第22話 なんでもないグループでの交流も

 宇宙世紀0079――でもなんでもない現代日本。

 私こと桜塚怜は休日を家族水入らずの時間で過ごしていた。

 二人でそのようにと差し向けたのではなく、一華に急なお仕事が入ったのだ。

 日曜日には都合を合わせてと彼女は主張したけれども「絶対に休まなきゃダメ」と強硬に主張した。


 オト高のスパダリとは言っても、気兼ねなく休む時間が必要不可欠だ。

 ただでさえここ最近は一華に睡眠不足が重なっている。


「……一華ちゃんの元気がなさそうに心当たりがある?」

「え、えー? ありそうに見えるかなー?」


 友人に嘘をつくのは心が痛いけれども、ちらっちらっ、と視線を送る一華をスルーするのも厳しいけれども。

 んー、と指先を唇に這わせて考え込む姿は艶っぽく、ほわわんな声は耳なじみが良い。

 ただ、関係性の変化については察せられてはならない「友人と恋人を交互に? 何それキモ」とか言われたら想像するだけで泣きそう。


「ないかもだけど、なんとなく甘い匂いがするのだ」


 ひょっこり顔を出したのは、みゃーちゃんこと椎名雅ちゃんだ。

 彼女の動物的な勘は侮れない。

「熱があるから保健室行った方が良いぞ」と言われて、ちょっとダルい感じがするけど平気平気と思ってた私は、いざ体温計の数値を見て仰天した。


 その後学校を3日連続で休むハメになったのは私の不徳の致すところ。

 ちょっとダルいの原因を看破したみゃーちゃんには手作りのお菓子を送った。


「なんだろう? 私の性格が甘ちゃんだからかな?」

「もしかして、妹さんにお菓子作った?」

「……どうしてそのことが」


 自分の匂いだってよく分からないのに、休日にしたことまで読み取られるとか、私の脳みそってそんなに単純かな?

 

 ちなみにありすちゃんに食べて頂いたのは、お仕事お疲れ様分と恋人dayをすっ飛ばした分のお詫びを兼ねたお菓子だ。

 苦手と言われたら泣く泣く持ち帰るけれども、チョコをふんだんに使った疲労回復に良さそうなガトーショコラ。


 ふたりちゃんには分かって貰えると思うけど、みゃーちゃんはえらく私のお手製を気に入ってくれたみたいで。

 たまに市販品になるけど、これどうぞのお菓子に評価をくれている。

 渡した瞬間に指ごと食べられそうになるのはご愛敬、気に入ってくれてるなら何も言うまい。


「もしかして新作か! 私に作ってくれる分の!」

「ええと、出来が良ければ今度持ってきます……」

「フォフォフォ……苦しゅうない」

「学級委員の前で勉学に不必要なものの話し合いは困るわね」


 いや、前も何もそちらから伺いに来たんじゃとは言えなかった。

 ニコニコとした笑顔でいるけれども、醸し出すオーラは絶対零度。

 その辺の機微に聡いみゃーちゃんは後ろを振り返らずに駆け出した。


「ねえ桜塚」

「はい、正座する準備はできております。マム」

「や、ちょっと良い?」


 と、呼び出された後で人目の付かないところまで二人で向かう。


「別にアイツのことを気にしているわけじゃないけど、なんか空気変わったわよね?」

「ファブリーズでもかけたのかな?」

「あなたが持ってきたものを雅に渡しても良いのよ」

「おいおいなんだ海未ちゃんはニュータイプだったのか……」


 バレバレなのよと眉をひそめながら言われると、バカ正直さ加減を嘆きたくもなるけど。


「見逃すかそうでないかは私の加減次第」

「……」

「ただ、帰宅した後にばったり会ってお礼をされるのも悪くないわね」


 意訳:私にもおかしちょーだい。

 

「……一華にあげる分の残りで良ければ」

「アイツの残りってのが釈然としないけど、まあいいでしょう……お代官様」

「あれ、全然敬われてない!?」


 なんで二人でスーパー行くの? というツッコミを貰ったけれども、これはあくまでも予定の許可を頂いてからの話なので……

 


 なお海未ちゃんが私の作るお菓子に熱中し始めたのは、みゃーちゃんが「美味しいから食べるのだ」と無理矢理口に放り込んだからである。

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