ちゃんともらってた、転生特典。
葉っぱビキニを作った俺は、とりあえず周囲の散策に出かけることにした。
途中でいい感じの枝(杖になりそうな長さ、べらぼうによくしなる)を拾い、ウッキウキで森を歩く。鹿っぽいファンタジー生物やリスを見かけて、かなりほっこりした。
この散策の目標は水辺に向かうこと。運が良ければ人がいるかもしれないし、水さえあれば7日は生きられる。火と水が一番初めに探すべきものだってサバイバル系YouTuberもそう言ってた。
空気の湿り気を頼りにまっすぐ進む。
丘を越え、倒れた木を乗り越え、野生動物にびっくりしながらとにかくまっすぐ。
今更ながらきづいたけど、この体になってから『自然のエネルギー』とか『湿度』とかそういうのに敏感になった気がする。
後者は結構しっかり、前者は漠然とだけど意外と感じれる。決してマイナスイオンとかそういうアレじゃなくてね。
「……お?」
歩く方向を、湿度が高い方に切り替えて多分数十分。突然目の前に川が現れた。
「マジか……俺ってもしかして湿度計の能力もらったのか……?」
そんなことはない。と信じたいけど、どうにもこうにもたどり着いてしまったものは仕方ない。とりあえず一口頂こうか。
そう思って川辺にしゃがんだ時、対岸に何か大きなモノがいることに気づいた。
「あれは……イノシシ?」
さっきの木から木の実を投げつけてきた猿のような角を生やしたイノシシがいた。少し気まずくなって会釈する。いや何会釈してんだ。馬鹿か。
気を取り直して水を手ですくって飲もうとして、水面に大きな波が立っているのが見えた。もちろん、その発信源は対岸のイノシシ。いつの間にやらバシャバシャと派手な音を立ててこちらへ突っ込んできている。
「ちょ!ちょちょちょ待って!!待って待ってデカイ!!落ち着け!!俺幼女だから!!危険はないから!!」
必死の説得も意味はなく、自分の数倍もある巨体がズンズン近づいてくる。そういえば、前の世界で死んだ時もこんな感じだったか。ジーザス。もう一回人間として生きる機会を得られたと思ったのに!!
体がこわばり、自然と力が入る。無理だとわかっていても、なんとか手で防げないものかと前に突き出した両手が無様だ。
やがて視界が茶色に染まり、全身を凄まじい衝撃が襲う。
確実に死んだ。そう思った。だけれども、体は直前の状態から微動だにしていなかった。
動かざること山の如し、ならぬ大樹の如し。吹っ飛んでもいないし、どこも痛くない。まさに、無事そのもの。
「……は?え?なんで?」
自分が無事となると他のことに気を配る余裕が生まれてくる。
妙な解放感に違和感を感じて下を向くと、突撃のおかげでで葉っぱビキニは全て吹き飛んでしまった。チクショウ、これが狙いか!
「……こんにゃろ!」
結構むかついた俺は、いい感じの棒でイノシシを引っ叩いた。『ビュン』という甲高い音と共に棒がイノシシの首元に打ち付けられ、あろうことかイノシシは吹き飛んだ。
俺の数倍。5メートルは超えるであろう巨体が、幼女の振った棒でだ。
驚きのあまり、脳がフリーズする。しかし、逆に冷静になった俺は今の状況を客観的にみて、一つの結論に辿り着いた。
「……チート、湿度計じゃなくてよかった……」
ぴこーん!スキル、湿度計と馬鹿力を付与しました!的な謎の声が頭の中に響くこともなし。なんなんだろうねアレ。ああ言うのがあればなんとか納得できたんだけど、ますます意味がわからなくなってきた。少なくとも俺が人間かどうか怪しいことは間違いなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます