第4章 内見ニ臨ム
「どうぞ」
南雲はロックのテンキーに素早く暗唱番号を打ち込むと、四方達を中に招き入れた。
乾が部屋にいる事はインターフォンで確認済みだ。南雲が事情を説明し、面会を承諾してもらっている。
広いエントランス。入ってすぐ右側に管理室があり、守衛が眼を光らせている。
居住区への入り口は、コンビニとスタンド珈琲店に挟まれた比較的目に付きやすい所にあった。
正面のエレベーターが開き、住民らしい青年と擦れ違う。彼は南雲に会釈をすると、四方達の傍らを通り過ぎた。
青年が外に出るのと入れ違いに、銀髪の女性が駆け込んで来る。が、エレベーターには来ず、一階の通路右に曲がって行った。
「商業施設の従業員ですね。バックヤードの入り口が一階の通路にあるので」
南雲がエレベーターに乗り込もうとした時、四方の携帯が鳴った。
「はい、四方ですけど」
四方は携帯に出ると、南雲に目配せをする。南雲は頷き、エレベーターへと踏み出し掛けていたステップを引っ込めた。
「杉沢です。あのう、今、どちらにいらっしゃるんですか? 」
杉沢が慌てふためいた口調で四方に問い掛ける。
「すむさき不動産が入っているマンションですよ」
四方が、落ち着いた口調で答える。
「そこに美夏はいるんですか? いるんですよね? 僕も同行させて下さい。すぐに行きますので待っていていただけますかっ! 」
杉沢は激しくまくし立てると、四方の返事を待たないままに一方的に携帯を切った。
「南雲さん、すみません。依頼人がこちらに向かっているらしいので、待っていただいていいですか? 」
四方は苦笑を浮かべると、申し訳なさそうに南雲に詫びを入れた。
「承知しました。大丈夫ですよ」
南雲は嫌な顔一つせず、笑みを浮かべながら答えた。
「依頼人って、杉沢? 」
宇古陀が眉を顰める。探偵事務所での彼の素行が気に入らないのだろう。あの日以来、四方が杉沢の話をするとすこぶる機嫌が悪くなるのだ。何しろ、何を思ったのか、探偵事務所に盗聴器を仕掛けようとした輩なのだ。嫌悪の態度をとって当然ではある。
「凄くタイムリーなタイミングで掛けてきますよね。まるで、我々の行動を監視しているかのように」
四方は冷笑を浮かべると淡々とそう語った。彼女自身も杉沢をよくは思っていないようだ。
「南雲さん、ここって確か他にも出入口がありましたよね? 」
四方が徐に南雲に問い掛けた。
「ありますよ。後二ヶ所。何しろ建物が大きいので。それぞれの出入り口には警備員が詰めていますので、セキュリティーは万全ですよ」
「てことは・・・杉沢さん、私達がここにいるって分かりますかね? 」
四方が首を傾げ乍らエントランスの自動ドアを見た。
さっきの電話では、結構すぐにでも姿を現しかねない感じだったのだが、今のところ影すら見えない。
「入り口を間違えている可能性はありますね。」
南雲は四方にそう答えると、渋面を作り頷いた。
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