ダークムーン

@numanuma_a

プロローグ


「はぁはぁ」

 暗闇のコンテナ街の中をカッカッとハイヒールの足音が響いていた。

 2人の男が1人の女を追って走っている。

 

 柊さんこのまま追いかけるつもりか

 2人の男の1人が方向を変え暗闇に向かい走った。

 

「なんで、なんで私があんな奴と………あんな奴と………」

 女は息を荒げながら口にした。

「確かに少し間違いだったかもね、ボスとだなんて」

 女を追いかけている男は息一つあげずに女に話しかけた。

「なんでボスの金なんて盗んだんだ?こう殺されるのはわかっていただろうに」



「そそのかされたのよあの男に!」

 女は声を荒げ必死に質問に答えた。

「まぁでもさぁ、こんな追いかけっこずっと続けてもらちあかないしさ、早く教えてくれないかな、あの男って人のことを」

 男には疑問があった。

 なぜあれほどまでに厳重な金庫を突破することができたのかということだ。


 

 やはり、ユダがいるってことか。

「もう!ついてこないでよ!」

 そう女が言い放つと女はつまづきその場に転倒した。

「じゃあさ、しょうがないから君を逃してあげるかわりにあの男のこと吐いてくれないかな?」

 男は女を追い詰め条件付きの質問をした。

「わかった!わかったから……言うわよ」

「ほう、あっさりと」



「あいつ、あいつの名前は————」

 女はいそいそと男の名前を吐いた。

「なるほど、あいつなら金庫を破ることが可能かもしれないね」

 男は納得した顔をした。

「ねぇ!言ったわよ、早く逃して!」

 女は男に向かい懇願した。

「あーいいよ、とっとと行けば?」

 そう男は興味なさげに言った。

 女はすぐさま立ち上がり、暗闇へ走りだそうとした。

 


 バン!



 静寂につつまれたコンテナ街の中に一つの銃声が鳴り響いた。

 その弾丸は女の頭を綺麗に貫いていた。

「だめじゃないですか柊さん、勝手に逃しちゃ」



 そう言いながら暗闇からもう1人の男が現れた。

「ちゃんと逃してあげたじゃないか、この世からね」

「確かにそうですけど……」

 たわいもない会話を繰り広げる男たち。

「しかもよくここだとわかったねー仁」



「これくらいこの世界で生きてたら当然ですよ」

 そう言うと男の1人が電話をかけはじめた。

 ピッピッピップルルルルル

『はい』

『やぁ掃除屋さん♪今日も元気にやっているかねー?』

『まぁぼちぼちですね、死体の処理か?』

『そうそう、なんとボスの元愛人』

『ほう、そりゃまた大層な、あとで場所を送ってくれすぐ向かって処理する』

『おっけー、ありがと』

 ピッ



 男は感謝の言葉を一言のべたあと、電話を切った。

「よし!早く車に戻ろうよ仁」

「はい、そうですね柊さん」

 男たちは女の死体には見向きもせずに歩き出した。

「てか仁、コンビニ寄ろうよー」

「その前に柊さん、場所のメールを送ってくらださい」


 そんな会話をしながら男たちは車へ戻るのだった。

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