自動筆記実験 6

 ユイスマンスの庭に潜むネズミの足跡は、人間を削った薄い天国の残り香を鈍角の音楽にのせて歌う。零の発見を隠し通したコーヒーショップの酩酊。電気コンセントから這い出る聖人の行列は、六本の傘を開いて記号を封じ込める。意味の羅列はやがてこぼれ落ちる地球の天候を雲に乗せて、音楽の階段を駆け上る。紙コップに彩られた国。新鮮なバレーボールは市場の花形競技にまで上り詰める。

 流れ落ちる車輪の粒たち。縞模様の絨毯の上を滑るシカの角は、回転する象牙よりも尊い。ジャンプするジャンプする友達。犀角模様のモーターバイクは、サーカスのテントを破壊する。空中ブランコは振り子の運動を物理的矛盾の中に引きずり込む。水の氾濫は千年の珈琲を一滴のテーブルの足へと解き放つ。ロバは駄馬の蹄をシャブリ、ネオンサインを黄色に塗りたくって、幾何を描く。三角形は完全な冗談。モジュールの意味を知らない、カケスは、ドリアンの香りをぶん投げて、海棲動物の帽子を破る。割れたシャチの頭から飛び出る、数式の束は、チャーミングなドイツ語方言をシャンパン地方の牛の中へとねじこむ。ないないないの国。

 連続するピッチドロップ。アスファルトの柔らかさは、コンクリートの間抜けさを見抜く。駐車場が踊る。踊る踊るが踊る。シカを丸めた絨毯を一本、二本、三本と掲揚する。滑稽な国歌を歌う羽の生えた生き物、ロボット、プログラム、忍者。佯狂は酔う缶ビール。よう、よう、YO!亀によろしく。六本もあった歯が今は二十本しか無い。なんで、うれしい万歩計。楽しいタクシードア。銀行は毛糸のほつれるセーターにゃん。にゃんにゃんいやん。紙でできたグラスはステーキを食べるのに適している。これは人を食べる。慎重に歌おう。身長を歌おう。たのしいラーメン食べたい。いつも飛ぶのは機械的な観念ばかり。僕は飛べる。うそです。かっこいいマイクをつけたカフェ店員は、緑色のエプロンに操縦されている。歩いていけるのに、走っていかない。躓いた白い運動靴が、美味しくない詩をつくって、猿はとんびと一緒にとんでゆく。

 にこやかに笑う椅子の硬さ。豆腐と納豆を作った菌類は嘘しかつかない。脳天気な風邪のウイルスたち。モンデールさんは宇宙からやってきた鉱物の乗り物。ネブラスカ、ネバダ、陝西。バイエルン、モロッコ、アジア、アフリカ、サバ缶、カラオケ。

 流れる美しい豚の舞は、AIに仕組まれた牧場を緩やかな天国へと降下させる。膠着した川の幸せ。幸せ。幸せだなあ。ちょっとでもDADA。たくさんでもDADA。DADA。だーだー。だーだーだー。プラスチックの卵、美味しくない。


ユイスマンスの庭に潜むネズミの足跡は、美味しくない。

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