第14話 イラナイツ使ってクリアしてるんでしょ~?(ジェイガンもいますが?)

 人付き合いの悩みを吐露するのが妹から姉なのは、年功序列の観点から言っても自然だ。

 不出来な姉がありすちゃんに助力を求めたから、と正座での進言を望んだけども、堅苦しいからとの理由で座布団に腰掛け正対。


「では問題です。おもてなしに必要なモノは何でしょうか?」


 ありすちゃんが某宇宙の帝王みたいに人差し指を立てて問いかける。

 見てください綺麗な花火ですよ! と使えない部下と一緒に存在を抹消されていく私。

 ……あのシーンを観てたら理想の上司とか言えないんじゃないかと(小声)


 

「豪華な飲み物に豪華な食べ物!」


 素振りでボタンを押すフリをしながら私が答えると、ありすちゃんはファイナルアンサー? と小首を傾げながら横目でチラリと見る。

 正解すれば1000万円を獲得できるくらいの緊張感を携えて、


「ざーんねーん!」

「あー! やっぱりー!」


 CMまたぎができるくらいの間を取って、妹ちゃんは両手で軽く床を叩きながら、不正解を実に楽しげに告げる。

 私は頭を抱えながら悔しさをにじみ出すように身体を左右に揺らした。


「まあ、それもあると思うよ。お姉ちゃんはある意味正解だった」

「うう……慈悲深い……」


 クイズ番組では正解か不正解かがあるけど、答えが出ないものもたくさんある。

 このたびはおもてなしの最善だ、善行と踏まえれば二位以下の物は数多ある。


「お姉ちゃんはお友達さんをどこでお相手するつもりかな?」

「ん? あ、家の掃除!」

「……は、いつもお姉ちゃんがしているので、たまにはお休みしても良いと思います」

「え、でも、ホコリとか目に付いたりしない? 窓のさんに指を這わして嫌味を言われたりしない?」

「そんな友達なら私は怒ります」


 確かに、私の不出来で自分が文句を言われるならともかく家族に累を及ぼせばカチンと来るな。

 そして一華は配慮が出来る人だ。

 計算高いところが見下されているようでムカつくと言われたりもするけど。


「お姉ちゃんの友達はそんなことをする人じゃないから安心してね」

「……」


 信頼半分、疑い半分といった感じだ。

 姉と友人をやっているからという理由で評価が下がっているに違いない。

 桜塚怜はこぢんまりとした小市民だし、一華はそれに見合わない麗人だ。


 ありすちゃんの中に「何故お姉ちゃんの恋人に」「よからぬ意図があるんじゃないか」と考えるのは必然性ある。


 方向性が真逆だけど、ありすちゃんがトンデモなチャラ男を連れてきて「恋人ッす~よろぴこ~」とか言ってきたらドッキリを疑うから。


「して、正解は」

「ドゥララララララ~」

「まさかのドラムロール!」


 デケデン!


「お姉ちゃんのいつも通りの振る舞いだよ!」

「え、お掃除とか?」

「それもあるけどお客様にお掃除とかさせられないよ、危なっかしくて」

「確かに……一華なら難なくこなせそうだけど、私が冷静でいられる自信が無いよ」


 それ以前に他人様に掃除をさせるのは一般的におもてなしとは言わない。

 

「お部屋の中でいる時と同じ感じだよ、ゲームやったり」

「……レトロゲーと呼ばれるものでも楽しんで貰えるかな」

「ゲームとか普段やらない人なんでしょ?」

「20年30年前のハードだからなあ、最新鋭機のリメイクが出たソフトだよコレ」


 格闘ゲームやレースゲームやRPG等々、確かにまあ二人で遊べるソフトではある。


 が、めざましい発展をする現代社会で10年……いや、5年もすれば平気で型落ちと呼ばれる文化。

 30年前のもんを引っ張り出してプレイするのはいかんせんニッチではなかろうか。


「そ? お姉ちゃんがスーフ○ミのマリ○ーやってるところメッチャ面白いよ」

「メッチャ面白いの!?」

「全コースでCPUが通るところ丸暗記してて、バナナ目押しできるし、どこに落としたら最善かとか、投げて直撃させられるのパないよ」

「目押しできないの!? え、よく滑るけどセッツァーのスロットも目押しできるよ私!」

「一般的なプレイヤーはね、緑のこうらをまっすぐCPUにぶつけられないんだ……」

「そうなの!?」


 低レベルクリアや一般的には使われないユニットだけを使ってクリアする縛りプレイも「そんなことしないよ」と言われた。

 情けない姉は「ええ……?」と小声で呟きつつタジタジになるしか無かった。

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