第37話 発明品紹介! 「ニャの秘宝」②
「お待たせしました。それでは三つ目の発明品をお見せします。それはこちら――『マタタビの杖』です」
長さ約30センチの木の棒をカメラに近づけつつ……俺はそう言って、発明品の名称を明かした。
「こちらの杖のセールスポイントは、どんな人間でもダンジョンのモンスター相手になら失神呪文と即死呪文を無詠唱で発動できるところです。例えば私哲也は、単独では全く戦闘力がありませんが、このように――」
続けて杖の概要を説明すると、デモンストレーションのため杖を大きく振って、先端を目の前のモンスターに向ける。
すると……杖から緑の閃光が飛び出し、その閃光がモンスターに当たると、モンスターは一瞬でカプセルへと姿を変えた。
「――危険度Cダンジョンのモンスターでも瞬殺することが可能です。どの程度の相手までこの魔法を効かせられるかは術者の力量次第なのですが、少なくとも危険度Cくらいまではただの一般人でも大丈夫というわけですね」
カプセルを回収しに行きつつ、俺はそう説明を締めくくる。
:いや草
:一般人がC瞬殺はチートアイテム過ぎww
:対モンスター限定じゃなきゃ発禁レベルやんけ……
:最初の二つもエグかったけど、本格的におかしいのが来たww
:何気に貴重な哲也氏の戦闘シーン
:全世界の杖職人が泣いてますよ……(訳:タマ)
このデモンストレーションだけでも、視聴者はだいぶ盛り上がってくれているようだ。
だが――この使い方は、まだ杖の真価を発揮できてないんだよな。
「じゃ、もう少し進みましょうか。次は複数体のモンスター相手に戦ってみます」
俺はそう言って、奥へ進みだした。
しばらくすると、
「にゃ(曲がり角の向こうの5体の敵がいるにゃ)」
タマからの索敵情報の共有があったので、一旦止まってカメラの方を向く。
「タマ曰く、曲がり角の向こうに複数体の敵がいるそうです。これからそれを倒しますが……複数体相手にさっきみたいな戦い方だと相打ちのリスクもあるので、今回は更に一工夫加えますね」
そう言うと、俺は懐から四つ目の発明品を取り出した。
「ここで使うのが……今回ご紹介する最後の発明品、『透明マント』です。これを着ておけば、敵が私の存在に気付けないので、一方的に戦闘を終えられてかなり有利です」
などと言いつつ、俺はマントを着用する。
:き、消えた……
:と、透明マント⁉
:ズルすぎて草
:サラッと出てきたけどこれもチートアイテムやんww
:回 避 不 能 ス テ ル ス 即 死 魔 法
:あかんコンボができてもうたww
:タマちゃん、常識がブッ壊れるものばっか作りすぎだよ……()
「タマ、カメラの操作お願い」
「にゃ(了解にゃ)」
マントを着ると浮遊カメラがついてきてくれなかったので、俺はタマによる念力での手動操縦をお願いしてから曲がり角へ進んだ。
曲がり角を曲がると……目の前に現れた五体のモンスター相手に、まずは一体ずつ失神呪文をかけ、気を失わせていく。
全員を無力化したところで、俺はマントから顔を出し、視聴者向けにこう説明した。
「一旦これで敵を全員失神させました。この失神呪文、敵を戦闘不能にするだけでなく、実はもう一つ重要な効果があるんですよね。それは――『連鎖フラグを立てること』です」
そう。なぜこの杖に、即死呪文だけで良さそうにもかかわらず失神呪文されているか。
それは――この二つが、組み合わせると非常に有用だからだ。
「見ての通り……この状態で即死呪文を飛ばすと、フラグの立ったモンスター全員に即死呪文が連鎖します」
俺が杖から緑の閃光を飛ばすと……閃光はまず最初にヒットしたモンスターをカプセルに変え、それから残り四体のモンスターにも閃光が分かれて反射し、全てをカプセルに変えた。
と同時に……俺は少し頭がクラクラするような感覚を覚えた。
「まあその……一般人がこういう大技を決めるとだいぶ精神力を摩耗するので注意は必要ですが……回復するまでは透明マント被って休憩しとけば安全ですしね。タマ……ちょっと体調戻してもらっていいか?」
「にゃ(もちろんにゃ)」
タマから力を受け取ると、頭のフラフラはすぐに取れた。
:連 鎖 即 死 呪 文
:上級探索者でもようやらんエグいことやってて草
:こ れ は 酷 い (訳:タマ)
:流石に代償はあるのね
:↑ガチ一般人がこの程度で済むのは代償のうちに入らんのよ……
:どっちか一つでも反則級なものを二つ組み合わせるな(褒め言葉)
コメント欄も、更に勢いを増してくれている。
ここへ来て、ダンジョンに入ってからずっと通訳に徹してくれていた水原さんから一つ質問があった。
「ちなみにその二つの発明品は、材料と作り方はどんな感じなんですか?」
「そうですね。まずマタタビの杖は……これだけ割とちゃんと材料が必要なんですよね。この杖には、マタタビの枝を使用しています」
「なるほど。確かにそこらへんの石や水道水に比べればちゃんとした材料ですが……それでも結構ありふれた物で作れはするんですね」
「作り方は、マタタビの枝を成形してから『ニャ』ってします」
「『ニャ』ってする」
「そして透明マントは、ゴミ袋に『ニャ』ってするだけですね」
「……」
水原さんはまたも絶句してしまった。
:結局全部「ニャってする」じゃねーかww
:要約:製法は「ニャってする」のみ
:なんも説明になってねえww
:後半二つも量産可能なのはアカンww
:えーと……「ニャってする」万能すぎませんかね(呆れ)
とりあえず、これで発明品紹介は完了だな。
あとは告知タイムだ。
「それではこれらの発明品ですが……まず若返り薬については、一般販売いたします」
「にゃ(電脳空間をにゃにゃいのにゃいしてECサイト完成にゃ)」
「えー……たった今しがたタマがECサイトを急ごしらえしたので、もう購入可能です」
概要欄を開くと、見たこともないリンクが追記されていた。
「概要欄のリンクから飛ぶと販売ページにたどり着けるようです」
:サイトも「ニャってする」だけなのねw
:四つの発明品に比べりゃそりゃまあって感じだけどさあ……()
:マジで⁉ 一般販売されんの⁉
:売り切れる前に買わなきゃ
:私も欲しいけど、まずは強くならなきゃなあ……
コメントを見る限り、早速注文者も現れてそうな雰囲気だ。
じゃ、次。
「そして残りの三つに関しては、『ニャの秘宝セット』としてにゃ〜るの懸賞品とすることが決まりました!」
「新商品の『
俺は三つの発明品の扱いを説明し、続けて水原さんが具体的な送付までの流れを説明した。
:マジか!
:あのチートアイテムが手に入る可能性がある、だと……?
:これは爆買い不可避
:稀に人生大逆転セットがついてくるペットフードは流石に草
:まさに反則的な販促
:↑急に寒くなってきたな……
:ニャの秘宝wwネーミングよww
これでバッチリだな。
みんなの意識は完全に「ニャの秘宝」に持ってかれてるし、若返り薬は十分カモフラージュできたと考えて差し支えないだろう。
お膳立てはバッチリなはずなので、あとはナミさんの制限解除マジン・ザ・ランプの紹介が上手くいくかだけだな。
などと考えつつ、俺は爆速で攻略を進めるタマについて行き、ボスまでサクッと攻略して配信を終了した。
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