自動筆記実験 7

 真ん中の青と周辺の青を分けるのは珈琲の香りと子どもの走る速さ。文明は九十日後に空を飛んで、その色は直進を続けるだろう。賛成するのはたったの一回だけの象の耳。うちわは羽ばたいて、蝶とともに超トカゲを捕まえる。煙突からもくもくとでてくる洗濯機の影たち。やわらかい機械は山のように積もって、雹をさけて散らばる。アスファルトを溶かす旋律は、歌を忘れたライオンのたてがみを真っ赤に染めて、車輪からこぼれる、コーラの泡を音階に乗せる。オレンジ色のシカの鳴き声は、畑を駆けるイノシシの友達を、ブーメランの肩にのせて走る。無音の歌は、いつも詩とともにあって、地中を巡る根の網に乗って信号を球体にのせる。石の部屋の冷たさは、黄色い炎の影であたたまる。溶けて、垂れる。

 金魚の目玉は透き通って、僅かな緑の色素が生み出す鱗の美しさを際立たせる。サンフランシスコに飛ぶ蝶の羽は、太陽に透過されて、七色の影を灰色の路上に落とす。それをたどって集まる人間の列。かもめの乗る船は、随一の速さを誇って、車輪の回転を速めている。ソリにのった怪物は、帽子を被ったまま踊りだす。植物に似せたフクロウの影は、車に乗った宇宙飛行士の風変わりな手袋の形を太陽に映し出す。4つのカップに均等に注がれたコーラは偽物の香りを発散して、猿の到着を待つ。

 白い葉っぱは美しい肌からこぼれる甘酸っぱい呼び声。ミツバチは光の祝福を受けて、永遠のチーズのつくる宇宙船に乗り込む。蝶の美しさは、蝶の美しさを知る。怪奇趣味の日食は、飲食もできない野球場で読む地図帳の香りを飲み込んでふらつく。自画像の違和感はその表情の中にあるのではない。氷は溶けて流れるハチミツの城。スーポーは星になった。割れたほうき星の片割れは、やわらかい柘榴を絞ったジュースの滴り。よく見えないサングラスの向こうに、アスファルトの傷跡を映しながら、萌黄色の夢を見る。誰も知らないこの夕焼けの風景。あの2つに割れた球体には宇宙人の帝国が彼方まで広がっている。偽りの繁栄は、溶けて流れるチョコレートの血液を、隅々まで張り巡らせて、マンハッタンを彩る数字のすべてを崩落させる。

 段ボール箱に隙間なく敷き詰められたポテトチップスの表情をみきわめる。ネクタイピンを収集する青い鳥は、空を飛び回る意外性。今日はどこへ行ったのか。明日はどこへ行ったのか。散逸するりんごの色は、煙を吐く蒸気船には叶わない。とても嬉しい季節のしたたり。すべてはバターでできている。


真ん中の青と周辺の青をわけるすべては、バターでできている。

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