第2話 うわっ、私の黒歴史エピソードヤバすぎキツくない?(マジ無理)

 話しかけられたら「ふひっ」とか言う陰キャがなにゆえ高校デビューに成功をしてしまったのか。

 

 それは私の目に入れても痛くない妹の存在がそうさせたのである。


 中学卒業まで桜塚怜は陰キャだったし、見た目もまたそれ然りだった。

 教室にキノコが生えていると思ってよく見たら桜塚怜だった――なんてエピソードがあったんじゃって予測するくらい。

 人間やってますとお世辞にも言えないくらいジメジメとしていた。


 妹のありすちゃんは姉と違ってトンデモめんこい娘さんだったけんども、ゴミみたいな姉を見て反面教師にしたのか、風貌をどげんかせんといかんと頑張っていた。


 エゴサとか怖くて出来ない(そもそも話題になっているわけがない)人間性だから、元いた中学校に「姉と比べて妹はどう?」とか尋ねに行けない。

 でも、姉の見立てでは妹はスクールカーストの頂点に君臨しているだろうし、一声かければかしずく生徒に周辺がまみれるはず。


 と、ありすちゃんの可愛さは伝わったと思うけど、パリピのお手本が近くにいたのは桜塚怜に僥倖極まりなく。

 少なくとも本日まで陽キャに擬態が出来ていたのは妹ちゃんのおかげ。


「それも……無にしちゃったかな……」


 鉄格子の内側から見渡す景色はどれもちっぽけで、それを見ている私がとにかくまあちっぽけで。

 今の今まで陽キャの集団の中に入ってカースト上位だったのが間違いだと告げられた心持ち。


 神仙音ヶノ空高校――通称オト高は通学に一時間はかかる遠所に存在する。

 進学校としての顔もあり、一華を筆頭に才色兼備な学生が数多く通う新進気鋭の共学校。


 頑張りに頑張ってここに進学したのはリスタートするためだった。

 暗くてジメジメとしたオーラまとって教室に生えたキノコみたいな私を知らない人ばかりなら、擬態したって後ろ指を指されることはなかろうもん。


 いざ通うとなれば妹ちゃんは「尊敬する」と言ってくれたし、母にも「困ったことがあったら言って頂戴ね」親身になってくれた――挑戦者たる私へリスペクトを忘れない性格の良いお二人。


 一華に話しかけられて気絶をしたっての、詳しく話したいと思う――臭いものの蓋を積極的に開けていく。


 教室に入ったときには緊張で縮こまっていたけれど、内心ではカースト上位女子とご友人になるぞと息巻いていた。

 一華に話しかけられなければその思惑が成功した可能性は0に近いが、なかった過去を空想してやる気ダウンしてもしゃーない。


 神岸一華――当人曰くモデルのまねごとをしているらしい。雑誌に載ってたりするのも「たまたま」とご謙遜をなさる。


 芸能活動をされていて、しかも実家が太くていらっしゃる弩弓の存在……なお趣味は筋トレ。

 見た目からはまったく想像できないが一華は女の子お姫様抱っこするくらいはやってのける女子。


 そして抱っこをされたのが桜塚怜なのだ。


 一華に話しかけられ「この子と親しくなれれば人生勝ち組」と直感した私は好感度を上げなければと決意し、好感度を上昇させる会話が脳内になくて直後に絶望をした。


 しかし、なにがなんでもとの思いが脳の回転をさらに加速させ……身の丈に合わない行動をしたせいかオーバーヒートを起こして倒れた。


 これが被害者私、加害者一華の「神岸一華が話しかけただけでクラスメイトを昏倒させた事件」の全容である――内面を暴露していないから実情を知るのは私だけだ……出来れば墓場まで持って行かせて。


 「生まれてきてごめんなさい」とうわごとのように言っていたのは一華も笑い話にしているが、この出来事がきっかけでスクールカーストの頂点に君臨するグループに入ったのだ。


 なお、経緯が経緯だけに周囲から身体の弱い子扱いをされているけれども、メンタルがミジンコなだけで身体は丈夫だし、健全な肉体に育ててくれた両親や陽キャの参考になったありすちゃんには感謝が絶えない。


「ああーっ! 無にしちゃった! 私のへっぽこメンタル! ミジンコ! マジ微粒子!」


 偶然が重なり陽キャグループに入っていた女――二ヶ月が経過し無事死亡(メンタルが)


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