第7話 急上昇して急旋回 (目が回りますかっ!?)
教室に戻り行くは一人。
屋上での交流は二人だけの秘密。
私は女の子特有の急な事情によりお手洗いへ行かざるを得なかったとし体裁は整うであろう(一華曰く)
そこら辺を詳らかにして(追及するな)オーラを出してしまうと相手側も恐縮するだろうし(異性のデータは無い)急に具合が悪くなったくらいにしておこう。
教室に戻ってきた私に数多くの視線が向いたけれども、大半は不意のボヤ騒ぎに目をやる的な薄っぺらさだ。
元からお前に向ける視線はそのレベルだろと言われれば頷かざるを得ない。
ただガチめに私を心配してくれて……なおかつ近づいて来られるふたりちゃんが
「だいじょうぶだった!?」
と演技だったら迫真と付きそうなくらい、心底心配な表情と声色と両手にぎゅう。
彼女はとある事情で悩みを共有しているから、心なしか私との距離が近い。
だけどもその「ガチで心配」が重荷になるときもある。
元よりグループを逃げだそうとしたのだし、関係破壊もいと仕方なしって感じだったのだ。
本当に壊れたらどんな顔をすれば良いのか分からなかったけど。
人付き合いが苦手な原因となったイベントを思い出してしまいそうになるけど。
「ごめんね!? 痛かった!?」
「え!?」
煮詰めていた鶏肉がホロホロと崩れるみたいに、目から塩水が流れてくるんだからたまらない。
さっきまで感情がジェットコースターみたいに急旋回していたから、ほんの少しの優しさでもダムを決壊させるのに充分だったみたい。
「ちょっと具合が」「急な事情が」と脳内にたくさんの言い訳で包まれていたのに、嗚咽が出るばかりで大丈夫だと言おうと励んだけど。
「この通りちょっと具合が悪いみたいだ。しばらくそっとしておこう」
教室に戻ってきて早々ポロポロ泣いている私に対しそつないフォロー。
さすがは天下一品の王子様、イレギュラーにも即対応できるんだから素晴らしい。
「う……ありがとぉ……」
「あ、ああ」
心配をかけまいとしていたのが仇になった、気持ちが爆発したと一華は悲劇のヒロインであるように彩ったけれど。
それは嬉しかったんだけど……心配そうに眺めている友人には心の中でスライディング土下座するしかなかった。
※
友情とはげに素晴らしきものなり。
みんなは昼のことを忘れたと言わんばかりに、普通に応対してくれるし、一華は他の人たちとおしゃべりをしながらも私を気にしている。
グループの中で一番仲が良い(彼女自身が天使の生まれ変わりだから)ふたりちゃんと話していても、不意に一華と目が合う……これが親友関係!
大人の皆様も長い間連絡が無くても、時間が合ったら会うのが友人だと言っていたし。
私との関係なんて卒業したらノーセンキューだと(中学時代もそうだったし、同窓会とか呼ばれないだろう)思ってばかり。
うっ、また泣きそうになってしまった。
ふたりちゃんはメッチャ心配するし、その顔は天使の嘆きと言わんばかりだから申し訳ない、耐えろ耐えろ。
自分についぞ訪れることがないと考えていた関係にウッキウッキだった私が、その友人から呼び出されて「二人きりの用事なんてトレビアン」と考えていたら、一華の口から出たのは関係を崩壊させる言葉だった。
「ひとしきり考えてみたんだが、私にとってキミは苦楽を共にしていい一生のパートナーだった」
「ヘァ!?」
口から出てきたのはウルトラマンみたいな声で、トレビアンじゃなくてレズビアンな用事だったと小ボケの一つも挟めなかった。
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