第4話 私(のステータス)は神の(ショート)メッセンジャーだ!
無事町に着きました。
そして何事もなく中には入れました!おお、初異世界の町(中)!
因みにアレ以降特に何もなかった。
小高い丘にあった休憩所らしき所には数人がいてこちらをジッと見ていた位か?
なんか微妙に怯えられていたけど…なんですかねぇ?
宿屋にチェックインし、食堂でこれからの打ち合わせをする。
「私はみんなが戻った後の食料の買い込みをしなければ…いつ追い出されても大丈夫なように」
「いや、すぐ応援部隊が来るはずだからな?」
「…その時にお前のお兄様だったら私は死ぬんだが?」
「……『訓練にはちょうど良い試練ではないか』とか言って刀渡して森に放逐とか?」
「「………」」
私と彼方は顔を見合わせる。
「オマッ、トメロヨ?」
「ムチャイウナ!キョウジュガトメテクレルダロ!」
「ムリムリムリムリ」
「?」
小声で言い合う私達に真殊は不思議そうに私達を見る。
うん。君に対してはあの人優しいし。
あと、2人には言わないが…おそらく2人がいなくなった瞬間にハードモードからエクストリームモードかインフェルノモードになると思われる。
神様方の中で、私のことを快く思っていない神様もいるだろう。
お客様2人を帰せば私を「不運な事故」で始末できるだろうし。
「まあ、最悪を想定するなら1人だけ残されてしまった…状態を想定することか」
「そう言うこと」
「明日までにこの周辺を探索しておかないとな…あのモンスターの件もある」
そこまで言って彼方が外を見る。
「何故?」
え?何事?
雨が降り出した。
「あらららら!」
宿屋の女中が慌てて各部屋の窓を閉めに走る。
「おっかしいわね…晴れていたのに」
厨房から出てきて首を傾げる女将さん。
「…」
私をじっと見る真殊。
ワタシハムジツデスヨ?
私は黙って上を指さす。
「───通り雨なんて珍しいね…もう止んだわ」
「「「………」」」
そっとステータスを見る。
【美神・恋神の殺意】
何でだ?
【闘神の謝罪】
……みんな、私のボードで感情のグループチャットしてませんか?
「雨上がったみたいだし、俺ちょっと散歩してくる。二人は部屋で寛いでいてくれ」
彼方はそう言って宿を出た。
あ、そう言えばモンスターについて聞かないと…まあ、今忙しそうだし、後で。
私は真殊と共に部屋へと戻った。
因みに大部屋で三人まとめて泊まってます!
───もしやそれで怒っている?美神・恋神様は。
【美神・恋神の頷き】
【闘神の全力謝罪】
【戦神のあきれ顔】
いやどうしろと?
あと戦闘の神様はお二方いらっしゃったんですね…
夕食を無事に終え、話し合いを開始する。
「さて、明日帰還するわけだけど…雅は解除されるまでここで生活だな?」
「まあ、モンスターを上手く倒すことができればお金が手に入ると分かったので少しは暮らしやすいかな」
「その件なんだが、モンスターの落とす貨幣は両替必須らしい。あと確定では無い」
なん…だと?
「更に言えば両替の際に税金も取られるからな?2割ほど」
「そこは5割とかじゃ無いのか…」
「昔は5割取るところがあったらしいが、そうしたら狩人や旅衛士がモンスターを狩らなくなり領軍が常に臨戦態勢という地獄になったらしい。
更に更にモンスターが増えればランク上のモンスターが湧き出すらしくてな」
聞きたくなかった情報ッ!
