第3話 クマミミ幼馴染

 完城美々はわかりやすい。


「……あ」


 駅からの帰りの途中。


 ゲームセンターの前を通った時、《新入荷》と書かれたポスターに目が止まる。クレーンゲームの景品のポスターらしい。そこにはネコのぬいぐるみが描かれていた。


「美々。あのネコの景品、欲しがってたガチャガチャのネコに似てない?」


 美々はトテトテとポスターの方へ近づいてポスターを見ると、ネコミミを生やす。


「や。別に欲しいわけじゃないけど」


 ツンデレネコミミってわかりやすいよねぇ。


「やっていく?」

「仁がやりたいのなら」


 ネコミミの時はぶれないなぁ。なんて思いながら、くすくすと笑ってしまう。


「久しぶりにクレーンゲームでもしたいから寄って行こうぜ」

「しょうがないね」


 そういう割にネコミミをぴこぴこさせているのは喜んでいる証拠だな。


 俺達はゲームセンターの中に入り、お目当てのクレーンゲームを見つけた。


 尻ポケットから財布を取り出したところで、「待って」と美々に止められる。


「私がやる。仁はここを誰かに取られないように見張ってて」

「あ、ああ」


 鼻息荒く、美々は両替機のところへ行って大量の小銭を紙コップに入れて戻ってくる。


 彼女の頭はいつの間にかクマミミになっていた。


「一撃で仕留める」


 闘争本能丸出しってわけだ。


「いや、一撃で仕留める小銭の量じゃないぞ」


 こちらのツッコミはスルーされて、美々はまるで鮭を狩るクマのごとき目でクレーンゲームを開始する。


 しかし、その闘争本能とは裏腹に、『じゃあの』と言わんばかりにクレーンからネコがすべり落ちる。


「くっ……! 次で仕留める!」


 ──数分後。


 美々のクマミミはペタンとヘタっていた。


「無念……!」

「ちょっと貸してみ」


 今度は俺が小銭を投下してやってみせる。


 俺が操作したクレーンは確実にネコのぬいぐるみをキャッチして、見事ゲット。


『おめでとー!』


 クレーンゲームから祝いの言葉をもらいながらネコのぬいぐるみを美々にやる。


「はい」

「……べ、別に、欲しいわけじゃ、ないよ?」


 またまたクマミミからネコミミに切り替わっておいでです。


 あんだけ小銭用意してその言い訳が成り立つと思ってるの可愛いかよ。


「俺が持ってても仕方ないし、美々が貰ってくれよ」

「……仁がそこまで言うなら」


 俺からネコのぬいぐるみを受け取ると、愛おしいそうに抱きしめる。


 フード×ネコミミ×ぬいぐるみ抱っこは破壊力抜群だね。


「良かった。ほんじゃ帰ろうぜ」


 そう言うと、美々はネコミミからイヌミミに切り替わる。


「わんっ」

「わん?」

「んっはっ!? 言ってないから! ぬいぐるみもらってテンション上がりすぎて、わんっなんて言ってないから! うんって言ったから!」


 言い訳なげー。


「そうわんかぁ」

「むむむぅ。仁のばぁか。知らない」

「あ、待って欲しいわん!」

「ばぁか! ばぁか! あはは!」


 この後、終始イヌミミだった美々は超ご機嫌だった。

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