第2話 イヌミミ幼馴染

 完城美々はわかりやすい。


 放課後のチャイムが鳴り響くと同時に、


「仁」


 なんて隣の席の幼馴染である美々が呼んでくる。


 今朝のネコミミはとっくに引っ込み、またフードで頭を隠している。


 美少女とフードって良いよねぇ。


「朝のガチャガチャのネコ。あれ、駅前にあったってほんと?」


 それは俺が今朝、美々にあげたネコのふた押さえのことで間違いないだろう。


「ああ、あったよ。人気商品みたいだから中身もほとんどなかったみたいだけど、なんとか回せた」

「あのさ」


 あの……と、ちょっぴり恥じらいながもなんとか勇気を振り絞った感じで伝えてくる。


「私も、そこに連れてってよ」

「ん。おっけー」


 彼女の恥じらいの勇気に対して即答してやると、ニパァっとひまわりでも咲いたみたいな笑顔と同時ふわっとフードがはだけた。


 美々の頭から《イヌミミ》が露になる。


 イヌミミってことは機嫌が良いんだろうな。


「じゃ、行こっ。今すぐに、行こ」


 イヌみたいにはしゃいで俺の腕を取って急かす。


「ちょ、ちょっと待てよ、美々」

「早く」


 クールぶってる声に反してはしゃいでいるのが丸わかりだ。




 ♢




「ガーン」


 駅のコンコースにあるガチャガチャコーナー。大量に設置されたガチャガチャの中からお目当てのガチャガチャを見つけたは良いが、《うりきれ》という残酷な四文字が美々を襲ったのであった。


「……」


 クールキャラを維持したいと思っているのかな。無表情を貫いている。頭のイヌミミもペタンと残念そうにへたれこんでしまっている。


 かなりショックらしいな。


 ただ、失礼かも知れないが、これはこれで可愛いと思ってしまうのも彼女に恋しているからだろうか。


「うりきれ……」


 あの、美々さん。無表情の潤んだ瞳は俺に効くのでやめていただきたい。


 あー、くそ。なんとかしてやりてぇな。


 だが、俺は業者でもなんでもない。


 どうにかしてやりたいが、うりきれじゃ仕方ないんだ。


 他に探しに行くとしてもアテもないしなぁ。


「ごめんな。まさかもううりきれになっているとは思ってなかった」


 こちらの言葉に美々は首を横に振ってくれる。


「ううん。ここまで付き合ってくれてありがとう」

「いつまでもここにいても仕方ないし、行こうか」

「うん」

「せっかくだし一緒に帰ろうぜ」


 ここまで一緒だったのだからと、普通の流れで提案すると、イヌミミが立ち上がった。


 かと思ったら、ネコミミにすぐに切り替わる。


「しょうがないから、一緒に帰ってあげるよ」


 ネコミミだったり、イヌミミだったり忙しいやっちゃな。

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