱビキニ+アリスが元々羽織っていたローブという一歩間違えれば痴女みたいな服装で突っ立っていた。



「んで、なにすんのさ。急にやれって言われてもできないぞ?」


「いや、大丈夫だ。魔法を使えない理由の検討はついているからね。ただ、強くイメージするといい。世界樹として生きてきたんだったら、植物がぐんぐん生えてくるところなんて無数に見ただろう?」


「確かに見たけどさ……それで出来れば苦労しないっての……」



 ぶつくさいうもののほかに行く当てもない以上アリスに従うほかない。

 ゆっくりと記憶をたどり、植物たちが育つ様子を思い出す。



「ぐぐぐ……むむむむむ……」



 目を閉じて必死に念じてみる。けど、待てど暮らせど草なんて生えてこない。おいアリス。草生やすな。



「……フッ。なかなかに滑稽だね」


「うるさい。いまがんばってるんだ」


「ああ。わかってるさ。自分のペースでやるといい」



 やっぱりいきなり草とか木でやるのは難しかったのかな。

 けど身の回りで何か生えるところをよく見たものなんて……あ。



「……おや」


「……生えた!!!」



 一番よくイメージできたのはキノコだった。それもそのはず、あれだけの大樹なのだ。雨が降ってキノコがよく育つなんてことはままある。

 しかしなんで俺の腕に生えてるんだ。おかしいだろ……いや、木だったころは自分の体に生えるのが日常だったからっそれに引っ張られたのか?



「……ッ……!フッ……!!クフッ……!!」


「おいアリス。人がやっとの思いで無茶ぶりを成功させたのに何がそんなにおかしいんだコンニャロ」


「あたッ……頭……のッ上に……ヒィッ…生え、生えて……」



 そこでアリスは限界を迎え、盛大に噴き出した。

 頭の上……頭の上?確かに、言われてみれば何か違和感があるし、触ってみれば何かが生えている。

 致し方なし、南無三ともぎ取ってみると、頭に生えていた物の正体――それは、特大のエリンギであった。



「ブフッッ!!そ、その顔やめてくれ!……ッキノ……キノコ……をッもって……ッ」


「そんなに笑うことないだろお前……体からキノコ生えたことないのか?」


「一度…一度しかないな……ああ。そうだ。一度だけ……」


「逆に一回あるのかよお前。ますます謎過ぎる」



 魔法(?)、使ってみろと言われて何とか出来はしたけど、果たしてこれでいいのだろうか。というか初めて会った時コイツ結構すごそうなやつ使ってたよな。



「なぁ。魔法ってあれだろ?詠唱したり魔法陣使ったりするもんじゃないのか?」


「あ~……まぁ、それは何というかあれだ。通説的にというか、人間が魔法を使う時のプロセスだな。君は高位な精霊故に、植物を通したイメージの具現化が得意なんじゃないかってね」


「ただのロリコンかと思ったら思ってたよりいろいろ考えてるんだな……」



 エリンギに始まったこの魔法のイメージ訓練。アリスが満足して切り上げる頃にはもうすでに夕焼けがあたりを染める頃になってしまっていた。

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