第38話 溜まりに溜まってたスキルポイント
翌々日、家でのんびりしているとネルさんとナミさんのコラボ配信が始まったので、一応俺は成り行きを見守ることにした。
色々協力した以上、やはり作戦の結末は気になったからな。
配信のタイトルは「【検証】海水+雷撃コンボなら危険度Cダンジョンでも楽勝で攻略できるのか」で、表向きは何の変哲もないいつもの事務所内コラボとするようだった。
配信が始まると、まずナミさんは”どうでもいい前置き”として、一昨日一般販売が始まった若返りの薬をみんなの前で飲んで見せていた。
実際は本来より強力な若返り薬なのだから、当然のようにナミさんは幼児並みに若返り、ドヤ顔で「ね? これでちゃんともともとJKだって証明されたでしょ?」とか言っていた。
その後は本題通り、ネルさんとナミさんによるダンジョン攻略が始まった。
俺には配信の趣旨通り「ナミさんが敵に海水をかけ、ネルさんが雷撃」しているようにしか見えなかったが、タマ曰く実際ナミさんが使っている液体には強力な腐食性があるらしく、ナミさんは気づかれないようにネルさんをかなりサポートしていたようだった。
その甲斐あって、二人は順調にボス部屋前に到着したが……そこでネルさんは「疲れてこれ以上戦えそうにない」とか言い出した。
これもタマの解析によると演技で、実際ネルさんは8割くらい体力を残していたそうだ。
ナミさんはそれを聞いて、「そんな先輩のために、とある筋で入手したものが!」と言ってネルさんに制限解除マジン・ザ・ランプを手渡していた。
ネルさんはそれを使ってボスを撃破。
コメント欄を見る限り、一部「制限解除マジン・ザ・ランプはニャの秘宝の一部ですか」や「制限解除マジン・ザ・ランプはにゃ〜る買ったら当選しますか」等の邪推コメもあったが、大部分は「そんなのがあるんか」と納得した様子だった。
総合的な空気感としては、ナミさんが本物のJKだと信じる派が優勢だったので……配信は概ね成功だったと見ていいだろう。
安心した俺は配信を閉じ、プロ野球の中継に切り替えたのだった。
そして――それから更に2日後。
俺が昼食を食べ終えた頃、落雷の後にピンポンが鳴り、ネルさんがやってきた。
今日は「約束してた『Bランク昇格おめでとうコラボ』をしたい」とのことで、一旦家で打ち合わせをしてから近場の危険度Bダンジョンに行く予定になっているのである。
「お久しぶりですね哲也さん。あ、タマちゃ〜ん! 今日もかわいい〜〜〜!」
「にゃ(久しぶりにゃ)」
ネルさんは部屋に入ってくるなり、即座にタマに抱きついた。
「やわらか〜〜い!」
「にゃ……(一段とテンションが高いにゃ……)」
ネルさんはタマを両腕いっぱいつかってワシャワシャし……それに対し、タマは困惑したよな呆れたような表情を浮かべていた。
今回はあらかじめ予定が分かっていたので、事前にお菓子を買っておけたため、それをテーブルに並べる。
ネルさんがひとしきりタマを撫でて満足すると、お互い席に着き、打ち合わせを始めることとなった。
「そういえば……一個気になってたんですけど、哲也さんってスキルポイントを何に使ってるんですか? ダンジョン破壊とかで相当なポイントが溜まっていると思うんですけど……」
まず本題に入る前に、ネルさんはそんなことを尋ねてきた。
スキルポイント――えーと何だったっけ。
あ、そういえば探索者登録試験を受けた時、「ステータス確認・更新用のデバイス」だとか言ってスマートウォッチ風の装置をもらったんだっけか。
確かそれでスキルポイントを確認したり、スキルスクロールをダウンロードして使えるとか聞いていたが……そういえばそんなもの、存在自体さっぱり忘れてしまっていたな。
「いや、それが全然使ってないんですよね。ほら、タマってだいたいのことを見よう見まねでできますし、コピーの性能も上位互換ならオリジナル技もデタラメなのばっかじゃないですか。今更普通のスキルを、ポイントを使って獲得していく意味があんまり無いような気がして……」
「うーん、そうなっちゃいますか。まあ確かにそうですよね。普通はスキルポイントって探索者にとって一番関心があるものなんですけど……」
状況を聞くと、ネルさんは遠い目をした。
「現在何ポイントかも見てない感じですか」
「正直そうですね」
「じゃ、それだけでもちょっと確認してみません?」
確かに、言われて思い出すと急に気になってきたな。
俺はステータス確認・更新用のデバイスを取り出し、装着して起動ボタンを押した。
「スキルポイント確認モードにしてっと。えー…21,272,820ポイントだそうです」
「む゛っ……ごほっ、ごほっ」
俺は表示されたポイントをゆっくり読み上げた。
すると……ネルさんは口に入れたお菓子を何とかして吹くまいと必死に口を押さえつけ、涙目で咳払いしだした。
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