第39話 スキル取得と、ついでについてきたヤバい奥義
しばらくして、落ち着きを取り戻したネルさんは、呆れた目つきでこう言いだした。
「いやもう桁がおかしいんですよ……。その桁はですね、技を極め尽くし、強化の余地がなくなって久しいSランク探索者が使い所を見失ってようやく辿り着く境地なんですよ……」
このポイント、そういう相場感なのか。
素人目にも桁が多いなとは思ったもんだが、比較対象を知らないのでどういう反応をすればいいのか良く分からなかったんだよな。
「ダンジョンを破壊したとはいえおかしいでしょ……破壊ボーナスでもあったんですかね?」
「さあ……」
俺は首を傾げるしかできなかった。
なんせ、破壊前後で数値を確認してなかったからな。
「こんなに溜めとくなんてもったいない……と言いたいところですが、タマちゃんってある意味『強化の余地がなくなって久しいSランク探索者』と似たようなもんですもんね。ほんと、何に使えばいいんでしょうね」
「そこなんですよ」
「哲也さんは獲得可能なスキルスクロール一覧とか見てみたことはありますか?」
「いや、無いですね」
そういえば、それもこのデバイスで確認できるんだったか。
「ちょっと見てみますね」
「ぜひそうしましょう!」
俺はしばらく一覧を眺めることにした。
獲得できるものは攻撃スキル、回復スキル、防御スキル、錬金スキルと多岐に亘っていたが……俺はどれも今ひとつ獲得する気になれなかった。
スキルの説明だけ見れば魅力的な物が多いのだが、どれもこれもタマがすぐにコピー可能、あるいは既に上位互換のオリジナルを持っているようにしか思えないのだ。
やはり、眺めるだけ眺めて終わりになりそうか。
スクロールバーが下に近づくにつれ、俺はその確信を深めていった。
しかし……最後にあったスキルに、俺は「おっ」と思うものを発見してしまった。
そのスキルは――「戦利品グレードアップ」というもの。
今まで俺は何度もタマとダンジョンに入ってきたが、「危険度Dダンジョンで危険度Aクラスのドロップ品が出た」みたいなことは特に無かった。
しかもこれはパッシブスキルのようなので、「見よう見まねで修得する」という性質でもなさそうだ。
この系統のスキルなら――タマの力と上手いこと相乗効果を起こせるんじゃないだろうか。
「これって……」
「あー、普通なら絶対最初に手を付けないやつですね。強化に必要なスキルポイント消費量がやたら多い上に、直接探索に寄与しないので、普通の探索者ならまず無視します。戦利品に色を付けるより、素直に次の危険度に挑戦できるようになった方が実入りも良いですし」
スキル名を指すと、横で見ていたネルさんがそう解説を入れてくれた。
「ただ……既に最強のタマちゃんなら、敢えてそういうのもアリなんじゃないですか?」
ゴミスキルかのような言い様だったが……しかしネルさんは、最後にそう一言付け加えた。
確かに一理あるな。
仮にこれがスキルポイントをドブに捨てるような行為であったとしても、どうせ使い道もなければ、量だってダンジョンをついでに一個破壊すれば取り戻せる程度なのだ。
変に逆張りで突っ込んでみるのも、配信者というエンタメで食う立場としてはナシではないだろう。
「じゃ、注げるだけ注ぎます」
俺はそのスキルをタップし、スキルスクロールをダウンロードして習得した。
そして次に、スキルレベルアップを連打してひたすらスキルポイントを使い、そのスキルを強化していった。
ギリギリ残ポイントが21万程度になったところで……俺は「戦利品グレードアップ」をスキルレベルマックスにすることができた。
「わあ……本当に全部注いじゃいましたね……」
「ま、もう一つダンジョンを破壊すればポイントは取り返せますからね。たとえこれがガラクタだったとしても」
「次のダンジョン破壊を前提に話さないでくださいよ……」
「……あっ!」
連打を終えた俺は、そんな風にネルさんと話していたが……その時、デバイスがブブっと震えて一件の通知が来た。
見てみると……そこにはこう書いてあった。
<貴方は「戦利品グレードアップ」を真っ先に習得し、その後他のスキルに脇目も振らずレベルを最大にしました。特殊条件を満たしたため――隠しパッシブ奥義「宝箱グレードアップ天元突破」が開花しました>
――なんか追加で変な奥義が手に入ってしまったぞ。
「これは……?」
「よ、よく分かりませんが……とりあえず、なんかとてつもなく凄そうですね……」
流石のネルさんも存在を知らなかったのか、これにはただただぽかんとする様子。
「今日の配信は、宝箱探しをメインにしますか。ちょうど危険度Bからは場所によっては宝箱が設置されてますし。なんかすっごいものが手に入れば、配信も盛り上がると思います!」
そしてついでに配信のコンセプトまで決まってしまった。
今日の打ち合わせのメインは「どういう配信にするかを決める」だったので、期せずしてそれも完了してしまった形だ。
テーマも決まったところで、俺たちは配信の予約や告知などの準備を進めた。
それが終わると、宝箱た見つかる可能性のあるダンジョンに行き先を決め、俺とタマはむ〜とふぉるむで、ネルさんはバフ付き雷神飛翔でそのダンジョンに向かった。
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