自動筆記実験 5

 動物園のレンガは丸い顕微鏡に映る灰色の天才的運動。滴はいくつ落ちても天井の大穴から除く海の底に届かない。電気をためた箱の中身は、洗米した階段に立てかけられたフロックコートのほつれに縫い込まれる。タンスの融解した華やかさ。燃燈道人は山をこえて、星をバットでホームラン。赤い看板は青い周縁をつかんで、瞬間的存在の音程を飲み込む。零。一。三十三湖のほとりのベランダ。小舟は葉っぱの匂いを聞いた。先天的なドラゴンは翼と鱗の間に宿っている。紺と金の品のない思い出。ワインとタバコはエーゲ海の寺院の店頭で買った犬。猫。99の甘い香りは山の向こうの丘から吹いてくる風の隙間に収まっている。収納の妙。妙な形をした靴を履いた長靴が、今日も煮干しをさばいている。笑いかけてくれる珈琲の香り。燃える砂の中に並んだ陶器の小人たちは、水色の水を目指して街を出る。旅は洋々として曇天を裂くTake 5。すでに呼んだ本は頭に重ねるもの。枕は水中を舞うキリンの起こす竜巻を飲み込んで飛ぶ。

 遺伝子が描く螺旋が幻に過ぎないことは誰もが知っていて、誰もが口にしない。アパートメントの非常階段から飛び出す猫はプラスチックの車と同じ音をだして走る。よく練られたかもめの声は、陽の光をまるめた匂いに似ている。壁にかけられた水墨画が走り出す。よく笑う子どもは立方体の建造物が立ち上がるのを見て青い空を蹴る。

 ゴムボールはバレーのネットを飛び越えて、七つに弾ける。ピアノコンチェルトの19番の価値を知っているのは、コンクリートに打ち込まれた、錆びた螺旋の鉄骨だけ。

 透明な丸い椅子には、森で遊ぶ猿たちの足跡が滑らかなガラスのままに残される。鍵盤を叩く拙い指先。音楽は常にこどもの広場に戻される。円形を作ってまわりつづける、子犬たちのワルツははるか遠くからやってきたゾウたちの耳をめくりあげる。ふくよかな丸い花が咲く公園から見える海の深さを知る、動物たちの戯れ。連続は美しさを作りながら、回転によって渾沌へ昇華する。

 目から耳、耳から足、足から森へ。傘を指して歩いてゆく長靴は、黄色いレインコートは振り回しながら、歌と歌との隙間をぬって歩く。美しき自転車乗り。回転する車輪は、ルーローの三角形に近づいて、転がるおむすびになる。雨に濡れた飴玉の輝きは、やがてくる3000年先の未来の訪問者のかぶるヘルメットの硬さ。縄跳びの縄は、自在に伸び縮みしながら、シカの角を引き寄せる。スッキリ、ハサミで切った昨日のスパゲッティ。積み上げたブロックは波の香りを残して、三枚の肖像画を水面に浮かべる。


動物園のレンガは、三枚の肖像画を水面に浮かべる。

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