「そんな嫌な顔するなよ…ここら辺に出てくるのは狂小人、餓え小人、狂狼くらいらしい」
「あのデカブツは?」
私と真殊の視線が彼方に注がれる。
「……イレギュラーか、モンスターが地域キャパを超えたか、だろうな」
そう言いながら彼方は鋼鉄製の刀を取り出し、渡してきた。
「念のために持っておいて欲しい」
「人、それをフラグという」
「まあ、十中八九使うだろうなぁ…」
刀を受け取り、肩を落とす。
ああ、嫌だ嫌だ。力があれば無論脅威に対して抵抗は試みはする。
ただ、無理なものは無理。
数の暴力に対して、権力に対して、圧倒的な力に対して。
人は、個人は無力だ。
勿論ケースバイケースだろう。
基本救いなんてものは無い。
社会生活の場合は運とコミュ力が何よりも重要だ。
努力をしても他者が認めてくれるとは限らない。
そもそも努力の出来る土台すら作れない事が多い。
私は運があの一瞬だけ最悪から反転したのだろう。
良い出会いがありこうして今も生きている…が、それとこれは別。
「やっぱり森が一番か…」
「いや、刀を受け取って言う台詞がそれか?思考回路さん仕事して?」
彼方が呆れたように言うが、こっちとしては考えた結果なんだけどなぁ。
「一部の神が殺意をもって殺しに掛かっている時点で詰みだと思わない?」
「………雅なら何とか出来ると信じている」
「そんな綺麗な笑顔で言われてもなぁ…町にいるよりも生存出来る確率が上がると考えたからであって、ああほら泣きそうにならない」
涙目で私を見つめる真殊を慰めながらまずは一ヶ月の短期生存プランを計画する。
「季節、地理、国勢、地勢は?」
「簡単に調べてきたが…現在の季節は初夏、あと3ヶ月はこんな感じだ。地理的には北寄りだがまだ北部が存在し、北へ1月行った所は氷に覆われた地域があるらしい。
この国は王制では無く貴族連合国の南端。俺等は国をまたいだ状態のようだ」
ああ、だったらこの町は緩衝地帯のようなものか。
だったら尚更付近の林は曖昧…でもないか。
あの丘の上が休憩所兼監視場所なんだろうな。
「本気で森の方が良い気がしてきたんだけど」
私の言わんとしていることが理解出来ている真殊が頷く。
この町を封鎖された場合はかなり厳しい。
大都市であればそういった事をしても逃げようはある。
「雅はプランだけ考えておいて欲しい最悪と最悪手前のプランを雅なりに考えてみてくれ」
「それは既に出来上がっているんだが?」
「………」
いや、何故そんな化け物を見るような目で見る?
「まず最悪は彼方だけが帰還出来てわたしと真殊が帰還出来ず、ケートが完全に閉ざされる状態」
これは考えられる中で一番最悪だ。
何せ真殊が壊れかねない。
幾ら私にベッタリ懐いているとは言え、家族から完全に切り離された場合の心労はかなりのものになる。
そして私はコミュ障もしくは準コミュ障。
こんな二人だけ取り残されたら軽く死ねる。
「次に二人が帰還出来てゲートが閉じた状態。これは人的支援及び物資的支援が出来なくなった場合を指す」
軽サバイバルはできても動物を捌いたりといったものはかなり厳しい。
荷物を見る限りいくつか足りないし、コミュ障系でそんなに腕っ節も無い私が若干閉鎖的な町で生きていけるかと言えば…無理。
「あとは…ゲートが縮小し、人は通り抜け出来なくなった場合」
例えばゲートの直径が20センチとか。
物資もろくに送れないに等しいけど、無理ではない。
そんな状態で何が出来るか…拳銃の類や携帯食料などが関の山だろう。
「───可能性としては、2、3番目が起こりかねないか」
彼方が呻く。
「彼方の想定は?」
「最悪は同じく俺だけ帰還。最悪手前は転移不可だな」
「最悪手前ちゃいますやん…」
「そっちの想定を聞いて情報の温度差を改めて認識したんだ」
温度差?
「雅、神のステータスを見せて欲しい」
そう頼まれ、ステータスを開示する。
「……遊戯神の悪戯心ってなんだ?」
まーた新しい神様が出てきたよ…
「しかし、本当に殺意もたれているんだな…」
「彼方達と同じ部屋で寝るから殺意もたれているっぽい」
「……なんかスマン。警護の観点から必要な事なんだが…」
「私の命も明日までか…」
「縁起の悪い事言わないでくれないかなあ!?ほら!真殊が涙ポロポロこぼしはじめた!」
「いや、神々の殺意怖いでしょ?散策妨害で天候を変えられるわけだから」
【主神:美神・恋神をしかり、暫く監視しておきます。名前修正に関してスキルを補填をしておきました。】
「………雅、銃も、戻る時に渡しておく」
真殊が主神に感謝の祈りを捧げている中、彼方は疲れた顔で私の肩を叩いた。
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